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第119話 決戦 魔族VS亜人連合 その2

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 ◆魔王国連合 中央魔族長 オーツside◆

 「ちっ、奇襲は失敗か。 まぁいい、成功せずとも我等の魔法でねじ伏せればいい」

 そう呟くのは金髪の髪に白色のローブを身に付け、灰色の肌に盛り上がった筋肉が特徴の魔族オーツだ。

 物理に特化した特殊な攻撃魔法を扱える。

 「すまぬのじゃオーツ! かなりの魔法部隊が向こうに居るようじゃな。 まさか、わしの極炎が止められるとは思わなんだ」

 走って来たのは北魔族長ガンマだ。

 喋り方は老婆の様だが、その見た目は小柄の少女。真っ赤な髪に、真っ白な透き通る様な肌。北街では美少女として、民から絶大の人気を誇る。

 火魔法を使わせたら右に出るものは居らず、火魔法最上位極炎の使い手として魔族で知らぬ者は居ない。

 「気にするなガンマ、ウンポのゴミ野郎を殺す楽しみを後に回しただけだ。 北街の魔族を率いて攻撃を続けてくれ」

 「ひゃひゃひゃっ! 分かったのじゃ、この汚名は直ぐに返上するとしよう」

 ガンマが部下と共に戦線へと戻るのを見送り、次の行動を開始する。

 「よし、アルファ、ベータ。 準備が出来次第、総攻撃を始めろ。 向こうの結界を潰すぞ。 シグマ、怪我人が出たら直ぐに治療を頼む」

 側に控えていた他の魔族長達に指示を飛ばすと、青髪の魔族が立ち上がった。

 「はいよ~、よーしベータ。 快気祝いに暴れるとしようか~」

 オーツの指示に気だるく返事をしたのは西魔族長アルファである。

 目元まで伸びた青色の髪に灰色の肌、だらしなく見えるダボダボの服を着ていた。 アルファは水魔法全般の使い手であり、津波程の水魔法から水を細く刃の様に射出する等の変幻自在に水魔法を操る強者の一人だ。

 「ふんっ! オーツに言われずとも、トール殿への行いの報い必ず受けさせてやる! 後、アルファ……こういう時だけでもシャキッとしろ!」

 色々な事に腹を立てているのは東魔族長 ベータだ。

 肩まで伸ばした金髪に、特注で作った貴族服を身に纏って偉そうな雰囲気を醸し出している。

 扱う魔法は雷魔法、トール討伐戦でもかなり奮戦し多くの亜人連合の近接兵士達を屠った強者である。

 「へぇ~、ズタボロにされてたのは誰だったかな~? 次はヘマするなよ~?」

 「だ、黙れ!」

 文句を言い合いながら部下達を率いて走って行った2人を見送り、オーツは若干の不安に苛まされる。

 (……大丈夫か? いや、ベータは勿論アルファも亜人連合にはかなり怒り狂っていた。 あれぐらいでちょうどいいか)

 「でぇ? オーツ。 何で私達だけ後方待機なのかしら?」

 妖艶で有りながら、怒気を撒き散らしているのは南魔族長 シグマだ。

 深淵を思わせる紫色の美しい長髪に、スリットの入った紫色のドレスを身に付けた美女であり、魔族でも希少な闇魔法の使い手だ。 そして、率いる魔族達を含めてシグマ達は回復魔法のスペシャリストなのだ。

 「仕方あるまい、数が違うのだ。 回復魔法を専門に使える南街の魔族達と治療に専念してくれ。 恐らく直ぐに……来たぞ」

 数人の魔族が本部に駆け込んで来た。

 「ぐへっ! すまねぇオーツ、ちとヤられた。 久しぶりの実戦じゃからな! くはははっ!」

 腹を裂かれても笑って運ばれて来たのは、大戦を生き残った歴戦の魔族だ。

 ブランクがあるとはいえ、歴戦の魔族が直ぐに重傷を受ける程に数が違う。

 だからこそ、どれだけ早く回復して戦線に戻せるかが勝利の鍵となる。

 「ちょっ、ベン爺さん!? もう1人も重症じゃない! あぁもう! 分かったわよぉ、治療は私に任せてオーツも早く行きなさぁいっ!」

 「くはははっ! シグマの嬢ちゃんに治療して貰えるなら直ぐに戦線に戻れるわいの!」

 (ふっ、歴戦の先輩は腸が出ても余裕とは……俺も見習わねば)

 「うむ、頼むシグマ。 お前が頼りだ」

 シグマ達が治療を開始したのを確認し、オーツは戦線へと向かう。

 本部の外は既に乱戦状態だった。 暗殺者らしき獣人達と魔族達が激しく殺し合っている。 

 「ふんっ、そろそろアルファとベータ達の準備が出来る頃か」

 オーツが本部から出た直後、魔族側の陣地から敵陣へと閃光が幾つも煌めいた。

 アルファとベータが率いる魔族達による、雷と水の複合魔法が放たれたのだ。

 閃光が煌めく度に、敵陣の兵士達が吹き飛び即死していく。

 「うむ。 ガンマ達が既に結界は破壊していたのか、ふふ……さすがだな。 さて、俺も行くか」

 乱戦している戦場では、ガンマと北街魔族達が炎を撒き散らし接近している敵兵士達を焼き殺していた。

 先程のベン爺も北街の魔族だった筈だ。

 他に地面に倒れる同胞は居らず、まだ死者が出てないだけ好調だろう。

 「中央魔族達よ、あの大戦を知らぬ亜人共に戦いを教えてやれっ! 魔力拳発動! 突撃ぃぃぃっ!!」

 「「「「おぉぉうっ! 魔力拳発動!」」」」

 オーツや中央魔族達の手足が青白く光り始め、オーツ達は獰猛に嗤う。

 そして、そのまま戦場へと突撃しガンマ達を襲う敵兵士達を殴り殺し始めた。

 この魔力拳こそ、オーツの父親直伝の近接魔法である。

 中距離、遠距離魔法に特化した魔族には習得が非常に難しくオーツ率いる中央魔族もその数は50人程だ。

 だが、それだけ強力無比な近接魔法により次々に敵を骸に変えていく。

 「ふんっ! おりゃあぁっ! ガンマすまぬ、遅くなったか?」

 獣人の兵士達を蹂躙し、ガンマを襲っていた竜人兵士達を蹴り殺す。

 「ひゃひゃひゃ! いんや、ベストタイミングじゃよオーツ。どうやら、向こうの指揮官は余程の馬鹿じゃな。 普通の兵士達より先に、竜人精鋭の翡翠部隊が突っ込んできおったわ!」

 ガンマは身体中に切り傷を負っていたが、まだ戦えそうだ。 手の両手からは極炎と呼ばれる炎の塊が生まれ敵兵士を包み焼き殺し続けている。

 「ん? あぁ、そういえばさっき屠った獣人の兵士達も暗殺者みたいな兵士達ばかりであったな。 だから、奇襲からこんなに早く敵兵士が来たのか」

 オーツが敵の陣営を見やると、確かに身軽そうな獣人兵や竜人兵達ばかりが押し寄せていた。

 「呆れたものだな。 素早さの高い兵士達が、一般の兵士達を押し退けて戦線に来てる訳か」

 オーツは目の前に迫った竜人の首を叩き折り、地面へと捨てる。

 (ベータの話を聞く限り、敵の総大将はウンポで間違いないな。 竜人の方は来るとしたら将軍だろう。 さて、他の亜人達が集合する前に将軍とウンポを殺したい所なんだが……)

 考え事をしながらも、オーツの足下には獣人と竜人の骸が転がっている。

 「黒檀ならまだしも、軽くて脆い翡翠とは……これで精鋭か。 ……竜人も堕ちたものだ。 あの大戦はこんなものではなかったぞ?」

 数では圧倒的に劣勢な魔族達は敵を屠り続けるのであった。
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