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第60話 力の代償と巨人王国地獄の始まり
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「くそっ、この上が心臓の筈なのに全然届かない!」
クウネルの頭上にある分厚い肉の上から心臓の音が聴こえる。 間違いなく心臓は目の前なのだ。
「あ! そうか、友の足で斬り裂いた所を足場にすればいけるも! ん? 遠くに感じれる気配が更に弱まってる!」
クウネルは慌てて斬り裂いた傷口に足をかけ、上へと登る。 斬る度に揺れるがもう構ってられない。
「急げ急げ! もう失ってたまるか! まだ会ったばかりだけど、友って呼んでくれたんだ! 奪われてたまるか!」
遂に頭上の分厚い肉の所まで辿り着き、急いで肉を斬り裂く。
「こんな、トカゲに友達は渡さない! お! よっしゃ、開いた!」
切り分けた先には、脈打つ巨大な心臓が見えた。 ドクドクと脈打ち、侵入者を拒む様に鼓動が早くなる。
「でっかいハツだなこのやろう! ジュルリ……いざ実食! いっただきまーす!」
血まみれのクウネルは飛竜の心臓に飛び付き、口を大きく開けた。
「ガブゥゥゥッ! しぃぃぃねぇぇぇっ!!」
心臓に噛み付き、そして食い千切った。 血が溢れ、徐々に鼓動は遅くなり完全に停止した。
「死んだっ? 倒せたの!? ん……? 何だ、身体が……う……あつっ!? 身体が熱い……焼ける、死ぬ死ぬ死ぬ! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
クウネルの身体は燃え盛る火のような光りに包まれた。
◆◇◆
クウネルが飛竜の体内でまいうーしている頃、巨人王国王城では醜い笑い声が響いていた。
巨人王国、王城にある玉座の間では他の巨人よりも大きく分厚い脂肪に覆われた醜い巨人が玉座に座って報告を聞いていた。
正確には玉座では無い。
長い間、巨人王国を繁栄に導いていた巨人王の死体を玉座に見立て、その上に座っているのだ。
座る者の名は、第1王子 ロデン。
巨人王国建国からの長い歴史で1番の汚点と言われた出来損ないの王子だ。
能力では無い、人格が、性格が、趣味が、価値観が、全てが異常にして異端。
英雄トールが、こやつに跡を継がせてはならぬと散々口を酸っぱくして巨人王に忠告していた程だ。
しかし愚かにも巨人王は、王の前に父だった。
最後の最後まで、決断が出来ず。 一人息子のロデンから継承権を剥奪しなかった。
それが、巨人王国の民を地獄に落とすとも知らずに。
巨大な手で、醜く出た腹を嬉しそうに叩く。
「ぐふふふ、ぐふふふ! そうかぁ、おでを馬鹿にしていた爺は死んだかぁ! ぐふふふ、ぐははは」
ロデンの前に跪いているのは、巨人王国直属戦士団の団長アバンで在る。
「はっ……仰せつかりました任務は完了致しました。 ですので、新巨人王陛下。 お預けしております、我等の娘息子を家へ帰して頂きたく」
「ぶほぉ? ぐふふふ、勿論だぁ。 直ぐに帰宅させるでぇ、いやあ無事に帰還できて良かっだぁ」
(この豚野郎が! お前が団員の家族を人質にしたんだろぉがぁ!)
団長アバンの顔は憎しみに満ちた表情をしているが、幸か不幸か跪いているためロデンに見られる事は無かった。
「して、王よ。 その……下に敷いておられるのは、前巨人王では?」
「ぐふふふ? あぁ、この生ゴミかぁ? いやぁ、父上は病気で死んだでな。 この生ゴミは後で団長が片しておいてぐでえ」
ロデンの下に敷かれた、前巨人王は苦しみに満ちた顔で事切れている。
(毒か……。 これも、何もかも、甘い貴方のせいですよ! 私達巨人は、継承権を持つ王に従わなければならない。 これから、この巨人王国は地獄に変わる!!)
団長アバンの実力であれば、ロデン等いつでも斬り殺せる筈だ。 しかし、それは出来ない。 新たな巨人王国を建国する際に出来た愚かな誓い、憎らしい風習が巨人王に逆らわせない。 もし、この場でロデンを殺せばどんな理由があろうとアバンの家族、親戚、関係する者全てが処刑されるのだ。
この誓いや風習は、何時か絶対に問題になると英雄トールが止めたにも関わらず新たな王族達は断固として聞き入れなかった。
全ては自業自得の結果なのかもしれない。
「ぐふ? おお、そうだぁ。 新巨人王の初めての仕事をせねばなぁ。 民に知らせよ! 少女は全ておでの妾とする、これは巨人王からの勅命だとなぁ! だからぁ、家に帰った娘を直ぐに王城に来させるように。 頼んだでなぁ? 団長~」
醜い笑み浮かべるロデンの声を聞きながら、アバンは食いしばった齒から血を垂れ流し拳を
(こ、このゴミがぁ! 最初から娘を返すつもり等無いでないか! やはり、やはり貴方を裏切るべきでは有りませんでした……トール殿)
団長アバンの悲痛な叫びは、心中だけに響いていた。
愚かな選択をし続けた結果、巨人王国で地獄の日々が始まる。
クウネルの頭上にある分厚い肉の上から心臓の音が聴こえる。 間違いなく心臓は目の前なのだ。
「あ! そうか、友の足で斬り裂いた所を足場にすればいけるも! ん? 遠くに感じれる気配が更に弱まってる!」
クウネルは慌てて斬り裂いた傷口に足をかけ、上へと登る。 斬る度に揺れるがもう構ってられない。
「急げ急げ! もう失ってたまるか! まだ会ったばかりだけど、友って呼んでくれたんだ! 奪われてたまるか!」
遂に頭上の分厚い肉の所まで辿り着き、急いで肉を斬り裂く。
「こんな、トカゲに友達は渡さない! お! よっしゃ、開いた!」
切り分けた先には、脈打つ巨大な心臓が見えた。 ドクドクと脈打ち、侵入者を拒む様に鼓動が早くなる。
「でっかいハツだなこのやろう! ジュルリ……いざ実食! いっただきまーす!」
血まみれのクウネルは飛竜の心臓に飛び付き、口を大きく開けた。
「ガブゥゥゥッ! しぃぃぃねぇぇぇっ!!」
心臓に噛み付き、そして食い千切った。 血が溢れ、徐々に鼓動は遅くなり完全に停止した。
「死んだっ? 倒せたの!? ん……? 何だ、身体が……う……あつっ!? 身体が熱い……焼ける、死ぬ死ぬ死ぬ! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
クウネルの身体は燃え盛る火のような光りに包まれた。
◆◇◆
クウネルが飛竜の体内でまいうーしている頃、巨人王国王城では醜い笑い声が響いていた。
巨人王国、王城にある玉座の間では他の巨人よりも大きく分厚い脂肪に覆われた醜い巨人が玉座に座って報告を聞いていた。
正確には玉座では無い。
長い間、巨人王国を繁栄に導いていた巨人王の死体を玉座に見立て、その上に座っているのだ。
座る者の名は、第1王子 ロデン。
巨人王国建国からの長い歴史で1番の汚点と言われた出来損ないの王子だ。
能力では無い、人格が、性格が、趣味が、価値観が、全てが異常にして異端。
英雄トールが、こやつに跡を継がせてはならぬと散々口を酸っぱくして巨人王に忠告していた程だ。
しかし愚かにも巨人王は、王の前に父だった。
最後の最後まで、決断が出来ず。 一人息子のロデンから継承権を剥奪しなかった。
それが、巨人王国の民を地獄に落とすとも知らずに。
巨大な手で、醜く出た腹を嬉しそうに叩く。
「ぐふふふ、ぐふふふ! そうかぁ、おでを馬鹿にしていた爺は死んだかぁ! ぐふふふ、ぐははは」
ロデンの前に跪いているのは、巨人王国直属戦士団の団長アバンで在る。
「はっ……仰せつかりました任務は完了致しました。 ですので、新巨人王陛下。 お預けしております、我等の娘息子を家へ帰して頂きたく」
「ぶほぉ? ぐふふふ、勿論だぁ。 直ぐに帰宅させるでぇ、いやあ無事に帰還できて良かっだぁ」
(この豚野郎が! お前が団員の家族を人質にしたんだろぉがぁ!)
団長アバンの顔は憎しみに満ちた表情をしているが、幸か不幸か跪いているためロデンに見られる事は無かった。
「して、王よ。 その……下に敷いておられるのは、前巨人王では?」
「ぐふふふ? あぁ、この生ゴミかぁ? いやぁ、父上は病気で死んだでな。 この生ゴミは後で団長が片しておいてぐでえ」
ロデンの下に敷かれた、前巨人王は苦しみに満ちた顔で事切れている。
(毒か……。 これも、何もかも、甘い貴方のせいですよ! 私達巨人は、継承権を持つ王に従わなければならない。 これから、この巨人王国は地獄に変わる!!)
団長アバンの実力であれば、ロデン等いつでも斬り殺せる筈だ。 しかし、それは出来ない。 新たな巨人王国を建国する際に出来た愚かな誓い、憎らしい風習が巨人王に逆らわせない。 もし、この場でロデンを殺せばどんな理由があろうとアバンの家族、親戚、関係する者全てが処刑されるのだ。
この誓いや風習は、何時か絶対に問題になると英雄トールが止めたにも関わらず新たな王族達は断固として聞き入れなかった。
全ては自業自得の結果なのかもしれない。
「ぐふ? おお、そうだぁ。 新巨人王の初めての仕事をせねばなぁ。 民に知らせよ! 少女は全ておでの妾とする、これは巨人王からの勅命だとなぁ! だからぁ、家に帰った娘を直ぐに王城に来させるように。 頼んだでなぁ? 団長~」
醜い笑み浮かべるロデンの声を聞きながら、アバンは食いしばった齒から血を垂れ流し拳を
(こ、このゴミがぁ! 最初から娘を返すつもり等無いでないか! やはり、やはり貴方を裏切るべきでは有りませんでした……トール殿)
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