【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第235話 コロシアムで殺し合い

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 「分かった、ありがとう……セリス。 おかげで冷静に判断が出来た」

 「お役に立てたなら何よりです、貴方様」

 セムネイルはリポンとリパンを自宅で休ませている間に、飛竜王の卵を置いた小屋でセリスから説明を受けていた。

 「まぁ、どっちみちセムネイルはリポンを許してたくせに。 ハヤちゃんに話す前はリポンの事殺す気だったでしょ?」

 同席しているグラに突っ込まれたセムネイルは顔を顰める。

 「そりゃ……グラ達を危険な目に合わせたんだからな。 もし、敵ならそりゃ……始末しないとダメだろ」

 「ふふ、でもハヤちゃんにリポンさんの事を頼まれた時の貴方様はとても優しい顔で笑われてましたよ?」

 「あはは、そうそう。 あの時に殺さないって決めた顔をしてたもんね」

 セリスとグラに図星をつかれ、セムネイルは頬をかいて誤魔化した。

 「そ、それよりだ。 とりあえず、リポンとリパンの事を頼む。 俺は街に戻ってギルマスのソルバに事情を説明してくる」

 「はい、お任せ下さいませ」

 「ん、いってらしゃい。 キュイジーヌちゃんには、後でセムネイルが迎えに来るって伝えておくわね」

 「すまん、よろしく頼む」

 セムネイルはセリス達にリポンを任せ、4次元の扉を潜りに向かった。

 ◆◇◆

 ――という訳で、この街の受付嬢リポンと小さな町パイムの受付嬢リパンは俺の4次元世界で保護する事になった。 いきなり受付嬢が居なくなるがよろしく頼む」

 セムネイルはミンガムの街に戻り、冒険者ギルドマスターのソルバを訪ねていた。

 「ほっほっほっ……なるほどのぉ、分かりました。 受付嬢は他にもおります、パイムには別の者を向かわせましょうぞ。 それにしても……リポンが魔族や魔王の協力者だったとは。 セムネイル殿、リポンの事……どうかよろしくお願いしますじゃ。 儂にとっては、魔人だろうと裏切り者だろうと……孫娘の様な存在でしてのぉ」

 ソルバはセムネイルに深く頭を下げる。

 「構わん。 それと、少しバタバタしたが……これから行けるか?」

 セムネイルの言葉にソルバの表情は孫娘を想う祖父から、1人の剣士の顔になった。

 愛刀とセムネイルが取り戻した弟の刀を手に取り、ソルバは頷く。

 「勿論ですじゃ。 セムネイル殿が造られたという4次元世界、ぜひ拝見させて頂きたい」

 セムネイルは立ち上がり、ギルドマスターの執務室に4次元扉を取り出した。

 「よし、入ってくれ」

 ◆◇◆
 
 「ほっほっほっ、セムネイル殿には本当に驚かされてばかりですなぁ。 話しには聞きましたが……この目で見ても信じ難いものです」

 ソルバは笑いながら4次元扉を潜り、開けた絶景に目を見張った。

 美しい草原、壮大にそびえる山々、流れる小川、そして4次元扉の周囲には多くの建物が建ち並び様々な種族の者達が行き交っていた。

 「セムネイル様、お戻りで……って、ギルドマスター!!」

 4次元扉の側にある見張り小屋からジェイソンが現れ、セムネイルに頭を下げる。 そして、隣のソルバに気が付き驚いた。

 「おぉ、ジェイソン! セムネイル殿から聞いておったが……お主、儂が現役の頃より良い装備着ておらんか?」

 現れたジェイソンは元Bランク冒険者なのだが、現在着ているのはドワーフ族のルグ謹製の地竜の鎧一式と、手には地竜の丸盾、地竜の牙にオリハルコンを少量混ぜて打った直剣を持っていた。 

 これは今の世界基準だと、世界最強と云われるSランク冒険者達ですら装備出来ない程の逸品である。

 「そ、そうなんです。 セムネイル様に見張り番を頼まれた後に……あれよあれよのうちにとんでもない装備を与えられまして」

 ジェイソンは身の丈に合っていない装備の高級さにげんなりした様子で話した。

 「いや、4次元に侵入者が来たら一番に戦うのはジェイソン達だからな。 今渡せる最高の装備を与えるのは当然だろ? 因みに、防具には致命傷回避と防御力UP大、土耐性UP大、防具自動修復少が付与出来たとルグが言っていたぞ。 残念ながら、武器には効果はつかなかったらしいが」

 「……ルグさんから聞いた時には、仲間の何人かが気絶しましたからね?」

 「ほっほっほっ、そりゃそうじゃろ。 その様な破格な効果の付いた、しかも地竜の鎧等……少なく見てもそれ1つで街が丸ごと買える程の白金貨で取り引きされるじゃろうのぉ」

 ジェイソンとソルバはセムネイルを信じられないという顔で見つめるが、当の本人は首を傾げるばかりだ。

 「ん? いや、確かにその装備はそれなりだが……俺の基準からするとまだ厳しいぞ。 魔神や神と殺し合っていた時代だと、数秒で死ぬからな。 おっと、すまんソルバ。 この後に約束があるんだ。 とりあえず、コロシアムに向かっても良いか?」

 「魔神や……神。 凄まじい基準ですのぉ。 ほっほっほっ、勿論ですじゃ。 ジェイソン、またの」

 「……はっ! すみません、少し意識が遠くなってました。 ギルドマスターも会えて嬉しかったです。 それでは」

 セムネイル達はジェイソンと別れ、コロシアムへと向かう。

 道行く者達は皆セムネイルを見つけるとお辞儀をしたり笑顔で挨拶したりと、心から慕われている事が窺える。

 (ふむ……セムネイル殿は統治者としても優秀。 ほっほっほっ……あ奴らとは真反対じゃの)

 ソルバは腐敗した母国の王族を思い浮かべ、顔を顰めた。

 「着いたぞ、此処だ」

 「おぉ、何たる見事な石像……コレはリュウマ様!」

 コロシアムの周囲にはセムネイルが契約している者達の石像がずらりと囲む様に並んでおり、その中には当然セムネイルの友である神剣流派の始祖リュウマの石像もある。

 「中も凄まじいですなぁ……」

 コロシアムの中に入ると、肉食獣人のライ達や魔人達が戦闘訓練を行っていた。

 「ん? 魔人族の長老、何をしているんだ?」

 「これはこれは、セムネイル様。 いえ、少し想うところがありまして。 ローズ様に頼み込み、タリア様方から戦闘の手解きを受けていたのです。 今日は習った事を皆と反復しておりました」

 「あぁ……ローズが言っていたやつか。 うむ、好きにすればいいが……無理するなよ?」

 魔人族の長老は嬉しそうに微笑み、他の魔人の年配者達も優しい魔王の存在に顔が緩む。

 「ありがとうございます。 おや? お客人ですかな?」
 
 「そうなんだ。 すまないが、訓練を辞めれるか? 俺の予想だが、コロシアムにいると危険な目にあうぞ。 ソルバ、すまん少し待っていてくれ」

 セムネイルはソルバに目配せをした後、ライ達にも退出を伝えに向かった。

 ◆◇◆

 「後は……リュウマが入れる器の人形が必要だな」

 セムネイルは狭間の権能である創造の手本を使用し、アダマンタイトとオリハルコンを混ぜて作った人形を作り出した。

 そして、ライ達もコロシアムの結界から退出し自分達だけになった事を確認したセムネイルは神域魔法である契約魔法を唱え始める。

 「うおー! セムネイル様、何かカッコいい!」

 「「「「「カッコいいーー!」」」」」

 「これは……凄いものが見られそうですな」

 コロシアムに備えられた客席では勉強になるからと肉食獣のライ達や魔人達が見学しており、セムネイルの使用する契約魔法で足下に出現した魔法陣を見たライ達から黄色い悲鳴が上がった。

 当然だが、非常に危険な為に絶対にコロシアムの結界内には入るなとセムネイルに言い付けられている。

 「俺と契約せし神剣流派の使い手リュウマ。 約束通り、免許皆伝者を連れてきたぞ! 此処にお前の姿を現し、望みを果たせ!」

 セムネイルの背後に半透明の剣神リュウマが現れ、そのまま器として準備していた人形へと入る。

 そして、ソルバを見て獰猛な笑みを浮かべた。

 「おぉ!! リュウマ様! わ、儂は今代の神剣流派免許皆伝者のヤマト フォル ソルバと申します! お目にかかれて光栄のいた……ほっほっほっ、そうですな。 大変失礼しました。 後は、儂の剣で示しましょうぞ!」

 ソルバはリュウマに片膝をついて敬意を示していたが、一時の器を得たリュウマに手で不要と言われてしまう。

 そして、リュウマはソルバの持つ刀を指差し、かかってこいとジェスチャーした。

 ソルバは弟の刀をリュウマに渡し、神すら斬り殺す神剣流派の免許皆伝者らしい獰猛な笑みを浮かべながらリュウマに斬り掛かる。

 瞬時に結界内では嵐が巻き起こり、観客席から驚きの声が聞こえた。

 「やれやれ、まぁ好きなだけ暴れてくれ。 俺はキュイジーヌと市場で買い物したら帰ってくるからな。 それと、コロシアムの結界までは壊すなよー?」

 凄まじい剣戟が結界内で巻き起こる中、セムネイルは悠々と縦横無尽に飛んでくる斬撃を躱しながらコロシアムを後にするのであった。
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