93 / 202
第89話 匠による袋作り
しおりを挟む
「旅の準備かー。 ……ほえ? 私、何準備したら良いんだ?」
朝食を食べに背の低い森まで戻ってきたクウネルは、木々をへし折りながらスライム達を補食している真っ最中である。
「うまうま はむはむ、旅の準備をしなきゃ!と、思い立つも何も出てこない困った脳ミソだね~。 むにむに、ごくんっ!」
スライム達を補食しながら歩いていると、クウネルが落ちた事で出来たクレーターの所にやって来た。
クレーターの中には、クウネルが残した両親から貰ったハルバートの残骸と祖父から貰った鎧の残骸が残されている。
「貰ったその日に全部失ったけど、もしこの武器と鎧が無かったら私は既に死んでたんだよね……」
巨神が、いつクウネルから加護を消したのか分からない以上は今が最善の結果なのだろう。
「そっか、ほんの1日で滅茶苦茶大きくなったからこんなに小さく感じるのか~」
指先で摘まんだ残骸は、クウネルの想像よりも小さかった。
「んー、何かこのまま放置していくのも寂しいな。 これから旅に出るんだもんな~。 もしかしたら、もう此処には戻って来ないかもしれないし……よし、持っていこう! 」
クウネルは武器と鎧の残骸を回収すると決めたが、残念ながら入れる物が無い事に気付く。
「あ~……でも、どうやって? 私の装備モロから貰った格好良いこの服しかないべ? う~ん……何か袋になる物無いかなー。 Hey鑑定、旅に出るのに袋が欲しいの。 何か良い案は無いかな」
«――了。 検索中デす――解、飛竜王の皮膚ガ伸縮性にモ優れテおリ推奨。 袋とシテの製作ヲ提示»
「お! さっっすが~! なるへそね、確かにあの飛竜王の皮膚なら大きな袋になりそうだ。 よし、さっさと行って作るとしましょ、そうしましょー!」
クウネルは武器と鎧の残骸を両手の平に乗せたまま、飛竜王の死体がある方へと走り出した。
◆◇◆
「とうちゃ~く! 鑑定さん着いたよ~指示プリーズ!」
飛竜王の死体は昨日のままだ、本当にこの近辺の魔物や獣は軒並み食い尽くされた後なのだろう。
「こんなバカデカイ死体が有れば、普通は何かが漁りに来ててもいいのにね~。 まぁ、皮膚が傷付かないから私は良いんだけどね。 しかし、獲物が居なくなったこの森にモロ達はこれからも住むのかな? んー……モロは一緒に旅に出るとして、奥さんや群れの子狼達とかはお留守番だろうし。 洞窟に戻る時に、何か狩れそうな魔物の気配が察知出来たらお土産に持ち帰るとしますかね」
クウネルがブツブツと独り言を呟いていると、鑑定から急かされる。
«――告。 クウネル、まズは皮膚ヲ剥ぎマショウ»
「あーごめんごめん、はいよー!」
飛竜王の死体から皮膚を剥いでゆく。
「まぁ、昨日食べる時に殆ど剥いであるからそんなに時間は掛からないんだけどね~。 血も丁寧に舐めといたし。 やっっば、もしかして私には先見の明が!?」
«――疑。――恐ラく、偶然デす»
「知ってるよ! 態々言わなくてもいいじゃない!」
それからクウネルは、黙々と飛竜王の皮膚を集めるのであった。
「グニグニ、ビヨンビヨン」
「ほー、何か面白い感触だ。 柔らかい皮膚だけど、表面には鱗が有るからザラザラしてる。 とても丈夫そうだね。 かといって、伸縮性が無いわけでは無いのか~。 なるへそね、確かにこれで袋を作ったら耐久性も抜群だわ。 でも、どうやってこれ袋にするの?」
«――解。マズは、水魔法デ洗い火炎デ炙って下サイ»
「ほいほい~!」
◆◇◆
「かーーーんせい! 何だよ! 滅茶苦茶時間掛かったよ!? 途中、お腹空いてスライム君食べにさっきの森まで戻ったさ! もう、此処に戻って来ないかもしれない……とか言ったのにその日に戻ったよ! めんどくさかったー! もう、次は絶対に作らないからね!?」
もう空は夕方であり、ほぼ1日掛かっていたことが一目瞭然である。
文句を言いながら地団駄を踏むが、此処にはクウネルのみ。 誰かが慰めてくれる事は無い筈だったが、頭の中に声が響いた。
«――褒。 ――さスがデす、クウネル。 良く、頑張リまシタ»
「鑑定さーーん! ありがとー! 私頑張ったよーーー! って、鑑定さんのせいなのよ!? いや、褒めてくれるのは嬉しいんだけどね。 でも、この滅茶苦茶めんどくさい作業指示したの鑑定さんだからね?!」
«――拗。 ――了、以後提示ハ控えマスね»
「あ、ごめんよー! 違うの、拗ねないでよー! ごめんなさい! これからもよろしくお願いします!」
«――了。 分かリマした»
「ふー、危ない危ない。 鑑定さんの臍を曲げてしまう所だった。 よし、じゃあ袋に武器と鎧の残骸を入れてっと……袋デカァ!!」
集中して作業した結果、自身の半分程もある巨大な袋が完成していた。
朝食を食べに背の低い森まで戻ってきたクウネルは、木々をへし折りながらスライム達を補食している真っ最中である。
「うまうま はむはむ、旅の準備をしなきゃ!と、思い立つも何も出てこない困った脳ミソだね~。 むにむに、ごくんっ!」
スライム達を補食しながら歩いていると、クウネルが落ちた事で出来たクレーターの所にやって来た。
クレーターの中には、クウネルが残した両親から貰ったハルバートの残骸と祖父から貰った鎧の残骸が残されている。
「貰ったその日に全部失ったけど、もしこの武器と鎧が無かったら私は既に死んでたんだよね……」
巨神が、いつクウネルから加護を消したのか分からない以上は今が最善の結果なのだろう。
「そっか、ほんの1日で滅茶苦茶大きくなったからこんなに小さく感じるのか~」
指先で摘まんだ残骸は、クウネルの想像よりも小さかった。
「んー、何かこのまま放置していくのも寂しいな。 これから旅に出るんだもんな~。 もしかしたら、もう此処には戻って来ないかもしれないし……よし、持っていこう! 」
クウネルは武器と鎧の残骸を回収すると決めたが、残念ながら入れる物が無い事に気付く。
「あ~……でも、どうやって? 私の装備モロから貰った格好良いこの服しかないべ? う~ん……何か袋になる物無いかなー。 Hey鑑定、旅に出るのに袋が欲しいの。 何か良い案は無いかな」
«――了。 検索中デす――解、飛竜王の皮膚ガ伸縮性にモ優れテおリ推奨。 袋とシテの製作ヲ提示»
「お! さっっすが~! なるへそね、確かにあの飛竜王の皮膚なら大きな袋になりそうだ。 よし、さっさと行って作るとしましょ、そうしましょー!」
クウネルは武器と鎧の残骸を両手の平に乗せたまま、飛竜王の死体がある方へと走り出した。
◆◇◆
「とうちゃ~く! 鑑定さん着いたよ~指示プリーズ!」
飛竜王の死体は昨日のままだ、本当にこの近辺の魔物や獣は軒並み食い尽くされた後なのだろう。
「こんなバカデカイ死体が有れば、普通は何かが漁りに来ててもいいのにね~。 まぁ、皮膚が傷付かないから私は良いんだけどね。 しかし、獲物が居なくなったこの森にモロ達はこれからも住むのかな? んー……モロは一緒に旅に出るとして、奥さんや群れの子狼達とかはお留守番だろうし。 洞窟に戻る時に、何か狩れそうな魔物の気配が察知出来たらお土産に持ち帰るとしますかね」
クウネルがブツブツと独り言を呟いていると、鑑定から急かされる。
«――告。 クウネル、まズは皮膚ヲ剥ぎマショウ»
「あーごめんごめん、はいよー!」
飛竜王の死体から皮膚を剥いでゆく。
「まぁ、昨日食べる時に殆ど剥いであるからそんなに時間は掛からないんだけどね~。 血も丁寧に舐めといたし。 やっっば、もしかして私には先見の明が!?」
«――疑。――恐ラく、偶然デす»
「知ってるよ! 態々言わなくてもいいじゃない!」
それからクウネルは、黙々と飛竜王の皮膚を集めるのであった。
「グニグニ、ビヨンビヨン」
「ほー、何か面白い感触だ。 柔らかい皮膚だけど、表面には鱗が有るからザラザラしてる。 とても丈夫そうだね。 かといって、伸縮性が無いわけでは無いのか~。 なるへそね、確かにこれで袋を作ったら耐久性も抜群だわ。 でも、どうやってこれ袋にするの?」
«――解。マズは、水魔法デ洗い火炎デ炙って下サイ»
「ほいほい~!」
◆◇◆
「かーーーんせい! 何だよ! 滅茶苦茶時間掛かったよ!? 途中、お腹空いてスライム君食べにさっきの森まで戻ったさ! もう、此処に戻って来ないかもしれない……とか言ったのにその日に戻ったよ! めんどくさかったー! もう、次は絶対に作らないからね!?」
もう空は夕方であり、ほぼ1日掛かっていたことが一目瞭然である。
文句を言いながら地団駄を踏むが、此処にはクウネルのみ。 誰かが慰めてくれる事は無い筈だったが、頭の中に声が響いた。
«――褒。 ――さスがデす、クウネル。 良く、頑張リまシタ»
「鑑定さーーん! ありがとー! 私頑張ったよーーー! って、鑑定さんのせいなのよ!? いや、褒めてくれるのは嬉しいんだけどね。 でも、この滅茶苦茶めんどくさい作業指示したの鑑定さんだからね?!」
«――拗。 ――了、以後提示ハ控えマスね»
「あ、ごめんよー! 違うの、拗ねないでよー! ごめんなさい! これからもよろしくお願いします!」
«――了。 分かリマした»
「ふー、危ない危ない。 鑑定さんの臍を曲げてしまう所だった。 よし、じゃあ袋に武器と鎧の残骸を入れてっと……袋デカァ!!」
集中して作業した結果、自身の半分程もある巨大な袋が完成していた。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
おじさんが異世界転移してしまった。
月見ひろっさん
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる