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第25話 アスカガルドと巨人戦士団

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 バザムに頭を撫でられるクウネルはある事に気付く。

 「えへへ、そういえば、私は生きてるんだよね? 精神だけ此処に来てるの?」

 『ふふ、本当に賢い子だ。やはり、あの子と同じ転生者なだけは有るねぇ。 そうだよ、今クウネルは魂だけでアスカガルドに来てる。 ここは、巨人達の楽園さ。 僕から祝福を受けた巨人は、死後必ず此処に招待するんだよ』

 (なるへそね、っていうかあの子って誰? 魔王様の事かな? 待てよ、じゃあ他の巨人とは違うこの人が……)

 「ほぇー……って事は、貴方が巨神様?」

 『うん、そうだよ。祝福を与えた者の事は、僕はいつでも見れるからね。 その歳で、良くあの飛竜と戦い抜いた。 クウネル、凄く格好良かったよ。 君程、根性がある子はもう今の巨人の国には居ないだろう』

 巨神は無事な手で顎を撫でながらクウネルを褒めるが、クウネルは何時も巨神が自分を見ていた事を知り苦笑いだ。

 (あらま、もしかして巨神様は盗み見が趣味なのかな? まぁ、褒められて悪い気はしないですけどね。 プライバシーが尊重されてた前世が懐かしいですよ)

 「うんうん、そうさね。さすが私の孫さね!  はっはっはっは!」

 巨神の話を聞いていた祖母バザムも嬉しそうに誇らしげに笑う。

 (お祖母ちゃんの豪快な笑い方は、どこかじーじに似てる。 似た者夫婦だったのかな? 初めて会ったのに、何か安心するな)

 「それで、どうして私はアスカガルドに? まだ死んでないんだよね……?」

 「あぁ、それは私が巨神様に頼んだのさ。 孫が初めての実戦で竜殺しをしたんだよ? お祝いして上げたくて、いてもたっても居られなくてね、こうしてクウネルを喚んでもらったのさ。 ほら、こっちにおいで」

 立ち上がったバザムに誘われて草原を進むと、直ぐに大きな白い石で出来た建物が見えてきた。 見た目は前世のローマ神殿に酷似しており、見上げる程に大きい神殿をクウネルは唖然とした表情で見る。

 (なんだこの建物、超巨大! じーじが楽に入れるサイズ! 一体誰がこんな巨大な建築物建てたの)

 その建物に入ると、喧騒が響いてきた。 同じぐらいの大きな笑い声も。 神殿の中はとても広く、白い石で造られた巨大なテーブルや椅子に多くの巨人達が座り宴会をしていた。   

 皆、祖父トールと同じかそれ以上に大きい巨人の姿も見える。

 (何だろ、私巨人の筈なのに小人になった気分)

 「ほらっ、あんた達! 私の孫が来たよ!! 盛大に祝いなぁっ!」

 祖母バザムが大きな声で叫ぶと、巨人達が一斉にクウネルを見る。

 (迫力満点!! こっわっ! なになになに、お祖母ちゃん。 私はお祖母ちゃん褒められるだけでお腹一杯かもです。 ええ、はい)

 バザムの足下でぷるぷるとクウネルが震えていると、沢山の巨人達がクウネルを覗き込む。

 「おぅ! 皆見てみろ団長の孫だぞっ!」 「まだちっこいのに、よう竜を倒した!」 「こっちゃ来い! 儂が狩った魔物の肉食わしちゃる!」 「へぇ、団長と副団長の孫ねぇ。 俺達が年寄りになるわけだ」 「おいおい、何言ってんだよ。 俺達はとうに死んでる身だ、年取るわけねぇだろ」 「ちげぇねぇや! ぎゃはははは」

 皆笑顔で、クウネルの初めての狩りが成功した事を褒めた。 

 (えへへ、凄い数の巨人達に圧倒されたけど皆良い人みたいだ。 あ、魔物のお肉は貰いに行きまーす。 おいしっ! ドラゴンの生肉より美味しいんですけど?!)

 クウネルが知らない魔物の肉を口いっぱいに食べていると、バザムがジョッキを片手に大きな声を張り上げる。

 (何事?! っていうか、やっぱりこのお肉おいしっ! アスカガルドでも、魔物って獲れるんだねー。 何の魔物なんだろ、元の世界でも獲れるのかな)

 「よぉしっ! あんた達! 巨神王国流の祝い酒だ! いくよぉっ!」

 石の椅子に座った、多くの巨人達が一斉にテーブルを叩く。

 ドンドンと石のテーブルが叩かれ、地面が揺れる。

 「「「「「おうっ!!」」」」」

 バザムがテーブルの立ち上がり、クウネルに向かって声を張り上げた。

 「巨人の新たな戦士に!」

 巨人達の足踏みも始まり、神殿がグラグラと揺れる。

 「「「「「おぅっ!!!」」」」」

 「斧を掲げ! 槍を振り回し! 戦士の門出を皆で祝えっ!」

 椅子に置いていた各々の武器を掲げ、武器の石突きを床に叩き付け、鼓膜を揺らす程の重低音が響き渡る。

 「「「「「おぅっ!!!!!!」」」」」

 「酒を飲んで、飲みまくれ!狩った獲物を貪り食えっ!」

 「「「「「おぅっ!!!!!!!!!」」」」」

 「新たな戦士に巨神の加護をっ!!」

 巨人達はヒートアップし、地鳴りが激しくなった。

 「「「「「加護をっ!!!!!!」」」」」  

 「クウネルに乾杯!!」

 バザムがクウネルにジョッキを向けてから、一気に飲み干す。

 「「「「「「かんぱぁーいっ!!」」」」」

 一斉にテーブルに有ったジョッキを、皆が勢い良く飲み始めた。

 その光景をクウネルはまるで神話の様だと、キラキラした瞳で感激したのであった。
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