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第一章 新たな巨人生 幼少編
第8話 Happy Birthday! 私! その2
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種族の名前や由来、特徴は祖父トールと母エルザがその都度クウネルに教えている。
父ロスも懸命に説明しようとするが、愛娘にはガン無視されていた。 口は災いの元である。
既に何度か喋っていたが、クウネルは言語を直ぐに理解し会話する事が出来た。
何故なら、この世界では前世で使っていた日本語と英語が当たり前に存在していたからだ。
その事に対し疑問は尽きないが、今考えても仕方あるまい。
何ヵ月目かにクウネルが普通に喋ったら、父も母も大喜びだった。
祖父だけは何故か思案顔だった事にクウネルは違和感を感じたが、直ぐに喜んでくれたので忘れる事にした。
(直ぐに喋りだした私は、この村では神童と呼ばれている。 ふふふ、苦しゅうない苦しゅうないぞ! え? それはもう良いって? ん? 普通の人間が挨拶に来たぞ?)
クウネルの前に、亜人では無さそうな人物が現れた。
「この度は、お誕生日おめでとうございます。ジンネル王国を代表し、心からお祝い申し上げます」
騎士の様な立派な鎧を着た年配の男性がクウネルとトールに頭を深く下げる。
(お~、えらく畏まった人間のおじさんが挨拶に来てくれたね。 おろ? でも、確か巨人と人間は敵対してるんだよね?)
クウネルが疑問に思っていると、頭上から声がした。
「儂の初孫の為に、わざわざお越し頂き感謝する。ジンネル王にも、礼を伝えてくれい」
どうやら、祖父トールはこの人物を知っているようだ。
「はっ! 必ずお伝え致します! 我等の国を救って下さったお方のお孫様のお祝い、何があっても祝いに駆け付けると王が騒ぎまして。何とか静めた次第でございますゆえ、これで私も肩の荷が降りました」
「ぐぁっはぁっはぁ! あれは偶然じゃと何度も言ったんじゃがな。まぁ良いわい、ゆるりとして行かれよ将軍殿」
(ふえー、じーじの知り合いか。 敵対してるって言っても、全ての人間とじゃ無いんだね。 少し安心したかも、ナイスじーじ!)
将軍と呼ばれた騎士は、案内された席に座るも周囲からは針の筵状態だった。
どうやら友好的なのは、祖父トールだけなのか他の使者達とは険悪の様子だ。
一通り挨拶を終えたクウネルは、ある事に気付く。
(しかし挨拶に来てくれた人達は何故、私の方を一瞬怪訝な顔で見てくるの? さっき来てくれた、人間の将軍さん以外の皆だ。 魔族の使者さんに限っては、何か憎しみすら感じた。 私そんなにブサイク? え、待って、こわいこわい。 まだ自分の姿見てないのよ。 この村には、鏡も無いからね)
因みに、母エルザは身嗜みを整える際にはロスの巨大な戦斧の刃を鏡にして使用しており巨人の文明は其処まで進歩してないらしい。
巨人が脳筋である事に原因があるのかもしれない。
「クウネルや……気にする事はない」
クウネルが自身の容姿の事で唸っていると、トールが話しかけてきた。
「え? ……じーじ、何を?」
「む? 髪の色を気にしておったのではないのか?」
クウネルは祖父に言われ、思わず自身の髪の毛を触る。
(え? 髪の色?? そういえば、茶髪のパパと赤毛のママとの子なのに髪の色は黒だ。 前世から黒髪だから何とも思って無かったけど……もしや珍しいのかな?)
「じーじ……私の髪色はもしかして……変なの?」
「ぐあっはぁはぁ、クウネルは口数は少ないが本当に賢い子じゃ。どれ、全身を見てみぃ」
そう言ってトールは、腰に付けてた短剣をクウネルが見える位置に刺した。
当然ながらクウネルにとっては短剣じゃなくて、大剣ぐらいの大きさだ。
恐る恐る短剣に写った自分を見る。
「うわぁ……お」
其処には、前世のクウネルの面影をそのまま残した黒髪の少女が座っていた。
(はぁ、しかしまさか顔も髪も前世のままとは。 あの自称創造神の爺め、キャラデザ考えるの面倒臭くて適当にしやがったな。 でも……いっか、私はコンプレックスだった身長を除けば、美人に入る見た目をしてた筈だ。 結果オーライ、結果オーライ)
クウネルは自身の姿を見て満足気に頷く。
「む? どうじゃクウネル」
トールが反応に困っている事を察知し、咄嗟に答える。
「ん……私美少女だった」
クウネルがそう言うと、トールは爆笑し始めた。
(おい、じーじ。 どういう意味だ!!)
クウネルは全身で不機嫌を表す。
「ぐぁっはぁっはっ! はっ!? すまんすまん、クウネル。そんなつもりでは無かったんじゃ。機嫌を直しておくれ」
クウネルのパンパンに膨らんだ頬にようやく気付いたトールは小さな孫に平謝りする。
(全く、これだからデリカシーの無い男は。 え? パパ? 泣きながら巨人の戦士団長さんとお酒飲んでるよ。 何でも、愛娘に無視されてるんだってさ。 ふーん)
「うむ、やはりまだ話さずとも良いか。クウネルはそのまま大きくなるんじゃぞ? ぐあっはぁっはっ!」
良くわからないまま、クウネルの誕生日会は終了した。
それでも、前世込みで久し振りの誕生日会にクウネルは満足そうに笑った。
(あ、鬼人さんが持ってきてくれた猪の魔物はママが丸焼きにしてたよ。 こっそりかぶりついたら、ママにバレてめちゃくちゃ怒られた。 その時にパパが庇ってくれたから、今回はこれぐらいで許してやろう。 じゃあ、お休みなさい)
その日の夜、クウネルは幸せそうに眠りについた。
◆◇◆
―――クウネルは最後まで気づかなかった。
挨拶の時にも、宴の時にも、終始悪意の視線を向けてくる者に。
父ロスも懸命に説明しようとするが、愛娘にはガン無視されていた。 口は災いの元である。
既に何度か喋っていたが、クウネルは言語を直ぐに理解し会話する事が出来た。
何故なら、この世界では前世で使っていた日本語と英語が当たり前に存在していたからだ。
その事に対し疑問は尽きないが、今考えても仕方あるまい。
何ヵ月目かにクウネルが普通に喋ったら、父も母も大喜びだった。
祖父だけは何故か思案顔だった事にクウネルは違和感を感じたが、直ぐに喜んでくれたので忘れる事にした。
(直ぐに喋りだした私は、この村では神童と呼ばれている。 ふふふ、苦しゅうない苦しゅうないぞ! え? それはもう良いって? ん? 普通の人間が挨拶に来たぞ?)
クウネルの前に、亜人では無さそうな人物が現れた。
「この度は、お誕生日おめでとうございます。ジンネル王国を代表し、心からお祝い申し上げます」
騎士の様な立派な鎧を着た年配の男性がクウネルとトールに頭を深く下げる。
(お~、えらく畏まった人間のおじさんが挨拶に来てくれたね。 おろ? でも、確か巨人と人間は敵対してるんだよね?)
クウネルが疑問に思っていると、頭上から声がした。
「儂の初孫の為に、わざわざお越し頂き感謝する。ジンネル王にも、礼を伝えてくれい」
どうやら、祖父トールはこの人物を知っているようだ。
「はっ! 必ずお伝え致します! 我等の国を救って下さったお方のお孫様のお祝い、何があっても祝いに駆け付けると王が騒ぎまして。何とか静めた次第でございますゆえ、これで私も肩の荷が降りました」
「ぐぁっはぁっはぁ! あれは偶然じゃと何度も言ったんじゃがな。まぁ良いわい、ゆるりとして行かれよ将軍殿」
(ふえー、じーじの知り合いか。 敵対してるって言っても、全ての人間とじゃ無いんだね。 少し安心したかも、ナイスじーじ!)
将軍と呼ばれた騎士は、案内された席に座るも周囲からは針の筵状態だった。
どうやら友好的なのは、祖父トールだけなのか他の使者達とは険悪の様子だ。
一通り挨拶を終えたクウネルは、ある事に気付く。
(しかし挨拶に来てくれた人達は何故、私の方を一瞬怪訝な顔で見てくるの? さっき来てくれた、人間の将軍さん以外の皆だ。 魔族の使者さんに限っては、何か憎しみすら感じた。 私そんなにブサイク? え、待って、こわいこわい。 まだ自分の姿見てないのよ。 この村には、鏡も無いからね)
因みに、母エルザは身嗜みを整える際にはロスの巨大な戦斧の刃を鏡にして使用しており巨人の文明は其処まで進歩してないらしい。
巨人が脳筋である事に原因があるのかもしれない。
「クウネルや……気にする事はない」
クウネルが自身の容姿の事で唸っていると、トールが話しかけてきた。
「え? ……じーじ、何を?」
「む? 髪の色を気にしておったのではないのか?」
クウネルは祖父に言われ、思わず自身の髪の毛を触る。
(え? 髪の色?? そういえば、茶髪のパパと赤毛のママとの子なのに髪の色は黒だ。 前世から黒髪だから何とも思って無かったけど……もしや珍しいのかな?)
「じーじ……私の髪色はもしかして……変なの?」
「ぐあっはぁはぁ、クウネルは口数は少ないが本当に賢い子じゃ。どれ、全身を見てみぃ」
そう言ってトールは、腰に付けてた短剣をクウネルが見える位置に刺した。
当然ながらクウネルにとっては短剣じゃなくて、大剣ぐらいの大きさだ。
恐る恐る短剣に写った自分を見る。
「うわぁ……お」
其処には、前世のクウネルの面影をそのまま残した黒髪の少女が座っていた。
(はぁ、しかしまさか顔も髪も前世のままとは。 あの自称創造神の爺め、キャラデザ考えるの面倒臭くて適当にしやがったな。 でも……いっか、私はコンプレックスだった身長を除けば、美人に入る見た目をしてた筈だ。 結果オーライ、結果オーライ)
クウネルは自身の姿を見て満足気に頷く。
「む? どうじゃクウネル」
トールが反応に困っている事を察知し、咄嗟に答える。
「ん……私美少女だった」
クウネルがそう言うと、トールは爆笑し始めた。
(おい、じーじ。 どういう意味だ!!)
クウネルは全身で不機嫌を表す。
「ぐぁっはぁっはっ! はっ!? すまんすまん、クウネル。そんなつもりでは無かったんじゃ。機嫌を直しておくれ」
クウネルのパンパンに膨らんだ頬にようやく気付いたトールは小さな孫に平謝りする。
(全く、これだからデリカシーの無い男は。 え? パパ? 泣きながら巨人の戦士団長さんとお酒飲んでるよ。 何でも、愛娘に無視されてるんだってさ。 ふーん)
「うむ、やはりまだ話さずとも良いか。クウネルはそのまま大きくなるんじゃぞ? ぐあっはぁっはっ!」
良くわからないまま、クウネルの誕生日会は終了した。
それでも、前世込みで久し振りの誕生日会にクウネルは満足そうに笑った。
(あ、鬼人さんが持ってきてくれた猪の魔物はママが丸焼きにしてたよ。 こっそりかぶりついたら、ママにバレてめちゃくちゃ怒られた。 その時にパパが庇ってくれたから、今回はこれぐらいで許してやろう。 じゃあ、お休みなさい)
その日の夜、クウネルは幸せそうに眠りについた。
◆◇◆
―――クウネルは最後まで気づかなかった。
挨拶の時にも、宴の時にも、終始悪意の視線を向けてくる者に。
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