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第三章 新たな力 友の為に足掻く編

第72話 魚の口なのよ

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 「え? いきなりこんなに成長したの!? 飛竜王食い殺しただけで?!」

 2歳になったばかりのクウネルの容姿は、既に前世の17歳だった頃と変わらない美貌をしてる。 身長は恐らく、祖父よりも大きいのではないだろうか。

 「このまま、食い殺す事で成長してゆくと私は何処まで大きくなるのだろう……っていうか、胸重っ! 全然気付かんかったけど、胸だけは前世とは違うね」

 クウネルは前世とは掛け離れた胸の大きさに感嘆し、水面に浮かぶ自身のプロポーションの良さに喜ぶ。

 「やばっ! モデルみたいじゃね? グギュルルルルー おっと、やっぱり水だけじゃ腹の虫は収まらないよね」

 遊びは程々にし、クウネルは気配を察知する事に集中した。

 「んー、気配察知に反応はあるけど……小物ばかりだな。 私の食事には、なるべく大物が相応しいのである! Hey鑑定! この池に大物は居ないかい?」

 «――了。 検索中デス――解、池ノ底に居ル気配が最大ノ反応デス»

 「ありがとう! 便利だわー、本当に便利だわー! よーし、どうやって捕ろうか。 んー、折角だし何か検証できるスキルとか無かったっけ。 ステータスオープン」

 ステータス画面

 名前 クウネル

 年齢 2

 職業 暴食の姫君

 種族 暴食の巨人

 レベル 435

 HP 301650/301650

 FP 150290/150290

 攻撃力 201120

 防御力 160420

 知力 100187

 速力 500464

 スキル 鑑定Lv3. 暴食. 消化吸収強化. 竜鱗Lv2. 火耐性Lv3. 竜殺しLvMax. 魔物食らい. 気配察知Lv2. 連携Lv1. 酸耐性LvMax. 即死耐性LvMax. 王喰い. 隠密Lv1. Hey鑑定. 錬金術Lv1(new). 森狼王を率いし者(new)

 魔法 火炎Lv2. 土魔法Lv1

 戦技 叩き割りLv2. 槍突きLv1. 噛み付きLv4. 暴食の大口

 状態異常 空腹

 加護 暴食の邪神の慈母愛

 クウネルは改めて自身のステータスを確認し、その凄さに驚く。

 「う、うん。 やっぱりすげえステータスになってる。 お? 錬金術? モロの為に薬を作ったからかな。 じゃあ、普通なら薬調合とかじゃね? 何で錬金なの?」

 首を傾げながらステータスを見つめる。

 「後、森狼王を率いし者って……モロは友達で率いてる訳じゃないんだけど。 しかも、スキル欄そろそろ称号的なのとスキル系がごちゃごちゃし過ぎ! 見にくいんだよ! 誰だ、こんな糞ゲーに有るような設定にしたのは! あの自称創造神の糞爺か?!」

 クウネルの盛大な独り言に、水面近くの魚が驚き水底に消えていく。

 「まぁいいや、えっと~鑑定で全部見てたら朝になるから……とりあえず土魔法見てみるか。 鑑定!」

 『土魔法Lv1 元素魔法を分解した初歩の魔法 土を操れる Lvが上昇すれば自在に土を変えられる』

 「おー! 何か、かっこいい! やってみるべ、使ってみるべー。 土魔法! ん? 土魔法発動! んん? んんんん?」

 クウネルはそれっぽく空中に向かって手をかざしながら叫んでみるが、何も起きない。 

 「何も起こらないよ? どゆこと? Hey鑑定! 土魔法ってどうやって使うの?」

 «――了。 検索中デス――解。 手のヒラを地面二向ケテ、土魔法発動ト唱エテ下サイ»

 「かしこま! さっそくやってみるか。 えっと~……こんな感じかな? 土魔法発動!」
 
 Hey鑑定の指示通りにすると、本当に地面が盛り上がった。 クウネルは自身の手で魔法を使えた事に感動する。

 「おぉ?! 地面が盛り上がった! 凄い凄い! 魔法だよ! これが魔法だよ!! 口から火吐くのは、何か魔法って感じしなかったんだよね。 えへへ、これで私も本当の魔法使いじゃーん!」

 クウネルは喜びながら盛り上がった土の山を指でつつく。

 「お? 土が固くなるイメージをしたら、盛り上がった土が固くなった! お~! これ、Lv上がったら滅茶苦茶便利じゃん!! 私のサイズでも住める家を土魔法だけで作れるようになるんでない?」

 一通り土魔法で遊んだクウネルはもう一度ステータスを確認し、他に使えそうな物が無いか見てみる。

 「楽しいけど、これじゃ大物は捕まえれないかな~。 他には……暴食の大口? 何これ、戦技か。 ……いつ取得したんだろ。 一応、鑑定しよっか。 鑑定!」

 『暴食の大口 透明な暴食の邪神の口を前方に発射する 範囲に有る物は全て飲み込み消化するが 栄養やプラスとなる効果は暴食の邪神へと送られる』  

 「何これ、怖っ! 下手に使えんヤツや! ……いや、でもこれを使えば、どれだけの範囲かは分からないけど池の水減らせれるんじゃね?」

 クウネルは目の前に広がる巨大な池を見渡し、どうするべきか考える。

 「いやぁ、ほら? 使ってみないと、範囲も分かんないしさ。 もし、変なの食べても暴食の邪神さんに行くんでしょ? よーし、やるぞー! ちょっと怖いけど、物は試しさ!」
 
 土魔法の要領で、池の方に手をかざしながら暴食の大口を発動した。

 「おりゃ! 暴食の大口!!」

 暴食の大口を瞬間、かざした手の先に真っ黒な巨大な玉が現れた。 そして、上下に別れた内部には恐ろしい量の牙がズラリと並んでいる。

 「グルガギャゴギャギャギャギャギャギャ!」

 「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!? 何か出た! 透明じゃないの?! 滅茶苦茶グロい黒い玉に口だけの化け物が発射されたんですが!? しかも、何か鳴いてるんですが!?」

 現れた化け物は、ズラリと並んだ牙をガチガチと鳴らしながら池に大口を開けて突っ込んだ。

 ドス黒い煙が池を覆い、次の瞬間には池の水が消えていた。 キャンプファイアで照らされていた巨大な池は、巨大な窪みへと変貌してしまいクウネルは目が点になる。

 「うそぉ……私の晩御飯が……」

 クウネルの気配察知には何も反応は無い。 池に居た魚や生き物は全て暴食の大口が飲み込んでしまったのだろう。

 クウネルが項垂れていると、Hey鑑定の声が頭に響いた。

 『――驚。 ――提、目的ノ最大の気配ハ底二現存シテいまス』

 「え? 本当に!? ありがとう鑑定さん! おっしゃぁぁぁぁぁ! 反省や後悔は後だ! ご飯ご飯ご飯! フィッシュオォォォンリィィィ!!」

 元気を取り戻したクウネルは窪みを全速力で降りてゆく。 窪みの真ん中に近付くと、確かに何か大きな生き物の気配を察知できた。

 「やったぁぁぁ! 食べ応え充分な魚だぁぁ! え? ん? はぁぁぁぁぁ!? 鰐じゃん! 鮫みたいな鰐じゃん! 別に良いけどさぁ、私の口はもう魚なのに!!」

 窪みの底で、何が起きたのか分からず呆然としていたのは鮫の顔をした巨大な鰐だった。
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