103 / 231
第99話 自然破壊の権化
しおりを挟む
クウネルは全速力で駆けていた。 音を置き去りにし、景色は一瞬で過ぎ去る。
当然ながら草地は抉れ、森は吹き飛び、クウネルは自然破壊の権化と化した。
「モローー? 方角はあってるのー?」
動物達は逃げ惑い、悲鳴を上げながら泣き叫ぶ。
「キャウンッ! 何だってー!? 聞こえないー!」
魔物達すら向かって来る自然破壊の権化に怯え、住み馴れた住処を捨てて逃げ去った。
「ほーうーがーくー!!」
地響きが起き、突風が吹き荒れる様は正に生きる天変地異である。
「ガウッ! 方角かいー? 方角もなにもー! 速すぎて何も見えないよー!」
モロも、クウネルが手の中で守っていなければ既に吹き飛ばされ死んでいただろう。
「えー? なーにー?! 仕方がない、時間が惜しいが止まるか~」
ようやく破壊の権化にして天変地異を起こしたクウネルは止まった。 止まる為に足を踏ん張っただけで地面は抉れ、大きなクレーターが出来上がる。
ゴブリンの王国を救う前に、近辺一帯の動植物の生態を滅ぼしたクウネルだが今はそんな事に気は回らなかった。
「ごめん、何て言ってたの?」
「ヒィ……ヒィン……お、お、お」
手のひらの中に包まれていたモロは身体をピクピクと痙攣させ、何かを言おうと口を開く。
「お?」 「オエエエエエエエッ!!」 「ぎゃぁぁぁあっ!? ちょっとモローー?!」
モロを手のひらから地面に下ろし、水魔法で手を洗う。
「えーんがちょー! えーんがちょー! どしたの、何? 酔ったの? あはは……ごめん」
クウネルは暫し、モロの背中を指先で撫でてやるのであった。
◆◇◆
「ヒィ……ヒィ……あ、ありがとうクウネル。 もう……大丈夫さ。 落ち着いたよ」
「ん、良かった。 で、方角はあってるの?」
モロが辺りをキョロキョロと見渡すと、何故か首を傾げたまま固まった。
「え? どしたのモロ。 方角違った?」
「クゥン? いや、えっと……彼処にあの森が有って、あの山が……あれ? 行き過ぎてないかい?」
「……Hey鑑定、ゴブリン王国の場所分かる?」
クウネルはモロに聞こえないよう小声で鑑定に確認する。
«――呆。 検索中でス――解。 180度回転後、真ッ直ぐデす»
「何てこった! 通り過ぎてんじゃん! モロ! 早く手に乗って! 行き過ぎてるじゃんかー! しっかりしてよね!」
「ガウッ……私のせいかな? いや、今は友の危機を救わねば。 でも、どうしてクウネルが行き過ぎてるって分かったんだい?」
「もう! そんな事はいいから、早くっ!」
モロを手のひらで包み込み、また全速力で走り出す。
「今度は行き過ぎないように気を付けなきゃ!」
「キャウンッ!? クウネル待って待ってぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇえ!」
モロの悲鳴が木霊し、荒れ果てた道をクウネルは戻るのであった。
◆◇◆
「お? 気配察知に滅茶苦茶反応がある! 彼処か!」
«――注。 周辺の魔物ヤ、動物が大移動ヲ開始。 クウネルが影響しテいル可能性大»
「今はそんな事はいい! 後で考えよう!」
クウネルの視点だと、大きなジオラマみたいなサイズの街を様々な魔物が取り囲んでいるのが見えた。
街は石の城壁に囲まれている。 門はまだ破られてはいないが、魔物達が門に殺到しているのが確認出来た。 突破されるのも時間の問題だろう。
更に近付くと、様々な魔物達の正体がはっきりと確認出来た。
「あれ? あの魔物って……うげぇ! カマキリじゃん! それに、蟻? 見たことのある大猪も居るね。 あ! 色とりどりのスライム君達も滅茶苦茶沢山いる! ひゃっはー!」
ゴブリン王国を攻めているのは1万近い魔物の大群だ。 何故か種類の違う魔物が争う事なく城壁や門に殺到していた。
当然ながら草地は抉れ、森は吹き飛び、クウネルは自然破壊の権化と化した。
「モローー? 方角はあってるのー?」
動物達は逃げ惑い、悲鳴を上げながら泣き叫ぶ。
「キャウンッ! 何だってー!? 聞こえないー!」
魔物達すら向かって来る自然破壊の権化に怯え、住み馴れた住処を捨てて逃げ去った。
「ほーうーがーくー!!」
地響きが起き、突風が吹き荒れる様は正に生きる天変地異である。
「ガウッ! 方角かいー? 方角もなにもー! 速すぎて何も見えないよー!」
モロも、クウネルが手の中で守っていなければ既に吹き飛ばされ死んでいただろう。
「えー? なーにー?! 仕方がない、時間が惜しいが止まるか~」
ようやく破壊の権化にして天変地異を起こしたクウネルは止まった。 止まる為に足を踏ん張っただけで地面は抉れ、大きなクレーターが出来上がる。
ゴブリンの王国を救う前に、近辺一帯の動植物の生態を滅ぼしたクウネルだが今はそんな事に気は回らなかった。
「ごめん、何て言ってたの?」
「ヒィ……ヒィン……お、お、お」
手のひらの中に包まれていたモロは身体をピクピクと痙攣させ、何かを言おうと口を開く。
「お?」 「オエエエエエエエッ!!」 「ぎゃぁぁぁあっ!? ちょっとモローー?!」
モロを手のひらから地面に下ろし、水魔法で手を洗う。
「えーんがちょー! えーんがちょー! どしたの、何? 酔ったの? あはは……ごめん」
クウネルは暫し、モロの背中を指先で撫でてやるのであった。
◆◇◆
「ヒィ……ヒィ……あ、ありがとうクウネル。 もう……大丈夫さ。 落ち着いたよ」
「ん、良かった。 で、方角はあってるの?」
モロが辺りをキョロキョロと見渡すと、何故か首を傾げたまま固まった。
「え? どしたのモロ。 方角違った?」
「クゥン? いや、えっと……彼処にあの森が有って、あの山が……あれ? 行き過ぎてないかい?」
「……Hey鑑定、ゴブリン王国の場所分かる?」
クウネルはモロに聞こえないよう小声で鑑定に確認する。
«――呆。 検索中でス――解。 180度回転後、真ッ直ぐデす»
「何てこった! 通り過ぎてんじゃん! モロ! 早く手に乗って! 行き過ぎてるじゃんかー! しっかりしてよね!」
「ガウッ……私のせいかな? いや、今は友の危機を救わねば。 でも、どうしてクウネルが行き過ぎてるって分かったんだい?」
「もう! そんな事はいいから、早くっ!」
モロを手のひらで包み込み、また全速力で走り出す。
「今度は行き過ぎないように気を付けなきゃ!」
「キャウンッ!? クウネル待って待ってぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇえ!」
モロの悲鳴が木霊し、荒れ果てた道をクウネルは戻るのであった。
◆◇◆
「お? 気配察知に滅茶苦茶反応がある! 彼処か!」
«――注。 周辺の魔物ヤ、動物が大移動ヲ開始。 クウネルが影響しテいル可能性大»
「今はそんな事はいい! 後で考えよう!」
クウネルの視点だと、大きなジオラマみたいなサイズの街を様々な魔物が取り囲んでいるのが見えた。
街は石の城壁に囲まれている。 門はまだ破られてはいないが、魔物達が門に殺到しているのが確認出来た。 突破されるのも時間の問題だろう。
更に近付くと、様々な魔物達の正体がはっきりと確認出来た。
「あれ? あの魔物って……うげぇ! カマキリじゃん! それに、蟻? 見たことのある大猪も居るね。 あ! 色とりどりのスライム君達も滅茶苦茶沢山いる! ひゃっはー!」
ゴブリン王国を攻めているのは1万近い魔物の大群だ。 何故か種類の違う魔物が争う事なく城壁や門に殺到していた。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる