真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
上 下
10 / 237

第10話 勉強の続き&暗躍の兆し

しおりを挟む
「よし、どれどれ。リンゴが有るの、クウネルもこれで良いか?」

 コクコクコクコクコクコクコクコクコクコクコク

 クウネルは高速を首を縦に振った。

 (早く早く早く早く早く早く! please!)

 「わかった、わかった。少し待っておれ」

 クウネルが涎を垂らして頷いてると、トールが短剣を取り出し一瞬でリンゴを剥いてクウネルに手渡す。

 トールの短剣の動きは完全に達人のものだった。

 (さすがじーじ。 略してさすじじ)

 「ほれ、ゆっくり食うんじゃぞ」

 「ん、ありがと……じーじ」

 クウネルは、自身と同じ大きさのリンゴを受け取りかぶりつく。

 モシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャ

 口の中に甘酸っぱいリンゴの味が広がるが、直ぐに甘くなりあまりの美味しさにクウネルの頬も緩む。

 (ジューシー!! うん、まいうー! 美味しいー!! 生きてる! 私今日も、生きてるよー!)

 がっつくクウネルを見てトールは微笑みながら注意する。

「こりゃこりゃ、さっきゆっくり食えと言うたばかりじゃがな」

 しかし、それぐらいでクウネルは止まる筈も無くそのまま全て食べ切ってしまった。

 モシャモシャモシャモシャ……ゴクンッ!

 「んぐ、おいしい!」

 「そうか、ならええか! クウネルはかわええのぉ」

 トールは、爺バカである。
 状態異常になる程の正真正銘な爺バカだ。

 (私は嬉しいから、良いんだけど……甘すぎじゃない?)

 「ん、それよりじーじ……勉強の続きは?」

 「んん? あぁ、そうじゃな。後は……北西の地底王国じゃな。地底に穴を掘り、頑固じゃが職人としては並ぶ者が居ないドワーフが住んでおる。 身長が低いが儂の様に立派な髭を生やした者が多いの」

 トールとクウネルは先程の洞窟に戻り、絵の続きを書き足す。 しかし、トールが書き足した場所は人の住めぬ魔の領域魔の森であった。

 (え? 北西? 其処、魔の森じゃね?)

 「え? 北西は魔の森だよ……ね?」

 「その通りじゃ、クウネルは本当に賢いのぉ。地上は確かに魔の森じゃ、しかし地下は違う。 地下にも魔物は出るが、地上程では無いし希少な鉱石も採れる。 じゃから、ドワーフ達は地下を掘り進め巨大な坑道を作った。そして、それが地底王国になったのじゃ」

 (なるへそ、鉱石が欲しくて魔の森の下を掘ったんだね。 うわー、前世のイメージ通りだ。 加工したり、造ったりするのが大好きな種族なんだろうね)

 クウネルは納得しながらトールの説明に耳を傾ける。

 「ドワーフは職人としては凄いが、いかんせん頑固でな。一度へそを曲げたら、絶対に機嫌が治らん。 じゃが、酒を持って行けばコロッと機嫌が直る。 面白い種族じゃて」

 (うん、知ってる。 この前の誕生日会に来てたドワーフさん祝いの席に持ってきた酒樽、結局自分で全部飲んで帰ったからね。 何しに来たんだろうね、あの小人みたいに小さな種族は)

 「でも、入り口は……魔の森の中にあるの?」

 クウネルの質問に、トールは話をしっかり聞いていることを確かめ微笑む。

 「ふふ、あぁそうじゃな。入り口は2ヶ所有るぞ。癒しの森と巨人の王国じゃ。ちゃんと、門と関所まで有る立派な入り口をしとったの」

 (そうだよね、魔の森の中にわざわざ出入口作る必要ないよね。 地下を自分達で掘れるんだもんね)

 「そっか……じーじは入った事……有るの?」

 クウネルの無邪気な質問にトールは大笑いした。

 「ぐあっはぁはっ! 儂ら巨人には、ちと狭いでな。入れるのは普通の大きさの種族達だけじゃろう。 まぁ、ドワーフ達は歓迎せんじゃろうがな」

 「ふーん、そうなんだ」

 (そりゃそうか、自分達よりはるかに大きい種族用に掘るのも手間だろうしね。 残念、私も地底王国に行く機会は無さそうだ)

 「よし、クウネルよ。今日はもう帰るとするか。あまり遅くなったら、ママにじーじが怒られるからの。ぐあっはぁはっ!!」

 「うん……勉強楽しかった、ありがとじーじ」

 クウネルは夕日に照らされながら帰宅した。
 トールの肩は乗り心地が良く、クウネルの好きな場所の一つである。

 この世界に産まれてから、たくさんの好きが出来たクウネルは幸せを噛み締めていた。

 (幸せってこういう、何気ない事を言うんだよね。 明日も楽しい日になるといいなー。 また明日ね)

 ◆◇◆

 ――――とある国の、とある部屋にて。

 豪華な内装の部屋に、偉そうに椅子に座っている男がひれ伏している者に話しかける。

 「ご苦労であったな。して、過去の遺物殿の孫とやらはどうであった?」

 「はっ! トール殿の孫はクウネルと言う名の娘でございました」

 「ふむ、そうかそうか。で、肝心の髪の色はどうであった?」

 ひれ伏している者に緊張が走る。

 「……はっ! 黒でございました。1歳にして、言葉を喋る神童だと村では有名のようです」

 偉そうな男が鼻を鳴らし、憎々しげに答える。

 「ふんっ、やはりか。あの遺物めが、また戦争をもたらそうと企んでおるのか……。よし、分かった。大義であったな、ちなみに父や兄にはバレておらぬだろうな?」

 「はっ! 勿論でございます! 御指示通りに、国には内密に参加し帰還致しました」

 偉そうな男が満面の笑顔を向けてきたので、ひれ伏していた男は安堵から胸を撫で下ろした。

 「うむうむ、そなたに頼んで正解であった。よし、褒美を取らせよう。別室に準備して有る。苦労をかけたな、もう下がってよいぞ」

 「はっ! 有り難き幸せにございます。それでは、失礼致します!」

 足早にひれ伏していた男は退室して行き、それを偉そうな男は冷酷な瞳で見ていた。

 「おい、そこのお前」

 部屋に待機していた兵士の一人が反応する。

 「はっ!」

 「先程の者を始末しておけ。部屋からは出すな」

 「ははっ!」

 足早に数名の兵士が退室した。 先程の男を始末する為に。

 「よし、これで憂いは無くなったの。ジィ、ジィは居るか」

 偉そうな男が誰かを呼ぶと、老執事が何処からともなく現れる。

 「はっ、此処に居りまする」

 「近隣諸国の友人に手紙を送る、手配しろ」

 「はっ。では、やはり人間からきた情報は本当だったのですな」

 「うむ……これも平和の為だ、仕方無かろう。過去の遺物達には消えていただこう。もちろん例の娘もな」

 老執事は出てきた時と同じように、いつの間にか部屋から消えていた。

 「さて、私が王になる為に世界の平和の為に動くとしようか。ふははははははっ! ふーははははははっ!!!!」

 クウネルの知らない所で、悪意が動きだした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...