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第62話 フォレストウルフクイーンの驚愕

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 焼け焦げ、倒れる森狼の下に私は飛び出した。

 やはり、もう事切れている……。

 ダメな女王でごめんなさい。 仇だけは取るから。

 「ガルルルッ! ガウッ!」

 残りの3匹には手を出さないよう伝え、下がらせる。

 始めからこうすれば良かった、経験を積ませようなんて思わなければ……え?

 2足型は信じられない事に、スライムを捕食していた。 

 あり得ない……夫でさえ、溶ける液体のスライムは絶対に食べないよう言っていたのに。 凄く……美味しそうにスライムを捕食している。

 怖い、なんだこの2足型は。 気配も匂いも、私より弱いと教えてくれるのに異様さが際立っていてとても気持ち悪い。

 えぇ? 嘘……森狼ごと焼いた片腕が治ってる!?

 私の知識では理解できない……でも、殺らなきゃ! 殺るしかないの! 此方から手を出しておいて申し訳ないが、群れを殺された……殺らないとまた群れが殺られる!

 2足型が何やら慌て出すのを見て、隙と感じた私は勝負を決めに動いた。

 全力で回り込み、背後を取る。 匂いからして、この速度には追い付けないだろう。

 ごめんね、夫の知り合いかもしれない2足型よ。

 爪を出し、背後から全力で斬り掛かった。 2足型の背中を大きく斬り裂き勝利を確信するも、2足型を仕留めれなかった。

 そんな、私の攻撃で仕留めれないの!?

 あんなに柔らかそうな皮膚なのに、爪で斬り裂いた感触は岩蜥蜴の鱗に似ている。 本当に不気味な魔物だ。

 でも……どうしよう、どうしよう、このまま攻めるべき?
 
 背中の傷に呻いていた2足型が突如、自分の足下に向かって火を吹き始め驚く。

 「ボァァァアアアッ!」

 あつっ! 熱い! 何を考えているの?!

 一旦距離を取るべく、後ろに飛び退く。 そして直ぐにその判断に後悔する事になる。
 
 今日だけで、何度めのミスだろうか。
 
 2足型は火に巻かれながら、あろうことか下がらせていた森狼の所に走り出した。

 「ガァッ!? キャインッ!」

 不意を突かれた森狼の1匹が捕まってしまった。

 2足型は殺さないよう首を絞めながら私に苦しむ森狼を見せつける。

 誇り高き森狼に何て仕打ちを!
 「グルルルルッ!」

 いや……いきなり襲ったのは此方なのだ。 文句を言うのは筋違いだろう。

 しかし、どうするつもりなのか。

 2足型は森狼を締め上げたまま、ゆっくりと下がり始めた。

 何処かへ誘き寄せるつもり……?

 狙いは分からないけど、数少ない森狼を助けれるかもしれない。 ……ここは大人しく付いて行くしかないわね。

 それにしても、どこまで行くつもりなのだろうか。

 あ!! またスライム食べた! 怖っ!    

 ◆◇◆

 あれから私は暫く2足型を追った。

 最悪な事に、小さな森から出て視界の広い縄張りの森へと出てしまう。

 あの飛竜に見つかる危険が有るが……仕方ない。 捕まった森狼が苦しそうに踠いているのが見えるのだ。 見捨てる訳にはいかない……数少ない成狼なのだから。

 この辺りは確か……夫が気を付けるよう言っていた植物が生えてる場所の筈。 地面から抜くと、聴いた者を即死する悲鳴を上げると教わった時はゾッとしたものね。

 しかし、今は全然生えてない……? 側に寄れば、薄い気配がいつもはするのに……。

 もしや、飛竜が食べたのだろうか……?

 いえ、今は群れを助けるのに集中しなきゃ。

 気を取り直して、2足型を注視しながらゆっくりと追い続けた。
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