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第220話 古き友との約束

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 「黒龍、話しは分かった。 俺の方でも、アスモの企みが暴けたら必ず対処しておく」

 セムネイルは黒龍から事情を聞き、世界をまた地獄に落とそうとする謀略と叡智の魔王アスモに対し怒っていた。

 「うむ、頼む。 我は復活せし同胞の兆しも見ておかねばならぬゆえ。 全てを見ることは出来ぬのだ」

 「任せろ。 ……ん? 同胞が復活するとはどういう意味だ?」

 「む? 古き敵も知っておるだろ? 古き戦い、神魔大戦の際に我等龍は様々な立場で参加し多くの同胞を失ったのだ」

 黒龍は目を細め、懐かしむように呟いた。

 「火龍、水龍、風龍、土龍、雷龍……同胞達は勇敢に戦い散った。 残っているのは氷龍、光龍、そして黒龍たる我のみよ」

 「火龍の事はよく知ってるよ。 他の龍も、神と魔神との激しい戦いで死んだと聞いた。 龍一匹で、幾柱もの神や魔神達を滅ぼしたんだろ?」

 「うむ、正に世界を守護せんとする龍の鏡よ。 そなたら外から来た者達は知らぬが、世界を守護せんとする我等龍達は例え死んでも幾千年が経つと復活するのだ」

 セムネイルは初耳の話しに目を見開いて驚いたい。

 「なんだと!? つまり、火龍サランも世界の何処かで復活するのか!?」

 「グァハハハハハ! 何だ、古き敵よ。 お主はサランを知っておったか。 む? ならばサランの友、魔剣の魔王グラの事も知っておるのか?」

 「勿論だ。 エオルニアの手に落ち、女神モーンデが封印されていたダンジョンで魔神の心臓として植え付けられていたが助けて妻にした。 今は4次元に居るぞ」

 黒龍は嬉しそうに微笑み、目を瞑る。

 「そうか、無事か。 それに、モーンデの封印も解いてくれたと言っておったな……」

 「そうだ。 元気いっぱいに竜の肉を食ってたぞ」

 「グァハハハハハ! うむ、何よりだ。 憎きエオルニアの下で悲惨な目にあっておろう。 どうか、美味い物をたらふく食わせてやってくれ」

 「当然だ。 さっき救出した女神も、落ち着いたら封印を解いておく。 任せてくれ」

 「任せた。 古き友よ」

 黒龍の言葉にセムネイルは笑う。

 「何だよ。 殺し合った事のある俺を友と呼んでくれるのか?」

 「うむ。 お主は変わった……良き方向にな。 今のお主なら、古き時代の過ちは繰り返さぬであろう。 もし、我の力が必要とあらばコレを吹け。 直ぐに駆け付け、古き友の敵を屠らん」

 黒龍はセムネイルに何処からか取り出した笛を渡す。 ソレは牙を加工して作った笛であり、龍が心を許した相手にしか渡さない秘宝であった。

 「受け取るよ、古き友よ。 あ、他の女神達が封印されているダンジョンは分かっているのか?」

 「我の予想だが、古き友が滞在している国にはもう無い。 可能性としてたが……聖エオルニア教国と癒しの王国の大国が治める領地の何処かにあるダンジョンであろうな。 詳しくは古き友の方が調べやすかろう」

 「分かった。 魔族や魔王達が何処に潜んでいるのかは知らないよな?」

 「うむ、奴等は我や神達を警戒し慎重に行動しておるようだ。 どれだけの魔族や魔王がアスモに与しておるか分からぬ。 探すなら気を付けよ」

 「分かった。 その情報だけでも充分だ。 そろそろ行くのか?」

 黒龍は用は済んだと翼を広げた。

 「うむ、憎きエオルニアに探知されぬ保証は無いからな。 では、さらばだ古き友よ。 世界を管理せし亜人の女神達を頼むぞ!」

 「約束する。 さっきは助かった! ありがとう!」

 「グァハハハハハ! 今日は良き日よ! さらばだ!」

 黒龍は巨大な翼を羽ばたかせ、一瞬で空へと消えて行った。

 「さて、本格的にやるべき事が決まったな。 さっさとSランク冒険者になって、女神達の救出と馬鹿アスモをぶっ飛ばしに行くか」

 セムネイルは崩れた竜の洞窟近くに4次元の扉を出し、潜るのであった。

 ◆◇◆

 「すまん、遅くなった」

 セムネイルが4次元へと帰ると、扉の前にはローズ達が待っていた。

 「セムネイル様!」 「貴方様、ご無事で何よりです!」
「セムネイル様……本当に無事で良かったです」 「なはは! 俺はセムネイルを信じてたからな!」 「さ、さっきセムネイル様に喚ばれた気がしたんです! だから、絶対に無事だって信じてました!」 「タリアの世迷い言だと思ったけど、グラさんが気のせいじゃないって教えてくれて……どれだけ安心したか」 「「お帰りなさいませ、我等の神よ」」 「す、すっごい竜王と戦ったって聞きました! 神話のレベルですよ! 兄さんに話すのが楽しみです!」

 「ふははは! 俺もセリス達が無事に脱出したとグラから手紙を貰って安心した。 皆の顔が見れて嬉しいぞ!」

 囲む妻達の頭をセムネイルは撫で回す。

 「ん? サシャ、グラは何処だ?」

 「はいよ、お帰りなさいお兄さん。 無事で何よりさね。 グラちゃんは、家の地下にある宝物庫に居るよ。 それと、もう1人待ち人が不安気にしてるから早く行ってあげな」

 「あ、ケイティ! 皆、すまんちょっと行ってくる。 もしかしたら妻が増えるかもしれん……その時はよろしく頼む」

 「ふふ、今更ですよセムネイル様。 私達は妻姉妹が何人になろうと構いません。 ね? 皆」

 ローズの言葉に頷く妻達を見て、セムネイルは寛大な妻達に恵まれている事に感謝した。

 「ありがとう。 どんなに妻達が増えようと、一人一人変わらずに愛し続けるからな」

 セムネイルは妻達と口づけを交わし、足早に家の地下へと向かった。
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