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第五章 ゴブリン王国復興編

第123話 謝罪

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 クウネルは急ぎ街に戻って袋を回収していた。

 「よし! モロ達の所へ……おっと一応、王様とギドさんに伝えとかなきゃ!」

 街の中央には、民を守るようにゴブリン兵士達が円になって布陣していた。

 クウネルを視認してからゴブリン達はずっと歓声を上げており、クウネルは苦笑いを浮かべる。

 「王様ー! ギドさーん! 向かって来てたのは、3万ぐらいのゴブリンや森狼達だったよー! これから治療して、ここに連れて来るかもー! その時はよろしくー!」

 袋を担ぎながら、クウネルは全てを丸投げしてから走り出した。

 「ギガォ!? 何だと!? ちょっと待つのだクウネル! それは王国の傘下のゴブリン達なのか……!? まさか、王都に住まぬ村や町の民にすら何かあったのか!? おい! クウネル!? クウネルゥゥゥゥ!」

 ゴブリン王の叫びも虚しく、既にクウネルは巨体が小さく見える程遠くに走り去った後である。

 「ギガ……王よ、もう行ってしまわれました。 兵士達に告ぐ! 敵襲では無い、持ち場に戻れ! 民達も作業に戻ってくれ。  もしかしたら、住民が増えるやもしれん。 早く瓦礫を撤去してしまうのだ!」

 「「「「「「「「「ギガッ!」」」」」」」」」

 狼狽える王を余所に、堅物将軍ギドがテキパキと動くのであった。

 ◆◇◆

 土埃を巻き上げ、クウネルは一直線にモロ達の下へと帰って来ていた。

 「おまたっっっせぇぇぇぇ!! 怪我人はどう? 死人は出てない?! 間に合った? 間に合ったかい!?」

 クウネルが草原に戻ると、モロとクイーンは大勢のゴブリンや森狼達に囲まれて何やら話をしている所だった。

 しかし、場の空気は良いとは言えない。 何故なら帰って来たクウネルに槍や弓矢を持ったゴブリンが殺気だっているのがいい証拠だ。

 「お? まさか、私の友達とその奥さんにいちゃもん付けてんのか? おぉん?! 敵なら殺るよ??」

 クウネルが殺気を放つと、ゴブリン達から悲鳴が上がり森狼達が尻尾を丸めて怯え始めた。 当然だが、クウネルの様な巨大な生き物に襲われたら全滅するのは一瞬だろう。

 「ガウッ! クウネル待って! 怖いよ、顔も殺気も怖すぎるよ。 私と妻は大丈夫さ、ありがとう。それより、このゴブリン達は私の友の王国に属する者達のようだよ」

 「ふーん……大丈夫ならいいや。 で、その王国に属するゴブリンがどうしてこんなに?」

 モロに止められ殺気を消すとゴブリン達から安堵のため息が聞こえた。

 「ガルル……それが、全ての集落や村に魔物達が押し寄せて来たそうなんだ。 幸い死者は居ないそうだが、怪我人がかなり居る。 恐らく、王都が襲われたのと同じかもしれないね」

 «――申告します。クウネルがモロと共に王国へ向かう際に、生態系が破壊されたと推測されます。 縄張りを失った魔物や動物達が、地竜王神に精神操作されゴブリンと森狼達の住みかに殺到していたのでしょう»

 「えっと……つまり?」

 «間接的ではありますが、ゴブリンや森狼達が住む所を失い、怪我人が多く出ているのは――クウネルに責任の一端があるかもしれません。 ですが、全ては地竜王神の戯れが原因です»

 「マジですか……。 う~ん……それなら、私のせいでもあるんだね。 なら、すべき事は一つかな。 すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 クウネルはその場で土下座をし、素直に非を認めて謝った。

 後にゴブリン王国にて、最大の謝罪として土下座が浸透する切っ掛けになるのだが、この時のクウネルは知る由もない。

 「キギ……大きなるお方、すまぬが話が見えぬ。 何故、貴女が我等に謝るのか?」

 杖を付いた年寄りゴブリンがクウネルの前に進みでて、見上げる。

 「えっと、その、モロから、あ、其処の森狼王からゴブリン王国に何があったかは聞いてる?」

 「ギギ……ええ、先程お聞きしました。 まさか、王の居る街も襲われていたとは」

 周囲のゴブリンや森狼達の顔には悲壮感が漂っている。

 「いやぁ、何て言えばいいんだろ。 んー、ダメだ。 えっと……私が……あ、私はクウネル。 よろしくね、お爺さん。 で、何で謝ったかって言うと……私のせいなんです。 魔物達が村や町を襲ったのは……」

 ゴブリン達がクウネルの言葉にざわつき、森狼達はクウネルを威嚇する。

 そして、住処を奪ったクウネルに向けてゴブリン達は怒りながら武器を構えた。
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