上 下
57 / 196
第二章 暴食の始まり サバイバル編

第55話  人質ならぬ狼質

しおりを挟む
 「まだ、焼き殺したフォレストウルフの所で何かしてるけど……戦闘にもし入ったら瞬殺だな。 どうするか……一応、今の私のステータスも確認しとこっかな。 ステータスオープン」

 ステータス画面

 名前 クウ%$#

 年齢 2

 職業 $%?`>&§

 種族 グラトニーベビージャイアント

 レベル 55

 HP 1640/1640

 FP 290/290

 攻撃力 1115

 防御力 415

 知力 186

 速力 462

 スキル鑑定Lv2. 暴食.  消化吸収強化. 竜鱗Lv1. 火耐性Lv2(up). 竜殺しLv1. 魔物食らい. 気配察知Lv2. 連携Lv1. 酸耐性LvMax. 即死耐性LvMax(new)

 魔法 火炎Lv1

 戦技 叩き割りLv2. 槍突きLv1. 噛み付きLv3

 状態異常 無し

 加護 暴食の邪神の#§$?&

 「きっついなぁ、雑魚ステータスやん! あ! でも、火耐性が上がってる! だから、さっきの火炎では口の中そんなに熱く無かったのね。 しかし、相変わらず色々バグってるし……このステータスのシステム運用してる奴誰だよ!」

 クウネルは現実逃避するかの様に独り言を呟き続ける。 その間にも、フォレストウルフクイーンが動かない事を祈った。

  「カスタマイズサポートに連絡するぞ!?  クレームの嵐やぞ!  もういいや……諦めたくないけど、もし死んでもアスカガルドに行くだけだし。 ……ん!? 待って! 待って待って待ってっ!!」

 最悪死ぬ事を想定した瞬間、とある事を思い出した。

 「そうじゃん! 加護の巨神の寵愛外れてるから、死んでもアスカガルドに行けないじゃん! あの巨神の野郎! 勝手に外しやがって! 絶対に嫌だ! 絶対に絶対に嫌だ! 死ぬならアスカガルド行ってルート君にご馳走を永遠に作って貰いたい! イケメンのルート君を婿に貰いたい! だから、こんな所で死ぬ訳にはいかないんだよ! こちとら、暴食持ちなんじゃー! 美味しいご飯を作ってくれるイケメンとか最高なんじゃー!」

 クウネルの捲し立てる様な独り言を不気味がっているのか、フォレストウルフ達はまだ遠巻きに見ているだけだ。
 
 「よし! 決めた、意地でも生き延びよう! 考えろ、考えろ! 何か、何か考えろ! そうだ! さっきスルーしちゃったけど、即死耐性が手に入ってる! しかもLvMax! あれ? って事はあのマンドラゴラ達は自分の奇声に耐えてるの? だから即死耐性が有るって事……??」

 戦闘中に要らぬ事を想像してしまったクウネルは首を横に振り、真剣に生き残る道を探る。

 「そんな事はどうでも良いや、何とかさっきの巨木の森まで逃げてマンドラゴラを見つけたら勝つる! 走って何とかなるか? でも、木々を掻き分けないと進めない。 それは向こうも同じか? どうする、どうやって行く?」

 判断に迷っていると、突如として焼死体の側に居たウルフクイーンが視界から消えた。

 「はぁ?! はっっっや!! どんだけ早いの!?」

 残っているフォレストウルフを警戒しながらも、周囲を見渡すがフォレストウルフクイーンの姿は無い。 困惑していると背中に衝撃が走った。

 「――――いっっ!? いったーい! 何された? 後ろで音がしたと思った瞬間に痛みが背中に走ったんですけど?!」

 背中に伝わる物を感じる。 触ると、それは血だった。  ……当然クウネルの血である。

 「早すぎるでしょうよ! 痛い痛い痛い!」

 恐らく、背中に回り込まれ鋭い3本の爪で引っ掻かれたのだろう。

 クウネルは即死してもおかしくない攻撃を受けたのにも関わらず動ける事に驚いた。 背中の傷近くを触ると鱗の様な感触が有り理由を察する。

 「なるへそ、竜鱗のお陰か……。 さーて、逃げるのも絶望的だけど何とかしなきゃね。 ちょっと、人としてどうなの? って思う事するけど、許してよね~。 此方は命掛かってるからさぁ!」

 ウルフクイーンがまた攻撃してくる前に、クウネルは自身の足下に火炎を撒き散らした。

 「火炎! ガァァァァぁぁあっっっつ!」

 足が焼けるが、我慢して吐き続けた。

 そして、足下の草が一気に燃え広がりクウネルに再度攻撃しようとしていたウルフクイーンが堪らず他のウルフとは別の方向へ飛び退いた。

 「今だぁぁぁあああ! チャンスは1回! 唸れ私の足!!」

 クウネルは全力走り出し、距離を取って油断していたフォレストウルフの1体に掴み掛かった。

 「ガァッ!? キャインッ!」

 「おっとと、ごめんね。 ちょっと人質ならぬ狼質になってね、そっちから襲ってきたんだから許してくれるよね?」

 ジタバタするフォレストウルフの首を左腕で絞めて、ウルフクイーンを威嚇する。

 「グル?! グルルルッ!」

 フォレストウルフクイーンは怒りの表情を浮かべているが、襲い掛かっては来ないようだ。

 「よっっしゃ! 上手くいったね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...