上 下
80 / 195
第三章 新たな力 友の為に足掻く編

第78話 謎の黒髪女子中学生

しおりを挟む
 クウネルに本気で噛み付かれ、モロは悲鳴をあげる。

 「キャインッ! ぐぁっ、しまった! クウネル、正気に戻ってくれ! クウネル!!]

 ミチミチとモロの肉が軋む嫌な音が響き、激痛がモロを貫いた。

 「ガフフフフ! おまへなぬかしらぬい! しぬぇー!」

 クウネルがフガフガと何かを言いながら、更に口に力を加えようとした瞬間。 目の前に突如として、小さな女が現れた。

 大きさはモロよりも小さく、クウネルと比べたら小人のようだ。

 長い黒髪に、モロは知らないが女子中学生の制服を身に付けている。

 『はい、よいしょー!』

 その女性は、宙を浮き。 クウネルの頭を思いっきりチョップした。

 スパァァァァンッ!と衝撃波が放たれる程の威力にクウネルは思わず悲鳴を上げ、その隙にモロは逃げ出した。

 「あがぉ!? いっったぁぁぁぁい! 誰だよお前! お前も敵か? 敵だろ! 敵は殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」

 『はぁ~、私の誤算だったわ。ちゃんと閉じ込めておいたのに。 ごめんなさいね、クウネルちゃんのお友達。 少し待っててね」

 女性はモロに優しく話し掛けた後、クウネルの方へと向き直す。

 『まだ貴女は出てくる時じゃないの、いい? さぁ、帰りましょう?』

 女性がクウネルに近付くと、何かに怯えるようにクウネルは下がり始める。

 「お前何? 帰る? どこへ? 帰る所何てない! 皆死んだもん! 皆、殺されたの! 来るな! 来るな来るな来るな来るな来るな! 私は、この力で皆の仇を取るんだ! 私は……私は」

 クウネルの赤い目が揺らぎ、全身から殺気が抜け落ちる。

 『ふふ、大丈夫よ。 貴女の望みはどんな形だろうと叶えられる。 ……いずれ、必ずね。 ほら、良い子だから帰りましょう。 ね?』

 女性の手の平が光始め、赤髪のクウネルは徐々に落ち着きを取り戻してゆく。

 「うん……うん。 わかった……かえ……る」

 『そう、良い子ね。 じゃあ、ごめんなさいクウネルちゃんのお友達。 火は消しておくから、後その傷も食べ……治しておくわね。 クウネルちゃんによろしくね~ではでは~』

 女性と赤髪のクウネルが光に包まれ、光が消えた後は黒髪のクウネルが地面に横たわりいびきをかいていた。

 「ぐがー……ぐがー……ふひゅるるるー……」

 「ガフッ?! はぁ~……いったい何だったのだアレは? 私より小さな、クウネルに姿が似た生き物だった。 ふふ……それに本当に身体の傷がいつの間にか消えてる」

 モロは無傷となった自分の身体を触り、身体を震わした。

 「クゥン……あの圧倒的な力、もしや……アレがあの御方が言っていた神という存在なのか? クウネル……君は本当に何者だい?」

 辺りは火の海だったが、恐ろしい事に周囲の巨木は1本も燃えた跡も無く元通りになっている。 あれ程有った、地面のクレーターすら無い。

 モロが、まるでさっきまでのは夢だったのかと錯覚してしまいそうになる程だ。

 「クゥン……疲れた……クウネルはいびきをかいて寝てるし。 はぁ……とりあえず、寝て明日考えよう。 クウネルとの話によっては……あのお方に会いに行かねばならないかもしれないね」

 モロは心配しているであろう、妻と群れ達の待つ洞窟へと戻っていった。

 そして、朝になればクウネルは悲痛な叫びを上げる事になるだろう。

 何故なら、洞窟の側にクウネルが建てた掘っ立て小屋が無惨にも粉々になっているのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...