真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
上 下
35 / 237

第35話 いざ実験へ

しおりを挟む
 クウネルはトールの肩から降りて、開けた空き地に立つ。

 「お祖父ちゃん、そこで見ててね」

 「む? うむ、分かったわい」

 何がなんだか分かってないトールを置き去りに、クウネルは魔の森の側で火炎の練習を開始した。

 (さて、どうやって出したらいいんだろ? 喉の奥から出す感じかな? ほっ! やっ! おぉっ?! 何か喉の奥がチリチリする。 上手くいってるぞー!)

 「お祖父ちゃんいくよー!」

 準備が出来たクウネルはトールに話しかけるが、トールはクウネルを見ていなかった。 視線はクウネルを越えた先、魔の森に向けられていた。

 (嫌な予感がするぞ)

 ガサガサと音か聞こえた直後、クウネルの側の木々から魔物が飛び出した。

 (ちくせう! やっぱりか!)

 「クウネルっ! 儂の後ろに隠れぃ!」

 トールは音が聞こえた直後には動き出し、クウネルを助けに向かう。 魔の森から飛び出したのは、クウネルがまだ見たこと無い魔物だった。 しかし、魔物の容姿だけは前世でも見たことのある姿であり、クウネルの目の前に現れたのは蟷螂かまきりであった。

 (ぎゃー! 2メートル程の大きさも有るカマキリだー! だが私より小さい! ……但し、鎌が六本も有る)

 クウネルは驚くも、怯まずに魔物へと立ち向かう。 先ずは先手として相手の情報を得るべく動いた。

 (鑑定)

 ステータス画面

 種族 シックスハンドマンティス
 年齢 2
 レベル 3
 HP 220/220
 FP 0/0
 攻撃力 120
 防御力 10
 知力 8
 速力 150

 スキル 魔物食らい. 潜伏. 魔物殺し

 魔法 無し

 戦技 切り裂きLv1

 状態異常 空腹

 シックスハンドマンティスのステータスを見たクウネルはニヤリと笑った。 今のクウネルからすれば、素手でも余裕で勝てるだろう。

 (はい、雑魚ー!)

 「お祖父ちゃん! 私にやらせて!」

 武器を持ってきていなかったトールは、シックスハンドマンティスに素手で殴りかかろうとしていた。 その姿は、小さな蟷螂に大人が殴りかかっている様な物だ。

 (まぁ、お祖父ちゃんからしたら小さな虫だよね。 でも、私に戦わせて欲しいのよ。 実戦で使ってやるのさ! 火炎をね!)

 「むぅ?! クウネルならあの羽虫程度大丈夫か……分かった、しかし無理なら直ぐに爺ちゃんが交代するからの。 ええか、油断するでないぞ!」

 「うん! 分かってる。私の魔法見てて」

 「ん? 魔法じゃと?」

 トールと会話してる間にも、シックスハンドマンティスは鎌を構えてジリジリとクウネルの方に近寄ってくる。 本能でトールに勝てないと分かったのか、まだクウネルを狙って餌にしようと飛び掛かる体制でゆっくり接近する。

 (いいぞ、いいぞ! そのまま来い!)

 クウネルは確実に射程に入るまで我慢し、誘き寄せる。

 「チキチキチキチキ、キシャアァァァ!」

 涎を垂らしたシックスハンドマンティスがクウネルに向かって飛び掛かった。

 (隙有り! 喉の奥から出す感じー! チリチリ、きたぁ!)

 クウネルは口を大きく開け、喉の奥に出現した塊を一気に吹き出す。

 「くらぇ! 火炎!! ボァアアアアッ!」

 クウネルの口から火炎放射の様な火柱が放たれ、シックスハンドマンティスを包み込んだ。

 「ギシャァ?! シャアァァァァ……ァァ!!」

 炎に飲み込まれたシックスハンドマンティスは、じたばたと苦しんでいたが程なくして事切れた。

 (Win! ひゃっほーい! 一方的に勝ったぜー! ふー!)

 クウネルが焼けた魔物の側で喜びの舞を踊っている間、トールは顎が外れそうな程に口を開けて驚いていた。

 「えへへー! 勝ったよお祖父ちゃん!」
 
 クウネルの巨人生、2度目の戦闘は呆気なく勝利で幕を閉じた。

 (いや、初めての戦闘が飛竜だったのが異常なのよ?)

 「クウネル今、口から出した火は何じゃ!? 大丈夫なのか?」

 トールが凄まじい剣幕でクウネルの顔を覗き込む。

 「ん、ちょっと口の中熱いけど大丈夫。 さっきも言ったけど、魔法の火炎が使えるようになった」

 (あれだね、子飛竜が火炎放った後直ぐに追撃して来なかった理由がわかったよ。 口の中があっっっついのよ! 追撃とか無理無理。 頻繁に使ってたら火耐性のLvが上がって、楽になるとは思うんだけどね~)

 クウネルが口の中を冷やそうとパタパタしていると、トールが驚いた顔で呟いた。

 「な、なんじゃと……あり……えんわい」

 トールが小さく呟いた後、その場で尻餅を着き地面が大きく揺れる。

 その様子を見たクウネルは首を傾げた。

 (え? どしたの、何故にそんなに驚くの。 この世界は魔法が普通に有るんで無いの? お祖父ちゃんから聞いた魔王様も凄腕の魔法使いだったんでしょ?)

 「何があり得ないの? お祖父ちゃん」

 「さすが儂の孫じゃ。 まさか、魔法が使えない巨人で有りながら使えるようになるとは……」

 トールの言葉にクウネルは驚愕する。

 (何それ、初耳何ですけど?! 巨人って魔法使えないの?!  あ! そういえば、お祖父ちゃんのステータスにも魔法は無しってなってたね。 お父さんやお母さん、村の皆も魔法の所は無しになってた筈だ)

 「魔法が使えないって、種族として覚えれないって事?」

 「うぅむ、クウネルの賢さなら可能性は有ると思っておったが。 そうじゃ、巨人は総じて知力が低い種族じゃ。 どんなに賢い巨人でも魔法の理を知り魔力を操る事は誰にもできなんだ。 儂の知る限りではの」

 トールの言葉にクウネルは飛び跳ねて喜ぶ。

 (じゃあ、私が巨人初の魔法使いって事ですか?! まぁ……魔法って言っても火吹けるだけなんだけどね。 でも嬉しいやーん!)

 「もしや、クウネルが転生者で有る事にも起因が有るのかもしれんのぅ。 何か思い当たる事は有るのか?」

 (うーん、お祖父ちゃんになら教えてもいっか。 スキルの事と加護の事を言っても……)

 「実はね……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...