【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第228話 屋台巡りと赤い指輪

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 「「「「ぎゃぁー!」」」」

 野次馬をしていた冒険者達は、突如として男達の首が落ちた事に悲鳴をあげながら逃げ出した。

 「ふぅ……旦那様に貰った大切なナイフが汚れちゃいました」

 しかし、ハヤはそんな事は気にせずにオリハルコンのナイフを大事そうに磨いている。

 「ハヤ、見ていたぞ」

 そんなハヤにセムネイルが話しかけると、ハヤは顔を真っ赤にしてナイフを収納した。

 「セ、セムネイル様!? す、すみません……私、怒りに我を忘れて」

 「構わん。 ハヤが殺らなければ、この馬鹿共は武器を手に襲っていただろう。 ソクド達を殺し、ハヤを辱める為にな。 良くぞ、自分で動いたな。 ハヤが俺の妻である事を誇りに思うぞ」

 セムネイルは死んだ男達を一瞥し、ハヤの頭を優しく撫でる。

 「ひゃ、ひゃい……ありがとうございます」

 褒められたハヤはしおらしく返事をし、セリス達は微笑ましそうに見ているが足下には死体が転がっているのだ。

 普通の反応では無い。

 「あ、あのよ。 仲睦まじいのは兄としても嬉しいんだけど、流石に不味くないか?」

 ソクドの意見にセムネイルは首を傾げる。

 「何故だ? 元々は彼奴等が売ってきた喧嘩何だろ? 問題無いだろ」

 「はい、私も問題無いと思いますわ貴方様」

 「リンもそう思います。 逆に返り討ちに合うのが嫌なら、ハヤさん達に絡まなければ良かったのでは?」

 「うんうん、その通りだぞ! 狩人は獲物に返り討ちに合うリスクをとってやるんだぞ。 さっきの奴等は……ゴミ過ぎて俺でも殺すぞ?」

 「そうね、私も別に良いと思うけど。 最初にこのギルドに私達が来た時も絡んできた馬鹿達を殺したでしょ?」

 セムネイルは妻達からも同意を得られ、満足気に頷いた。

 「よし、ソクド……後は頼む。 ハヤ、屋台巡りに行こう。 リンとノラがもう腹ペコだ」

 「ふふ、お任せ下さい! じゃあ、兄上行ってきますね」

 ハヤは満面の笑顔で兄のソクドに全てを放り投げ、セムネイル達の下へと駆けて行く。

 そんな妹をソクドは苦笑いで見送り、同じく苦笑いのパーティーメンバー達と頭を突き合わせる。

 「はは……行ってらっしゃ~い。 おい、お前等! 衛兵が来たらちゃんと説明して正当防衛にするぞ。 最悪ゴリ押しだ!」

 「「「「お、おう!」」」」

 この後、野次馬達からの証言もあり瞬足の前足は罰金だけで済んだのであった。

 ◆◇◆

 「おいひー!」

 「んむんむんむ! リン、コレも美味いぞ!」

 「リンとノラ、あまり離れてはダメよ? 変な輩も居るんだから」

 ソクド達が必死な弁明をしている頃、セムネイル達は夜でも活気あふれる市場で屋台巡りを楽しんでいた。

 「えへへ、リンさんとノラさんが気に入ってくれて安心しました」

 ハヤは年下の2人が嬉しそうにフランク串とポテト串を頬張っているのを微笑ましく見ていた。

 セリスも2人を注意しながらも、楽しそうな2人を優しく見守っている。

 「あち! うむ……初めて食う物ばかりだが、確かに美味いな」

 「ぷはぁ! この温めて飲むお酒も美味しいねぇ~、酔いが回る~」

 セムネイルはハヤ1番のオススメである牛串に齧りつき、グラは熱燗と呼ばれる温めて飲む未知の酒を堪能している。

 「お店の人達は凄く驚いましたけどね……あはは」

 「おう、殆ど買い占めたからな。 まぁ、釣りは要らぬと金貨を適当に渡しておいたから問題無いだろ」

 気に入った屋台でセムネイルは大量注文をし、全て4次元に収納していた。

 そのおかげで、セムネイル達が立ち寄った屋台は品切れし早々に閉店した店主達は満面の笑顔で片付けをしている。

 「あはは~、セムネイル~? このお酒美味しいよぉ~? あら~? 地面が揺れる~助けてセムネイル~!」

 「おいおい、グラ。 程々にな? こりゃ、帰ったら直ぐに風呂入ってベットに直行だな」

 グラは完全に泥酔し、セムネイルの背中によじ登る。

 「うわぁ……グラさん、この熱燗っていうお酒はかなり強い筈ですよ? こんなに飲んで……だ、大丈夫でしょうか」

 「くっくっくっ、問題無い。 グラは魔族だからな、明日の朝にはケロッとしてるよ。 ん? コレも屋台か?」

 妻達と連れ立って屋台巡りをしていると、貴金属を並べている屋台が目に入った。

 ネックレスや指輪等が並び、商人らしき男が客引きをしている。

 「わぁ~どれも綺麗ですね。 あ、アレとか凄く綺麗ですよセムネイル様! そういえば、リポンさんもあんな赤い宝石が付いた指輪を5つもしてたんですよね。 お祖母ちゃんの形見とか何とか? しかも、その指輪魔力が込められてたらしく急に1つが砕け散って凄くびっくりしたんですよ~」

 ハヤが世間話として話した内容にセムネイルは目を見開く。

 「ハヤ……それは何時の事だ?」

 「ふぇ……? え、えっと……確かセムネイル様が竜の洞窟に行かれた日だったと思いますよ?」  

 「そうか。 ありがとう、ハヤは流石だな」

 「ふぇ?! あ、え、その……えへへ♡」

 セムネイルにまた褒められ、頭を撫でられたハヤは蕩けそうな顔で微笑んだ。

 (明日、冒険者ギルドに顔を出した時にリポンを問い詰めるか。 最悪……敵なら殺す。 まぁ、魔王達に脅されている可能性もあるしな。 焦らずにやるとしよう)

 セムネイルは心の中でリポンの処遇を考えた後に、貴金属の屋台へと近付いた。

 「じゃあ、そんなハヤに何か贈ろう。 店主、すまない」

 「はいよ! お兄さん、綺麗な娘さん達をお連れだね。 どうだい? 奥さんにはネックレスや指輪が喜ばれるよ~? まぁ、ちょっと高いからね。 全員分は買えないかもしれないけど、どうする?」

 「ふむ、ちょっと待ってくれ。 さて……どんな物があるか」

 セムネイルは並ぶ貴金属を一通り識別魔法を使用し、呪いや特別な魔力が付呪されていないかを確認していく。

 (うーむ……これも時代が流れた結果か? 全部ゴミレベルだぞ? 此処で買わずに、宝物庫にあるネックレスを贈った方が良いかもな)   

 冷やかしで終わろうかとしていると、ハヤが1つのネックレスを手に取った。

 「わぁ……これ、凄く素敵です」

 ソレは何の効果も無いただのネックレスだ。 しかし、小さく光る宝石がはめられており夜の明かりが反射して光り輝いていた。

 「お! お嬢ちゃんお目が高いね! ソレはね、新しく見つかったダイヤモンドっていう宝石を付けたネックレスさ。 数も少なくて希少だからね、値段もかなりするよ? すばり、白金貨1枚!」

 ハヤはダイヤモンドのネックレスに目を奪われていたが、店主から値段を聞いて急いで返した。

 「ひぇ……白金貨1枚!? す、すみません……大丈夫ですから」

 「店主、俺の妻達とそのダイヤ。 どちらの方が美しい?」

 「おぉ? う~む……そうだな」

 突然変な質問をされ店主は困り顔だったが、どうせ買えないだろうし素直に言うかと口を開いた。

 「ずばり、お兄さんの奥さん達だね。 俺は長年この商いをしている。 だからこそ、色褪せない宝石よりも今この瞬間に輝いている女性が世界で1番美しいと思ってるんだ。 その美しさを更に引き立てる為に指輪やネックレスは存在しているのさ。 はは、悪い忘れてくれ。 初対面のお兄さんに何を言ってんだか……ははは」

 「そうか……ありがとう。 店主よ、ダイヤモンドのネックレスを貰う。 これで足りるか?」

 セムネイルは店主を気に入り、いつも通り4次元から金貨の山を取り出した。 

 その数はどう見ても白金貨1枚よりも多い金貨だ。

 「セムネイル様!?」

 セムネイルの行動にハヤは驚きの声を上げ、セリスはいつも通りのセムネイルだと微笑んで見ている。

 グラはセムネイルの背中で泥酔し、腹が膨れたリンとノラは眠りそうになっていた。

 「へぁぁぁぁ!? ま、まじかよお兄さん。 へっ! どうやって出したのかは知らねえけど、お嬢ちゃん……良い旦那をもったね」

 店主はハヤにウインクをしながらセムネイルにダイヤモンドのネックレスを手渡し、ハヤは顔を真っ赤に染める。

 「ハヤ、受け取ってくれ」

 「ひゃ、ひゃい! ありがとうございましゅ!」

 赤面したまま直立不動のハヤの首にネックレスを通し、金具を付けた。

 「うむ、良く似合ってるぞ。 ハヤ」

 「え、えへへ……凄く嬉しいです。 ありがとうございます、セムネイル様♡」

 幸せそうに笑うハヤの頭を撫で、セムネイルは妻達を連れて屋台を後にした。

 去り際に、セムネイルから11個のダイヤモンドのネックレスを注文された店主は苦笑いで固まっていたが仕入れられる頃には必要になる数は増えている事だろう。
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