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第一章 新たな巨人生 幼少編
第29話 説得と呆れ
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勇者カズキは、馬鹿な事を言い始めたアズキに呆れながらも親切丁寧に説明を始めた。
「アズキ……相手は最強最悪な存在になる魔王だぞ? この国の図書館にあった歴史の本にも書いて有っただろうが。 大昔、この世界に現れた黒髪の魔王とその軍勢の亜人共に人類は絶滅寸前まで追い詰められた。 そして我等が神、創造神オリジン様により先代に当たる勇者一行が召喚され人類は反撃を開始したと」
「勿論読んださ。 でもよ……」
反論しようとするアズキを制止し、カズキは続きを話す。
「良いから聞け、先代の勇者達は奮戦するも魔王が強すぎた為に最後の決戦で自爆して戦争を終わらした。 そうでもしなければ魔王を倒せなかったんだぞ? 決戦の場所だった最北端から、大陸の中央まで吹き飛ぶ凄まじい威力の爆発でようやく倒せる相手なんだ。 強くなる前に倒そうとするのは当たり前じゃないのか」
カズキの説得にアズキを顔を顰める。
「だけどよ、もしかしたらその魔王になる奴は善人かもしれねぇじゃねぇか!」
「はぁ……お前も知っての通り、死んだ魔王の魔力が土地を汚染し吹き飛んだ大陸の北側は全て魔物の森へと変貌を遂げた。 これは歴史の本にも書いてたし、俺達は直接創造神オリジン様から聞いた事だろ? 人類を救い繁栄させる為に、俺達を召喚し使命を託されたんだ! まぁ、その時に魔王が現れるとは仰ってなかったが……。 だからこそ、魔王として強くなる前に殺すんだよ! 成長し、魔力が増えてから殺したら、次は人類圏全てが汚染されるかもしれないんだぞ?」
カズキが話す言葉は理に適っており、聖王国の誰が聞いてもカズキを支持するだろう。 動くなら今しか無いのだ。 予言の通りであれば魔王が現れるまで、後1年と少々しか無いのだから。
「……という訳で、アズキ。 悪いがお前の言い分を聞く訳にはいかない」
(この世界は俺にとっても大切な遊び場だ、勝手に荒らされてたまるか)
カズキは内に秘められたドス黒い感情はひた隠し、一応仲間であるアズキを説得した。
「……っち。 分かってるよ、でもよ。 ガキを殺すのだけは私は嫌だね!」
アズキの返答を聞き、カズキは冷酷な瞳で見据えて見切りをつけた。
「もういい、わかった お前は残れ。 何もするな」
舌打ちしたアズキは部屋から退出しようとしたが、立ち止まりカズキに呟いた。
「……なぁ、私達が聞いた歴史や使命は真実なのか?」
「はぁ? お前は創造神オリジン様を疑うのか?」
「いや……そうじゃないさ。 忘れてくれ、じゃあ他の皆の所に行って待っとくよ。 邪魔したね」
今度こそアズキは部屋を退出し、カズキは力任せに椅子に座った。
(あのヤンキーは本当に愚かだ。 本物の神だぞ? 何故疑う? まぁ、アズキが使えなても構わん。 前衛は、勇者である最強の俺と凄腕の剣聖コジロウが。 後はチャラくて信用は余りしてないが格闘王のリュウトもいるし、一緒に歩くのも嫌だが奴隷王のオタフクが使役する魔物の奴隷も肉壁にはなる。 前衛が1人減ってもそんなに変わらんな)
カズキは顎に手を当てながら、アズキを抜いた編成を思案する。
(中衛にはヒーラーの聖女ユズキと、元素魔法の使い手である精霊王を使役するヒカリ。 後衛には殲滅力だと最強のルウと、ヒーラーでも有り攻撃魔法も何でもこなす賢者ミカが後衛で決まりだな。 そして職業の名前はアレだが、性王マヒルがバックアップだ。 敵を一時的に操る魅了や攻撃力が上昇する踊り等が使用出来る。 多岐に渡ってサポートやバフにデバフもこなせる万能職だ。 これだけの戦力が揃っているなら問題無く殺せるだろ)
考えが纏まったカズキは、会議室に向かうべく着替え始める。 その時に、ふと乱れたベットが目に入り頬を少し染めた。
(マヒルか……夜が凄くなるデメリットは有るが、俺達には不可欠な存在だ。 そして、俺の恋人……だよな。 いや、そうに決まっている。 職の影響で、夜が我慢出来ないと相談を受けてからずっと続く関係なんだから)
カズキは苦しくなる胸の痛みを払い除け、明るい未来を想像して笑う。
(もし、違っても構わないさ。 まだ俺には、王妃と姫が居るんだからな。 よし、邪魔が入ったがさっさと会議室に向かうとしよう。 もう数ヶ月経てば、魔王を殺して使命に専念できる筈だ。 そうしたら亜人共を殺し犯し支配し、好きな事をして生きてやる。 地球での窮屈な生活はもう終わったのだから)
「くっくっくっ、あーはっはっはっは!」
高笑いが止まらないカズキが部屋から出た後に、テーブルの上に置いてあった手紙が風でひらりと床に落ちた。
めくれた手紙にはこう書いてある。
«以前から魔王の生まれ変わりと疑う件の黒髪の巨人の娘、飛竜を単身で討伐。 異常な強さを持っている、魔王の生まれ変わりの可能性大との報告有り。 御指示通り、魔王となる予定の1年早く始末出来るよう行動中です。2歳の祝いの席にて決行予定、同胞達も賛成との事。 全ては創造神様と世界の平和の為に。 獣王国 第2王子 ウンポ»
ネジ曲がった正義と、純粋な悪意の魔の手が忍び寄る。
その結果、今の世界が終わるとも知らずに。
「アズキ……相手は最強最悪な存在になる魔王だぞ? この国の図書館にあった歴史の本にも書いて有っただろうが。 大昔、この世界に現れた黒髪の魔王とその軍勢の亜人共に人類は絶滅寸前まで追い詰められた。 そして我等が神、創造神オリジン様により先代に当たる勇者一行が召喚され人類は反撃を開始したと」
「勿論読んださ。 でもよ……」
反論しようとするアズキを制止し、カズキは続きを話す。
「良いから聞け、先代の勇者達は奮戦するも魔王が強すぎた為に最後の決戦で自爆して戦争を終わらした。 そうでもしなければ魔王を倒せなかったんだぞ? 決戦の場所だった最北端から、大陸の中央まで吹き飛ぶ凄まじい威力の爆発でようやく倒せる相手なんだ。 強くなる前に倒そうとするのは当たり前じゃないのか」
カズキの説得にアズキを顔を顰める。
「だけどよ、もしかしたらその魔王になる奴は善人かもしれねぇじゃねぇか!」
「はぁ……お前も知っての通り、死んだ魔王の魔力が土地を汚染し吹き飛んだ大陸の北側は全て魔物の森へと変貌を遂げた。 これは歴史の本にも書いてたし、俺達は直接創造神オリジン様から聞いた事だろ? 人類を救い繁栄させる為に、俺達を召喚し使命を託されたんだ! まぁ、その時に魔王が現れるとは仰ってなかったが……。 だからこそ、魔王として強くなる前に殺すんだよ! 成長し、魔力が増えてから殺したら、次は人類圏全てが汚染されるかもしれないんだぞ?」
カズキが話す言葉は理に適っており、聖王国の誰が聞いてもカズキを支持するだろう。 動くなら今しか無いのだ。 予言の通りであれば魔王が現れるまで、後1年と少々しか無いのだから。
「……という訳で、アズキ。 悪いがお前の言い分を聞く訳にはいかない」
(この世界は俺にとっても大切な遊び場だ、勝手に荒らされてたまるか)
カズキは内に秘められたドス黒い感情はひた隠し、一応仲間であるアズキを説得した。
「……っち。 分かってるよ、でもよ。 ガキを殺すのだけは私は嫌だね!」
アズキの返答を聞き、カズキは冷酷な瞳で見据えて見切りをつけた。
「もういい、わかった お前は残れ。 何もするな」
舌打ちしたアズキは部屋から退出しようとしたが、立ち止まりカズキに呟いた。
「……なぁ、私達が聞いた歴史や使命は真実なのか?」
「はぁ? お前は創造神オリジン様を疑うのか?」
「いや……そうじゃないさ。 忘れてくれ、じゃあ他の皆の所に行って待っとくよ。 邪魔したね」
今度こそアズキは部屋を退出し、カズキは力任せに椅子に座った。
(あのヤンキーは本当に愚かだ。 本物の神だぞ? 何故疑う? まぁ、アズキが使えなても構わん。 前衛は、勇者である最強の俺と凄腕の剣聖コジロウが。 後はチャラくて信用は余りしてないが格闘王のリュウトもいるし、一緒に歩くのも嫌だが奴隷王のオタフクが使役する魔物の奴隷も肉壁にはなる。 前衛が1人減ってもそんなに変わらんな)
カズキは顎に手を当てながら、アズキを抜いた編成を思案する。
(中衛にはヒーラーの聖女ユズキと、元素魔法の使い手である精霊王を使役するヒカリ。 後衛には殲滅力だと最強のルウと、ヒーラーでも有り攻撃魔法も何でもこなす賢者ミカが後衛で決まりだな。 そして職業の名前はアレだが、性王マヒルがバックアップだ。 敵を一時的に操る魅了や攻撃力が上昇する踊り等が使用出来る。 多岐に渡ってサポートやバフにデバフもこなせる万能職だ。 これだけの戦力が揃っているなら問題無く殺せるだろ)
考えが纏まったカズキは、会議室に向かうべく着替え始める。 その時に、ふと乱れたベットが目に入り頬を少し染めた。
(マヒルか……夜が凄くなるデメリットは有るが、俺達には不可欠な存在だ。 そして、俺の恋人……だよな。 いや、そうに決まっている。 職の影響で、夜が我慢出来ないと相談を受けてからずっと続く関係なんだから)
カズキは苦しくなる胸の痛みを払い除け、明るい未来を想像して笑う。
(もし、違っても構わないさ。 まだ俺には、王妃と姫が居るんだからな。 よし、邪魔が入ったがさっさと会議室に向かうとしよう。 もう数ヶ月経てば、魔王を殺して使命に専念できる筈だ。 そうしたら亜人共を殺し犯し支配し、好きな事をして生きてやる。 地球での窮屈な生活はもう終わったのだから)
「くっくっくっ、あーはっはっはっは!」
高笑いが止まらないカズキが部屋から出た後に、テーブルの上に置いてあった手紙が風でひらりと床に落ちた。
めくれた手紙にはこう書いてある。
«以前から魔王の生まれ変わりと疑う件の黒髪の巨人の娘、飛竜を単身で討伐。 異常な強さを持っている、魔王の生まれ変わりの可能性大との報告有り。 御指示通り、魔王となる予定の1年早く始末出来るよう行動中です。2歳の祝いの席にて決行予定、同胞達も賛成との事。 全ては創造神様と世界の平和の為に。 獣王国 第2王子 ウンポ»
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