真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第12話 とある国の決意と巨人の歴史

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 ――――とある国の、とある会議室にて。

 魔法の灯りが灯った薄暗い部屋には円形にテーブルが並び、4人の偉そうな男女が円を描くように座っていた。

 その中央には囲まれる様に男が1人立っている。

 「で、トール殿の初孫はどうであった?」 

 座っている中で、一番体格のいい男が中央に立っている男に報告を聞く。

 「ふんっ、わざわざこの私が出向いたのだ。不備が有るわけ無かろう。これが報告書だ」

 貴族のような服を着た男が、指を鳴らす。

 立っていた男が指を鳴らすと、報告書が宙に浮き4人の下へ飛んでゆく。

 「へー、黒髪の巨人か」

 気だるそうにテーブルに突っ伏した男が呟く。

 「ふふっ、これは良い事かしら? それとも、災いの兆し?」

 薄暗い部屋でも、女性と直ぐわかる程の甘ったるい声が響く。

 「ひゃひゃひゃ、もしかすると……のう?」

 楽しそうに笑う声は、老婆の様な喋り方だった。

 4人が読む書類には、髪の色は勿論、体型から声、見てとれる癖等が載っていた。

 「ふむ、お前は直に会ってどう思う?」

 最初に口を開いた男が問うと、中央の男は肩を竦めて答える。

 「ふっ、あの方の生まれ変わりという線は無いな。ただ珍しく黒髪で産まれたというだけであろう」

 その答えに気だるそうな男が口を開いた。

 「ふーん、断言出来るんだ。何で?」

 「トール殿の様子を見ればわかる。あの御方に対する接し方では無かったのでな」

 会話を聞いていた甘ったるい声の女性が笑い始める。

 「あははははっ、珍しく黒髪ねぇ。私達や亜人の中に黒髪が産まれたのって、前はいつ? 誰? 何人だっけぇ」

 「これこれ、意地の悪い事を言うんじゃないよ。 でも、あの方以外に黒髪が我等や亜人から産まれた事は無い筈じゃよ?」

 老婆の様な声が甘ったるい声の女性に釘を刺す。

 「分かった、皆其処までだ。トール殿は、我等や亜人の恩人だ。向こうから動きが有るまで静観すべきだろう」

 最初に話し始めた男が制止すると、全員が黙った。

 「だね~」
 「ふふっ、あ~らもうおしまい? 残念ね」
 「ひゃひゃひゃ、分かった分かった」

 「ふんっ、自分達は城に引きこもりで良いご身分だな」

 「しかし、他の国がどう思うかわからん。次のクウネル嬢の誕生会も使者として出向いてもらうが、頼む」

 「くっ、分かっている。 それまで私は領地に籠るのでな。これで失礼させていただく」

 立っていた男は転移魔法で部屋から退出し、残った4人の内3人もそれぞれの領地へと帰還していった。

 「もし……あの方に関係するなら、今度こそ、今度こそ必ず守ってみせる!!」

 残った1人の呟きが薄暗い会議室に木霊した。

 ◆◇◆

 (くぁ~、おはようございます。 良く寝た! まだまだ幼児の体だからね、昼寝は欠かせないぜbaby! よし、今日の勉強は~……確かじーじと歴史の勉強だったね~。 楽しみだー!)

 昼寝から起きたクウネルはベッドから起き上がり、居間へと向かう。

 「ん、おはよー」
 クウネルが起きて居間に行くと、エルザが待っていた。

 「あ、クウネルおはよ~。良く寝てたわね、じーじが外で待ってるって」

 「は~い、行って……きます」

 「気を付けてね、勉強頑張ってらっしゃい。晩御飯は焼き肉解禁よ~」

 まだ眠い身体を引きずっていたクウネルは一瞬で覚醒する。

 (マジか!! 遂に焼き肉だ~! ひゃっほーい! いかんいかん、嬉しすぎて私が乙女なの忘れてた。 うふふ、お勉強頑張りますわお母様。 うん、違うね。 やっぱりひゃっほーい! が私らしい。 焼き肉の為なら、乙女など捨ててしまおう)

 ハイテンションになったクウネルはスキップしながら家を出た。

 ガチャッ

 家を出て周囲を見渡すが、祖父トールの姿は見えない。

 (さて、じーじは何処かな? 岩山のお家かな?)

 村の側に有る、一際大きな岩山がトールの家だった。
 岩山の中を自分で掘ったと聞いた時クウネルは耳を疑ったものだ。

 「あ、じーじ~」

 クウネルが手を振りながら駆けて行くと、難しい顔をしていたトールが笑顔で手を振り返す。

 まだエルザに叱られたのを引きずっていたのだろうか、その顔は暗かった。 しかし、孫を見つけると直ぐに満面の笑顔に変わるのを見てクウネルは嬉しくなる。

 「おぉ、クウネル起きたか。じゃあ、じーじと勉強の時間じゃな」

 「ん。でも、じーじ難しい顔してた。何か……あった?」

 「いんや、クウネルが心配する事は何も無いぞ。 クウネルは優しい子じゃのぅ。 そうじゃ、歴史の勉強をするのに巨人の話からしようかの」

 岩山の家から出て来たトールが、手招きするのでクウネルは肩に登る。

 どうやら、今日も家の中で勉強を始めるようだ。

 岩山の中はそれなりに広く天井には光を入れる為の穴も開いており、薄暗いものの十分見えるレベルだ。

 中には武器や鎧、食器や短剣、ベットの代わりか草が敷き詰められている。

 そして、一番奥には祭壇なのか仏壇なのかは不明だが、神聖さを感じる物が設置されており。 トールは其処で歩みを止めた。

 「じーじ、これは何?」

 「これが、全ての巨人の祖で有り。我等巨人を絶えず見守って下さっておる巨神様の祭壇じゃ」

 トールの言葉にクウネルは納得する。

 (あー、なるへそ。 確かじーじには巨神の加護があったよね。 ても、両親や近所のおじちゃんおばちゃん達には加護は無かったな)

 鑑定を使い調べた限りだと、加護を持っていたのは祖父トールのみだった事をクウネルは思い出す。

 全ての巨人に当たり前の様に加護があるわけではないようだ。 しかし、ステータスの加護に表示されるという事は本当に存在する神なのだろう。

 「巨神様……の祭壇。でも、クウネルの家には無いよ?」

 「そうじゃな、巨神様を当たり前に知ってる巨人はもう儂だけじゃからの。 じーじが若い頃は、巨神様を皆が崇めておった。 武神で有り、狩人の神であったからの……。 しかし大きな戦争が起き、当時居た強き勇敢な巨人達は皆戦死した。 そして、若い巨人ばかりになり巨神様への信仰も廃れていったのじゃ」

 トールは昔を懐かしみながらも、何処か寂しそうに話す。

 「それは、何故?」

 クウネルの問に、トールは重く苦しそうに呟く。

 「巨神様は……巨人を見捨てたんじゃ」

 クウネルはトールの言葉に衝撃を受けた。

 (え、ダメじゃん)
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