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第133話 変態は逮捕
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クウネルはニコニコしながら歩いている最中、あれだけ渋っていたのにも関わらず既にキュウベイを受け入れている自分に苦笑いを浮かべていた。
「あれ? もう、キュウベイは配下や眷属ってより弟分って感じになってね? 私、こんなにちょろかったっけかー? まぁ……いっか。 そうだ鑑定さん、モロの場所分かるー?」
«――検索。 街の中心に反応有り。 ゴブリンキングと将軍ギドの反応も検知»
「ほいほい、ありがとね~。 じゃあ、ゴブリン達を踏まないように気を付けて進みますかね」
クウネルは呟きながら、瓦礫が殆ど無くなった王都跡地に足を踏み入れた。
◆◇◆
ゴブリン達を潰さないように躱しながら中心へと向かう。
その道中に朝の挨拶をゴブリン達と交わすが、どのゴブリン達もクウネルを見上げて手を合わせ拝み始める。
この挨拶にも慣れ始めたクウネルは、ゴブリン達に笑顔で会釈していた。
「うむ、やはりゴブリンの挨拶とは手を合わせて拝む事なのか。 アレだね、異文化コミュニケーションって奴だね。 どうも~」
クウネルが会釈だけじゃ失礼かなと、同じように手を合わせながら挨拶していくと、それを見たゴブリン達は喜び、感激し、感涙し始めた。
「ん? ちょっと大げさじゃね? ま、いっか。 細かいことは気にしない気にしな~い」
«――クウネル»
クウネルが背伸びをしながら歩いていると、鑑定の声が脳内に響く。
「ほえ? どしたの鑑定さん」
«――いえ、何でもありません。 敢えて、言わないのがクウネルの為になると判断しました»
「何で!? 気になるよ! え、私また何かした?! 鑑定さーん?!」
クウネルの叫びも虚しく、鑑定からの返答は無い。 そして、中央で待っていた者達が見えてきた為この話題はうやむやになってしまった。
「ギガ! おぉ、クウネルよ。 昨日は助かった! 我が民を助けてくれて感謝する、かたじけない!」
「ギギガ、我等兵士一同も深く感謝しております!」
「いいよ、王様もギドさんも。 楽にいこうよ」
「クフクフ、おはようクウネル。 そういえば、弓兵長君とはどうなったんだい? 彼の姿が見えないけど」
「あぁ、そうだ。 先に王様とギドさんに話しとかないとね。 弓兵長、キュウベイは私の身内になりました。 なので、もう王国には仕えないと思う。 勝手な事してごめんね」
クウネルは瓦礫の少ない場所に座り、ゴブリンキングとギドに頭を下げた。
「いやぁ、本当は先に話を通しとくのが筋だったんだけど……昨晩は疲れてたし。 ……てへ」
クウネルは流石に叱責されると覚悟したが、将軍ギドはクウネルよりも頭を深く下げる。
「ギギ……クウネル様、元上司として言わせて下さい。 ……奴は、弓兵長は本当に優秀な弓兵です。 どうか、末長く側に居させてやって下さいませ」
クウネルは目を見開き、ギド将軍の懐の広さに感嘆した。 キュウベイの勝手な離反を怒る所か、褒めてからクウネルに託せる辺りがゴブリン兵士達に慕われる理由なのだろう。
正に理想の上司だ。
「やっぱり、ギド将軍さんは良い上司だね~。 おろ? 王様は凄く肩震わしてるけど……オコなの?」
ギドの後ろではゴブリンキングがプルプルと震えていた。
「ギギギギ! ふぬぁぁぁぁ! あやつめ、抜け駆けしおって! しかも、名まで貰っとるだと!? よし、我もクウネルに仕えるぞ! 決めた!! そして、名を貰うんじゃーー!」
「えぇぇぇぇ!? 王様、急にどうしたの!? さすがに無理だよ! うん、えっと、無理!」
「ギガ?! 王よ、落ち着いて下さいませ! 王がクウネル様に仕えて旅立てば、民達を誰が守るのですか!」
将軍ギドは駄々をこね始めたゴブリンキングを羽交い締めにして諫める。 ギドの背中には哀愁が漂っております、いつも仕える王に苦労させられているのだろう。
「ギドさん、本当に苦労人なんだね。 いや、苦労ゴブリンか」
ギドに羽交い締めにされても暴れるゴブリンキングを友としてモロも止めるが満面の笑顔だった。
「クフクフ、友よ。 君は功労者に名前を授ける側だろう? ダメじゃないか、王がそんな事では」
「いや、モロも私が名付けたよね? 森狼の王だよね? あ、モロ滅茶苦茶笑ってる! ひっど! 友達の王様をからかってるだけやん!」
「ギガガガ! いやじゃ、いやじゃー! クウネルに我も名前を付けてもらうんじゃー! それに、友モロよ! お主もクウネルに名を貰ったと言っておったではないかー! ずるいぞー!」
「クフクフ、ふははは! だって、私はクウネル最初の友だからね! 特権なのさー!」
ゴブリンキングはギドを振り払い、モロへと掴み掛かった。 モロは変身し、笑顔のまま掴み返す。
その様子にギドは頭を抱えており、クウネルもパニックだ。
「わわわわ! 取っ組み合いになっちゃった! どうしよ、どうしよ! 止めようにも、私が手を出したら死人が出るぞ!?」
クウネルがあたふたしていると、声が聞こえる。
そして、地響きも。
「うおっ!? ちょっ、早っ!! ク、クウネルの姉御ぉぉぉぉ! 大丈夫ですかぁぁぁぁ?!」
「いや、お前が大丈夫か?」
遠くからクウネルがあたふたしているのが見えたのだろう。 何かトラブルが有ってクウネルが困っていると思ったキュウベイが駆け付けたのだ。
当然、全裸で。
「ギ! きゃぁぁぁぁ! 変態よ! 変態がスピードでぇぇぇ!」 「「「「「ギィ!? ぎゃぁぁぁぁぁ!」」」」」
そこら中から、メスのゴブリン達の悲鳴が聞こえる。
「うん、ですよね。 え、どうする? やっぱり逮捕?」
「あれ? もう、キュウベイは配下や眷属ってより弟分って感じになってね? 私、こんなにちょろかったっけかー? まぁ……いっか。 そうだ鑑定さん、モロの場所分かるー?」
«――検索。 街の中心に反応有り。 ゴブリンキングと将軍ギドの反応も検知»
「ほいほい、ありがとね~。 じゃあ、ゴブリン達を踏まないように気を付けて進みますかね」
クウネルは呟きながら、瓦礫が殆ど無くなった王都跡地に足を踏み入れた。
◆◇◆
ゴブリン達を潰さないように躱しながら中心へと向かう。
その道中に朝の挨拶をゴブリン達と交わすが、どのゴブリン達もクウネルを見上げて手を合わせ拝み始める。
この挨拶にも慣れ始めたクウネルは、ゴブリン達に笑顔で会釈していた。
「うむ、やはりゴブリンの挨拶とは手を合わせて拝む事なのか。 アレだね、異文化コミュニケーションって奴だね。 どうも~」
クウネルが会釈だけじゃ失礼かなと、同じように手を合わせながら挨拶していくと、それを見たゴブリン達は喜び、感激し、感涙し始めた。
「ん? ちょっと大げさじゃね? ま、いっか。 細かいことは気にしない気にしな~い」
«――クウネル»
クウネルが背伸びをしながら歩いていると、鑑定の声が脳内に響く。
「ほえ? どしたの鑑定さん」
«――いえ、何でもありません。 敢えて、言わないのがクウネルの為になると判断しました»
「何で!? 気になるよ! え、私また何かした?! 鑑定さーん?!」
クウネルの叫びも虚しく、鑑定からの返答は無い。 そして、中央で待っていた者達が見えてきた為この話題はうやむやになってしまった。
「ギガ! おぉ、クウネルよ。 昨日は助かった! 我が民を助けてくれて感謝する、かたじけない!」
「ギギガ、我等兵士一同も深く感謝しております!」
「いいよ、王様もギドさんも。 楽にいこうよ」
「クフクフ、おはようクウネル。 そういえば、弓兵長君とはどうなったんだい? 彼の姿が見えないけど」
「あぁ、そうだ。 先に王様とギドさんに話しとかないとね。 弓兵長、キュウベイは私の身内になりました。 なので、もう王国には仕えないと思う。 勝手な事してごめんね」
クウネルは瓦礫の少ない場所に座り、ゴブリンキングとギドに頭を下げた。
「いやぁ、本当は先に話を通しとくのが筋だったんだけど……昨晩は疲れてたし。 ……てへ」
クウネルは流石に叱責されると覚悟したが、将軍ギドはクウネルよりも頭を深く下げる。
「ギギ……クウネル様、元上司として言わせて下さい。 ……奴は、弓兵長は本当に優秀な弓兵です。 どうか、末長く側に居させてやって下さいませ」
クウネルは目を見開き、ギド将軍の懐の広さに感嘆した。 キュウベイの勝手な離反を怒る所か、褒めてからクウネルに託せる辺りがゴブリン兵士達に慕われる理由なのだろう。
正に理想の上司だ。
「やっぱり、ギド将軍さんは良い上司だね~。 おろ? 王様は凄く肩震わしてるけど……オコなの?」
ギドの後ろではゴブリンキングがプルプルと震えていた。
「ギギギギ! ふぬぁぁぁぁ! あやつめ、抜け駆けしおって! しかも、名まで貰っとるだと!? よし、我もクウネルに仕えるぞ! 決めた!! そして、名を貰うんじゃーー!」
「えぇぇぇぇ!? 王様、急にどうしたの!? さすがに無理だよ! うん、えっと、無理!」
「ギガ?! 王よ、落ち着いて下さいませ! 王がクウネル様に仕えて旅立てば、民達を誰が守るのですか!」
将軍ギドは駄々をこね始めたゴブリンキングを羽交い締めにして諫める。 ギドの背中には哀愁が漂っております、いつも仕える王に苦労させられているのだろう。
「ギドさん、本当に苦労人なんだね。 いや、苦労ゴブリンか」
ギドに羽交い締めにされても暴れるゴブリンキングを友としてモロも止めるが満面の笑顔だった。
「クフクフ、友よ。 君は功労者に名前を授ける側だろう? ダメじゃないか、王がそんな事では」
「いや、モロも私が名付けたよね? 森狼の王だよね? あ、モロ滅茶苦茶笑ってる! ひっど! 友達の王様をからかってるだけやん!」
「ギガガガ! いやじゃ、いやじゃー! クウネルに我も名前を付けてもらうんじゃー! それに、友モロよ! お主もクウネルに名を貰ったと言っておったではないかー! ずるいぞー!」
「クフクフ、ふははは! だって、私はクウネル最初の友だからね! 特権なのさー!」
ゴブリンキングはギドを振り払い、モロへと掴み掛かった。 モロは変身し、笑顔のまま掴み返す。
その様子にギドは頭を抱えており、クウネルもパニックだ。
「わわわわ! 取っ組み合いになっちゃった! どうしよ、どうしよ! 止めようにも、私が手を出したら死人が出るぞ!?」
クウネルがあたふたしていると、声が聞こえる。
そして、地響きも。
「うおっ!? ちょっ、早っ!! ク、クウネルの姉御ぉぉぉぉ! 大丈夫ですかぁぁぁぁ?!」
「いや、お前が大丈夫か?」
遠くからクウネルがあたふたしているのが見えたのだろう。 何かトラブルが有ってクウネルが困っていると思ったキュウベイが駆け付けたのだ。
当然、全裸で。
「ギ! きゃぁぁぁぁ! 変態よ! 変態がスピードでぇぇぇ!」 「「「「「ギィ!? ぎゃぁぁぁぁぁ!」」」」」
そこら中から、メスのゴブリン達の悲鳴が聞こえる。
「うん、ですよね。 え、どうする? やっぱり逮捕?」
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