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第125話 偽物はどーっちだ!
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一通り悶えたクウネルは、気を取り直して鑑定に指示を出す。
「……さてと、よし! とりあえずお母さんからのメールは全部削除して!」
«了解――確認。 ……すみませんクウネル、不可能です»
「えぇ……なして?」
«お母さん、暴食の邪神の力が強力過ぎる為です。 削除しようとするとエラーが止まりません。 メールを確認する事を推奨します»
鑑定からの返答にクウネルはがっくりと肩を落とした。
「うそぉ……だって、もう夕方よ? ゴブリンや森狼達も皆、もう街に向かったし私1人よ? とりあえず帰ってからで良くない?」
«――新たにメールを受信。 お母さんからです。 これで1000件となりました。 今すぐ確認する事を推奨します»
「もー! わかった、わかったよ! でも、ざっと流しで読むからね!? 第一、なんでもっと早く教えてくれなかったの?! 戦闘中はまだしも、この3日間ぼーっと焼き肉してただけなんだから教えてよ~!」
«――了解です。 以後、メールを受信したら直ぐにお知らせします»
「本当にお願いね? ふ~……じゃあ、頑張って読むか~!」
クウネルはようやく観念し、メールを確認し始めるのであった。
◆◇◆
そして数時間。
既に夜となり、太陽も沈んだ草原は暗闇に包まれている。
「あーーーー! やっと998件まで読めた! すっげぇどうでもいいメールばっかりだったんですけど?!」
クウネルはげっそりとした顔で数時間メールを読み続け、精神的に疲弊していた。
因みに、メールの内容は『やれ、そこだー! 頑張れクウネルちゃーん! さすが私の娘! カッコいいわよー! きゃー素敵ー!』等の応援メールが半分近くを占めていた。
残りは地竜王神や地竜がクウネルに傷を負わせたのにぶちギレたメールが大量に送られてきており、それを読んだクウネルは苦笑いだ。
『てめぇこのトカゲが! 私のクウネルちゃんに傷を負わせたな! 殺す! 絶対に食い殺してやる! 糞が! クソクソクソクソ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねー! 糞トカゲがぁぁぁぁぁぁ!!』等の狂気じみたメールとなっていた。
「怖いよお母さん。 っていうか、見てたなら助けてよ。 それに、私にその罵詈雑言を送ってどうするの? やっぱり邪神という名だけの事は有るよね。 どっかおかしい」
最後のメールは、クウネルが焼き肉をしているのを羨ましがるメールだった。 少しだけ微笑ましいメールの内容にクウネルは笑う。
「あはは、街に戻ったら焼いたお肉を供えたげよっと」
«クウネル、後2件です。ファイト»
「あ、ありがとう、鑑定さん。 もう心が折れそうだけど、頑張るよ」
残す2件の内1件は暴食の邪神からだが、問題は残りの1件なのである。
「くぅー、見たくねー! ……鑑定さん、偽物へっていうメールを表示して」
«――了解。表示します»
『 偽物へ。 調子はどうかな? 偽物さん。 あの化け物の目を盗んでアンタの事見てたけど……何なのよ、アンタ。 私の身体を乗っ取って、好き勝手して! 本当にふざけんなよ! 終いには、あの化け物の事をお母さんって呼んだでしょ! アンタの……私のお母さんはエルザでしょ! 偽物とは云え、私と同じ記憶を持ってるんじゃ無いの!? 強くなったんでしょ?! 力を手に入れたんでしょ!? ならなんで、なんで仇を討たない! 奴等を皆殺しにしない! 認めない、アンタなんか! 偽物のアンタなんか絶対に認めない!』
知らない相手からのメールは、クウネルに対する怒りに満ちていた。 それと、クウネルの家族を殺した相手への憎しみで。
「うわぁ……うぷっ、気持ち悪い」
クウネルは思わず口を手で抑え、吐き気を我慢する。 頭の中がぐちゃぐちゃになり、目眩も起きた。
「これ、モロから聞いた赤髪のクウネルからだよね? 偽物呼ばわりか……。 きっついなぁ……でも当たり前か。 どうやってかは知らないけど、自分の身体を別の私が使ってるのを見たらそりゃ混乱もするよね」
クウネルは恐らく、赤髪のクウネルは本当に自身をクウネル本人だと思っているのだとメールから感じた。
本物と偽物。 それは、互いが本物と思っているのなら必ず起きる問題だ。
「でも、無理な事言うね~。 家族の仇を討とうにも、まず現在地点が分かってないのに無茶言うよ。 って、きっとこの考えがそもそも、赤髪のクウネルとは違うのか」
クウネルは何度も赤髪のクウネルからのメールを読んで考える。
「さて……偽物なのはどっちなんだろ? もしかして本物は赤髪のクウネルで、私は暴食の邪神が作った偽物の私? いつ……ダメだ、考えたら頭痛い」
«――大丈夫ですか? クウネル»
「ごめん、ありがとう鑑定さん。 よし! もう1件メール確認したら街に戻ろう」
«――了解。最後のメールを表示します»
「……さてと、よし! とりあえずお母さんからのメールは全部削除して!」
«了解――確認。 ……すみませんクウネル、不可能です»
「えぇ……なして?」
«お母さん、暴食の邪神の力が強力過ぎる為です。 削除しようとするとエラーが止まりません。 メールを確認する事を推奨します»
鑑定からの返答にクウネルはがっくりと肩を落とした。
「うそぉ……だって、もう夕方よ? ゴブリンや森狼達も皆、もう街に向かったし私1人よ? とりあえず帰ってからで良くない?」
«――新たにメールを受信。 お母さんからです。 これで1000件となりました。 今すぐ確認する事を推奨します»
「もー! わかった、わかったよ! でも、ざっと流しで読むからね!? 第一、なんでもっと早く教えてくれなかったの?! 戦闘中はまだしも、この3日間ぼーっと焼き肉してただけなんだから教えてよ~!」
«――了解です。 以後、メールを受信したら直ぐにお知らせします»
「本当にお願いね? ふ~……じゃあ、頑張って読むか~!」
クウネルはようやく観念し、メールを確認し始めるのであった。
◆◇◆
そして数時間。
既に夜となり、太陽も沈んだ草原は暗闇に包まれている。
「あーーーー! やっと998件まで読めた! すっげぇどうでもいいメールばっかりだったんですけど?!」
クウネルはげっそりとした顔で数時間メールを読み続け、精神的に疲弊していた。
因みに、メールの内容は『やれ、そこだー! 頑張れクウネルちゃーん! さすが私の娘! カッコいいわよー! きゃー素敵ー!』等の応援メールが半分近くを占めていた。
残りは地竜王神や地竜がクウネルに傷を負わせたのにぶちギレたメールが大量に送られてきており、それを読んだクウネルは苦笑いだ。
『てめぇこのトカゲが! 私のクウネルちゃんに傷を負わせたな! 殺す! 絶対に食い殺してやる! 糞が! クソクソクソクソ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねー! 糞トカゲがぁぁぁぁぁぁ!!』等の狂気じみたメールとなっていた。
「怖いよお母さん。 っていうか、見てたなら助けてよ。 それに、私にその罵詈雑言を送ってどうするの? やっぱり邪神という名だけの事は有るよね。 どっかおかしい」
最後のメールは、クウネルが焼き肉をしているのを羨ましがるメールだった。 少しだけ微笑ましいメールの内容にクウネルは笑う。
「あはは、街に戻ったら焼いたお肉を供えたげよっと」
«クウネル、後2件です。ファイト»
「あ、ありがとう、鑑定さん。 もう心が折れそうだけど、頑張るよ」
残す2件の内1件は暴食の邪神からだが、問題は残りの1件なのである。
「くぅー、見たくねー! ……鑑定さん、偽物へっていうメールを表示して」
«――了解。表示します»
『 偽物へ。 調子はどうかな? 偽物さん。 あの化け物の目を盗んでアンタの事見てたけど……何なのよ、アンタ。 私の身体を乗っ取って、好き勝手して! 本当にふざけんなよ! 終いには、あの化け物の事をお母さんって呼んだでしょ! アンタの……私のお母さんはエルザでしょ! 偽物とは云え、私と同じ記憶を持ってるんじゃ無いの!? 強くなったんでしょ?! 力を手に入れたんでしょ!? ならなんで、なんで仇を討たない! 奴等を皆殺しにしない! 認めない、アンタなんか! 偽物のアンタなんか絶対に認めない!』
知らない相手からのメールは、クウネルに対する怒りに満ちていた。 それと、クウネルの家族を殺した相手への憎しみで。
「うわぁ……うぷっ、気持ち悪い」
クウネルは思わず口を手で抑え、吐き気を我慢する。 頭の中がぐちゃぐちゃになり、目眩も起きた。
「これ、モロから聞いた赤髪のクウネルからだよね? 偽物呼ばわりか……。 きっついなぁ……でも当たり前か。 どうやってかは知らないけど、自分の身体を別の私が使ってるのを見たらそりゃ混乱もするよね」
クウネルは恐らく、赤髪のクウネルは本当に自身をクウネル本人だと思っているのだとメールから感じた。
本物と偽物。 それは、互いが本物と思っているのなら必ず起きる問題だ。
「でも、無理な事言うね~。 家族の仇を討とうにも、まず現在地点が分かってないのに無茶言うよ。 って、きっとこの考えがそもそも、赤髪のクウネルとは違うのか」
クウネルは何度も赤髪のクウネルからのメールを読んで考える。
「さて……偽物なのはどっちなんだろ? もしかして本物は赤髪のクウネルで、私は暴食の邪神が作った偽物の私? いつ……ダメだ、考えたら頭痛い」
«――大丈夫ですか? クウネル»
「ごめん、ありがとう鑑定さん。 よし! もう1件メール確認したら街に戻ろう」
«――了解。最後のメールを表示します»
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