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第52話 獣王国の乱
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クウネルがマンドラゴラを命懸けで実食している頃、獣王国では――――
獣王国の広間は、獣王の怒気に満ちていた。
玉座には現在の獣王で獅子の獣人ルルボが座り、隣には同じく獅子の獣人第1王子のルルバトが立っていた。
獣王ルルボの怒気が向けられているのは、広間中央に立つ第2王子ウンポだ。
「して、ウンポよ。 もう一度だけ聞く、何故英雄トール殿とその家族に村の巨人達を殺害したのだ? 誰がその様な指示を出したっ!」
ルルボが喋るだけで、その場の空気が揺れる。 あまりの気迫に兵士達すら尻尾を丸め怯えた。
しかし、当のウンポは飄々とした態度で言い放つ。
「ですから、何度もお伝えした様に大罪人トールが魔王を秘匿し、また亜人全体を危険に晒そうとしているのを知ったからです。 そして、見事に討ち取り首を持ち帰りました。 父上は何が御不満なのですか?」
ルルボの座っている玉座が握り締められた事により悲鳴を上げる。 獣王ルルボの力に耐えれず、大理石の玉座が割れ始めた。
「この……愚か者めがぁっ!! お前達、若い世代はどうしてそう歴史を履き違えるっ! トール殿とエルフの女王殿が当時居なければ、我等は皆殺しにされていたのだぞ!? もう我慢ならん! 今より第2王子ウンポは罪人とする! 衛兵!」
「我が愚弟ウンポよ、兄で有る私もほとほと愛想が尽きた。 衛兵! この罪人を地下牢に連行せよ! 最後の情けだ、死ぬまで地下で生きよ」
獣王が怒り、第1王子が衛兵に指示をするが……その場を動く者は1人も居なかった。
「どうした! 何故罪人を連れて行かぬ!」
「くっくっくっ……はははっ! はーはははっ!! 何故誰も動かないか分かりませんか? 父上ぇっ!」
衛兵達が突如として大挙し、獣王ルルボと第1王子ルルバトを縛り上げた。
「ウンポ……お主何をしたぁっ!」
「あぁ、可笑しい! 最高だっ! 力に任せて獣王となった父上も年老えば、この数の衛兵達で捕縛できる! くっくっくっ! 兵士達は皆、私を支持してくれているのですよ。 さぁ、衛兵長! この罪人2人を地下牢に連れて行きなさい!」
「はっ! 新獣王の御命令のままに! おい、連れて行け!」
「「「ははっ!」」」
衛兵長が部下に命じ、2人を縛り上げる。
「ぬぅぅっ! ウンポよ、この様なやり方で王となっても国民は付いて来ぬぞ! 愚か者めがぁっ!!」
「くっ! 覚えていなさい我が弟ウンポよ! 必ず、必ず思い知らせてやりますっ!」
無様に連行される父と兄の姿を見て、ウンポは笑みが止められない。
「あはっ! それは楽しみにしておきますね、兄上。 そうそう、最後の情けに……死ぬまで地下で生きて下さいね」
ルルボとルルバトが衛兵達に引き摺られ広間から消える。 そして、ウンポは上機嫌で獣王の玉座へと座った。
「あぁ、最高の気分だ。 爺、爺はおるか」
何処からともなく、老執事がウンポの側に現れる。
「此処におります、新獣王様」
「ありがとう爺。 お前のお陰で全て上手くいったよ! くっくっくっ! 兵士達の様子はどうだ?」
「お褒め頂き、恐悦至極にございます。 兵達は皆、大罪人トールの討伐を指揮し首を持ち帰った新獣王様を支持しております。 民達も、新獣王様のご即位を喜ぶでしょう」
一番の信頼を置く爺の言葉を聞き、ウンポは更に上機嫌となった。
「うむ、うむ! そうであろう! これから、私の元で獣王国は新時代を迎える! 勇者殿や、聖王国との繋がりを作ってくれた爺には本当に感謝しておる。 もし、褒美に欲しい物が有れば何でも言ってくれ!」
「いえいえ、全てはお仕えする主の為でございます。 私ごときに褒美等不要でございます」
「そうか、私は良き執事を持ったな。これからもどうか、よろしく頼む!」
そして上機嫌なウンポは、玉座から降りて新しい部屋へと向かう。 獣王に相応しい豪華な部屋へ。
この時、ウンポは知る由も無かった。
お辞儀をしている、羊の獣人の老執事がずっと狂喜に満ちた笑顔を浮かべていた事に。
獣王国の広間は、獣王の怒気に満ちていた。
玉座には現在の獣王で獅子の獣人ルルボが座り、隣には同じく獅子の獣人第1王子のルルバトが立っていた。
獣王ルルボの怒気が向けられているのは、広間中央に立つ第2王子ウンポだ。
「して、ウンポよ。 もう一度だけ聞く、何故英雄トール殿とその家族に村の巨人達を殺害したのだ? 誰がその様な指示を出したっ!」
ルルボが喋るだけで、その場の空気が揺れる。 あまりの気迫に兵士達すら尻尾を丸め怯えた。
しかし、当のウンポは飄々とした態度で言い放つ。
「ですから、何度もお伝えした様に大罪人トールが魔王を秘匿し、また亜人全体を危険に晒そうとしているのを知ったからです。 そして、見事に討ち取り首を持ち帰りました。 父上は何が御不満なのですか?」
ルルボの座っている玉座が握り締められた事により悲鳴を上げる。 獣王ルルボの力に耐えれず、大理石の玉座が割れ始めた。
「この……愚か者めがぁっ!! お前達、若い世代はどうしてそう歴史を履き違えるっ! トール殿とエルフの女王殿が当時居なければ、我等は皆殺しにされていたのだぞ!? もう我慢ならん! 今より第2王子ウンポは罪人とする! 衛兵!」
「我が愚弟ウンポよ、兄で有る私もほとほと愛想が尽きた。 衛兵! この罪人を地下牢に連行せよ! 最後の情けだ、死ぬまで地下で生きよ」
獣王が怒り、第1王子が衛兵に指示をするが……その場を動く者は1人も居なかった。
「どうした! 何故罪人を連れて行かぬ!」
「くっくっくっ……はははっ! はーはははっ!! 何故誰も動かないか分かりませんか? 父上ぇっ!」
衛兵達が突如として大挙し、獣王ルルボと第1王子ルルバトを縛り上げた。
「ウンポ……お主何をしたぁっ!」
「あぁ、可笑しい! 最高だっ! 力に任せて獣王となった父上も年老えば、この数の衛兵達で捕縛できる! くっくっくっ! 兵士達は皆、私を支持してくれているのですよ。 さぁ、衛兵長! この罪人2人を地下牢に連れて行きなさい!」
「はっ! 新獣王の御命令のままに! おい、連れて行け!」
「「「ははっ!」」」
衛兵長が部下に命じ、2人を縛り上げる。
「ぬぅぅっ! ウンポよ、この様なやり方で王となっても国民は付いて来ぬぞ! 愚か者めがぁっ!!」
「くっ! 覚えていなさい我が弟ウンポよ! 必ず、必ず思い知らせてやりますっ!」
無様に連行される父と兄の姿を見て、ウンポは笑みが止められない。
「あはっ! それは楽しみにしておきますね、兄上。 そうそう、最後の情けに……死ぬまで地下で生きて下さいね」
ルルボとルルバトが衛兵達に引き摺られ広間から消える。 そして、ウンポは上機嫌で獣王の玉座へと座った。
「あぁ、最高の気分だ。 爺、爺はおるか」
何処からともなく、老執事がウンポの側に現れる。
「此処におります、新獣王様」
「ありがとう爺。 お前のお陰で全て上手くいったよ! くっくっくっ! 兵士達の様子はどうだ?」
「お褒め頂き、恐悦至極にございます。 兵達は皆、大罪人トールの討伐を指揮し首を持ち帰った新獣王様を支持しております。 民達も、新獣王様のご即位を喜ぶでしょう」
一番の信頼を置く爺の言葉を聞き、ウンポは更に上機嫌となった。
「うむ、うむ! そうであろう! これから、私の元で獣王国は新時代を迎える! 勇者殿や、聖王国との繋がりを作ってくれた爺には本当に感謝しておる。 もし、褒美に欲しい物が有れば何でも言ってくれ!」
「いえいえ、全てはお仕えする主の為でございます。 私ごときに褒美等不要でございます」
「そうか、私は良き執事を持ったな。これからもどうか、よろしく頼む!」
そして上機嫌なウンポは、玉座から降りて新しい部屋へと向かう。 獣王に相応しい豪華な部屋へ。
この時、ウンポは知る由も無かった。
お辞儀をしている、羊の獣人の老執事がずっと狂喜に満ちた笑顔を浮かべていた事に。
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