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第一章 新たな巨人生 幼少編

第30話 説明と呼び名

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 ――っていう事が、気絶してる間にあった」

 クウネルは、夢の筈が無いアスカガルドでの出来事をざっくりと家族に話したのだが……両親の表情は暗い。

 ちなみに、クウネルは朝からドラゴンステーキを口いっぱいに頬張っている。

 (6食分も食べてないんだもん、そりゃ食も進みますよ。 うまうま、自分で仕止めた獲物の肉の味は格別ですなぁ。 まぁ、とりあえず話したけど。もちろんすんなり信じてくれる訳がないよね~)

 ロスとエルザは、クウネルは初めての実戦のストレスで変な夢でも見たと思っている。 当たり前だが、娘が気絶から目を覚ましたら巨神のいる世界に招待された等と言い始めたら信じるのは難しいだろう。

 前世の地球でも、神に会ったと言い始めた人間は漏れ無く病院送りになるのではないだろうか。

 「いや、クウネルを信じない訳じゃないんだが。 さすがに、巨神なんて居ないだろう?  じーじから聞いた事は有るけど……おとぎ話だ」

 ロスが頭をボリボリ掻きながら呟く。

 「やれやれ、ロスは本当に馬鹿者じゃわい。 クウネルが言っておる事は間違い無いじゃろう。 巨神様は実在する」

 祖父トールだけが、疑う事無くクウネルの話しをすんなりと受け入れ信じていた。

 「どうしてクウネルの話しが本当ってわかるの?」

 エルザはトールが間違いないと何故言い切れるのか不思議なようだ。

 (私も不思議です。 何故に?)

 「クウネルの話しに出て来た、バザムと名乗る巨人は儂の妻じゃ。 もう、大昔の大戦の時に死んだがの」

 「だが、大昔に死んだおふくろの名前はクウネルも前に親父から聞いてたんだろ? なら、それが夢に出ても可笑しくはないじゃないか」

 「ぐあっはぁっは! クウネルや、バザムはどんな容姿じゃった?」

 (モッチャモッチャモッチャモッチャ、死んでから2日経ってるのにこの美味しさって竜やばくない? 狩り尽くす? ……って、ちょっと急に話し掛けないでよ! 喉に詰まるやん)

 「んぐ、ゴクンッ! お祖母ちゃんの容姿? えっと……茶髪の短髪で、おでこから口元にかけて斜めに古傷が合ったよ。 見た目の歳は……ママぐらいかな? 後は……腕や足に沢山の古傷があって筋肉もムキムキで凄く格好良かった」

 (本当に私のお祖母ちゃんは格好いい巨人だった。 血が繋がって無いって分かってからも、孫として可愛がってくれたし)

 クウネルは祖母の事を考え、少し寂しくなりながら飛竜の肉に齧り付く。

 「そうか……あの頃の見た目のままなのか。 儂だけが、歳をとってしまったのぅ。 まぁ、そんな事はええ。 そうじゃろ! バザムは大昔の王国で一番の美人じゃったんじゃ! 猛アタックして嫁に来てもらったんじゃぞ!」

 祖父トールは何処か寂しそうに笑ったが、それ以上に嬉しそうに微笑んだ。 皺だらけの顔で笑うトールは、大昔に亡くした妻の話しを聞けて嬉しくて仕方がなかった。

 「えぇ? 親父、本当におふくろの容姿はクウネルが言ったのであってるのか?」

 「もちろんじゃ、儂はクウネルにバザムの名前しか言っておらん。 ということはじゃ、巨神様の話しもアスカガルドの話しも本当じゃろうて」

 「んー、でも、そもそも巨神様は何でクウネルを?」

 両親に見つめられたクウネルは食事を続けながら応えた。

 「えっと、お祖母ちゃんが初めての実戦で竜を殺したのをお祝いしたかったんだって。 他の巨人のおじちゃん達も沢山お祝いしてくれた」

 (あの巨神王国流の掛け声とやらは、本当に迫力が凄かったからね)

 「ふむ? もしや、バザムや他の戦士達に祝い言葉を受けたか?」

 「ん、お祖父ちゃん正解。 あれは、凄かったよ」

 「ぐぁっはぁっは! そうか、アレを受けたか! クウネルよ、アレは大昔の戦士団で新人の戦士に贈る名誉有る伝統じゃ。 懐かしいのぉ」

 「あれ? クウネル、どうしてじーじをお祖父ちゃんって呼ぶんだ? 数日前まではじーじだったのに」

 「お祖母ちゃんがね、ばーば呼びは照れるから呼ぶならお祖母ちゃんにしてって、言ってた。 だから、じーじもお祖父ちゃん呼びにする」

 (じゃないと、お祖母ちゃんだけ除け者みたいで嫌だからね)

 クウネルは何やら絶句する両親の顔を見ながらドラゴンステーキを咀嚼する。

 「ぐあっはぁっは! うむ、お祖父ちゃんって呼ばれるのもええのう。さすが、儂の妻じゃ」

 「え?! えぇ!? クウネル、じゃあパパもお父さん呼びが良い!」

 「ママも! お義父さんだけズルいですよ! ママも、お母さんって呼んで! クウネル!」

 (はいはいはいはい、この両親は全く。 どれだけ私の事が好きなのさ。 もう、照れるじゃん。 別にいいけどさ) 

 クウネルは照れながらも、現世の両親達に愛されている事を実感し幸せそうに微笑んだ。
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