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第3話 模擬戦と武将の驕り
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信長は父の部屋へと招かれ、其処で昨晩の出来事と民を守る為にすべき事を訴えた。
「話は分かった。 だが、無理だ」
父、信秀に直談判した信長であったが、答えは当然ながら却下であった。
「何故です父上! 昨晩の話を聞いて、今までのやり方を変えるべきとは思って下さらなかったか!」
猛る信長を信秀は宥める。
「儂、個人としてはお前の言う事に一理あるとは思う。 だがしかし、他の家臣の者達は反対するであろうな。 たかが百姓の為に城壁を作るなど無駄だと。 それにな、近い内に松平の領地岡崎城を攻略せんとする案も出ておるのだ」
「父上は……武士の起源をご存知か?」
信長の問いに信秀は首を傾げた。
「さて……分からぬな。 それが、この件と何が関係しておるのだ」
「誰もが勘違いしております。 武士と百姓に違いなどありませぬ。 武士の起源は農民が自衛をする為に組織しただけに過ぎません。 つまり、訓練次第では武士も百姓も其処まで差は有りませぬ」
信長の説明に、尾張の虎と称された誇りある武将の信秀はこめかみに青筋を立て怒った。
「ほぉ……言いよるわ。 ならば、お前の言が正しいと証明してみせよ! 明日、城の広場にて儂等とお前が連れて来た者達と模擬戦じゃ!! お前が勝てば、望み通りにしてやろう。 数は……そうじゃな、儂等は5人で充分。 お前は百姓を何人でも連れて参れ!」
出来るものならしてみろと言わんばかりに、信秀は信長に言い放った。 普通の考えの持ち主であれば武将と百姓が模擬戦等、正気の沙汰では無い。
「父上、待ってました! いや~、父上からそう言って頂けると助かるなと思ってたんですよ! ありがとう存じます!」
信長は父の無謀な提案に満面の笑みで答えた。 そして、深々と頭を下げ颯爽と出て行く。
信秀は暫く呆然としてから息子にまんまと乗せられた事に気が付いた。
「しまった……あやつめ。 そういえば、どうやって百姓達と賊を討伐したか言っておらなんだな……ふっ、ふはははは! 明日が楽しみよ!」
信秀は常識外れの息子を思い豪快に笑う、もしかしたら万が一が起こるやもと期待して。
◆◇◆
翌日、約束の時間となり。
城の広場では織田信秀率いる4人の武将が待っていた。
柴田勝家、無精髭を生やし筋骨隆々の武士だ。 信秀に才を見初められ、長年仕えている勇猛果敢な武将である。
佐久間信盛、尾張の家中でも名門佐久間の出身であり、信秀からの信頼も厚い忠臣の1人。
林秀貞、信秀の筆頭家老として仕える歴戦の武将。 平手と同じく、信長の奇行に頭をいつも悩ませている。
内藤勝介、信秀の家中にて忠義溢れる武将である。
以上の、信秀が信頼する武将達が信長達の到着を待っていた。
戦場では、幾度も修羅場を潜り抜け生き残ってきた猛者達はよもや百姓如きに負ける筈も無しと甲冑も纏わずに木刀片手に待っている。
「しかし、若様にも困りましたな」 「しかりしかり、よもや我等と百姓如きに大差が無いなど……ふははは!」 「信盛殿、控えられよ」 「ふっ、殿よ。 先に申しておきますが、幾ら若様と云えど手加減はこの勝介出来ませぬぞ」
「構わぬ。 あのまだまだ悪たれな小僧を叩きのめしてやってくれ」
「「「「ははっ!」」」」
暫く待っていると、信長が10人の百姓達を連れてやって来た。
「ぶはっ! こりゃ堪らん。 我等の相手はあの老人達か!?」 「くっくっくっ……これは、手加減せねば殺めてしまいますぞ柴田殿」
「ふぅ……御二方、控えられよ」
「えぇ……あの長い物は何か分かりませぬが、百姓達の体躯を見られよ。 長年の畑仕事で、良くぞあれ程の身体に仕上げたものよ」
秀貞と勝介は信長が引き連れている百姓達を、ただの農民無勢とは見なせなかった。
「父上、お待たせしました! さぁ、さっさとやりましょう。 どうせ、直ぐに終わりますから」
爽やかに笑う信長の態度に、勝家と信盛は冷静ではいられなかった。
「話は分かった。 だが、無理だ」
父、信秀に直談判した信長であったが、答えは当然ながら却下であった。
「何故です父上! 昨晩の話を聞いて、今までのやり方を変えるべきとは思って下さらなかったか!」
猛る信長を信秀は宥める。
「儂、個人としてはお前の言う事に一理あるとは思う。 だがしかし、他の家臣の者達は反対するであろうな。 たかが百姓の為に城壁を作るなど無駄だと。 それにな、近い内に松平の領地岡崎城を攻略せんとする案も出ておるのだ」
「父上は……武士の起源をご存知か?」
信長の問いに信秀は首を傾げた。
「さて……分からぬな。 それが、この件と何が関係しておるのだ」
「誰もが勘違いしております。 武士と百姓に違いなどありませぬ。 武士の起源は農民が自衛をする為に組織しただけに過ぎません。 つまり、訓練次第では武士も百姓も其処まで差は有りませぬ」
信長の説明に、尾張の虎と称された誇りある武将の信秀はこめかみに青筋を立て怒った。
「ほぉ……言いよるわ。 ならば、お前の言が正しいと証明してみせよ! 明日、城の広場にて儂等とお前が連れて来た者達と模擬戦じゃ!! お前が勝てば、望み通りにしてやろう。 数は……そうじゃな、儂等は5人で充分。 お前は百姓を何人でも連れて参れ!」
出来るものならしてみろと言わんばかりに、信秀は信長に言い放った。 普通の考えの持ち主であれば武将と百姓が模擬戦等、正気の沙汰では無い。
「父上、待ってました! いや~、父上からそう言って頂けると助かるなと思ってたんですよ! ありがとう存じます!」
信長は父の無謀な提案に満面の笑みで答えた。 そして、深々と頭を下げ颯爽と出て行く。
信秀は暫く呆然としてから息子にまんまと乗せられた事に気が付いた。
「しまった……あやつめ。 そういえば、どうやって百姓達と賊を討伐したか言っておらなんだな……ふっ、ふはははは! 明日が楽しみよ!」
信秀は常識外れの息子を思い豪快に笑う、もしかしたら万が一が起こるやもと期待して。
◆◇◆
翌日、約束の時間となり。
城の広場では織田信秀率いる4人の武将が待っていた。
柴田勝家、無精髭を生やし筋骨隆々の武士だ。 信秀に才を見初められ、長年仕えている勇猛果敢な武将である。
佐久間信盛、尾張の家中でも名門佐久間の出身であり、信秀からの信頼も厚い忠臣の1人。
林秀貞、信秀の筆頭家老として仕える歴戦の武将。 平手と同じく、信長の奇行に頭をいつも悩ませている。
内藤勝介、信秀の家中にて忠義溢れる武将である。
以上の、信秀が信頼する武将達が信長達の到着を待っていた。
戦場では、幾度も修羅場を潜り抜け生き残ってきた猛者達はよもや百姓如きに負ける筈も無しと甲冑も纏わずに木刀片手に待っている。
「しかし、若様にも困りましたな」 「しかりしかり、よもや我等と百姓如きに大差が無いなど……ふははは!」 「信盛殿、控えられよ」 「ふっ、殿よ。 先に申しておきますが、幾ら若様と云えど手加減はこの勝介出来ませぬぞ」
「構わぬ。 あのまだまだ悪たれな小僧を叩きのめしてやってくれ」
「「「「ははっ!」」」」
暫く待っていると、信長が10人の百姓達を連れてやって来た。
「ぶはっ! こりゃ堪らん。 我等の相手はあの老人達か!?」 「くっくっくっ……これは、手加減せねば殺めてしまいますぞ柴田殿」
「ふぅ……御二方、控えられよ」
「えぇ……あの長い物は何か分かりませぬが、百姓達の体躯を見られよ。 長年の畑仕事で、良くぞあれ程の身体に仕上げたものよ」
秀貞と勝介は信長が引き連れている百姓達を、ただの農民無勢とは見なせなかった。
「父上、お待たせしました! さぁ、さっさとやりましょう。 どうせ、直ぐに終わりますから」
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