【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第218話 古き恩

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 「古き敵よ、空の旅とは中々に乙な事をしているな」

 「はぁ~……おい、助けるのか助けないのかどっちなんだ? 黒龍」

 セムネイルは超高速で地面へと叩き付けられる前に、突如として現れた黒龍に足を掴まれ逆さ吊りのまま空中を飛んでいた。

 「グァハハハハハ! 我が睨んでおったダンジョンに異変があったのでな。 もしや、古き敵が早速踏破してくれたのかと見に来たのよ」

 「分かった分かった、とりあえず降ろしてくれ」

 「うむ、分かった。 して、救えたか?」

 黒龍はセムネイルを地面へと降ろし、その巨体を揺らしながら着地する。

 「いてて……すまん助かった」

 セムネイルは黒龍に無造作に放られ、結局地面へと顔から落ちた。

 「構わぬ。 して? どうであった」

 「助けれたぞ。 まぁ、色々イレギュラーな事があったがな。 聞くか?」

 「イレギュラー? うむ……聞こう」
 
 「そうだな、先ずは……」

 セムネイルは黒龍に竜の洞窟で起きた事を説明するのであった。

 ◆◇◆

 「ぬぅ……魔王共め。 どうやら、まだ憎きエオルニアとの戦いを諦めておらぬのか」

 セムネイルから紅い宝石とそのせいで変異した竜王の話しを聞き、顔を顰めて唸る。

 「どういう事だ?」

 「古き敵は知らぬよな。 神魔大戦は神側が勝ったのだ。 殆どの魔神は滅ぼされ、魔王達や魔族達は追い回され散り散りとなった。 そして、憎きエオルニア達の時代が到来しこの世界は現在……神側が支配しておる」

 黒龍は憎々しげに口を開き、大昔に何が起きたのかを話し始めた。

 「だが、神側もかなり疲弊した。 それでも、お主の仲間達を追い回し龍の恩たる亜人族にまで手を出しおった。 その時、我等龍達は亜人族の大陸で休んでおった故に……古き敵の仲間達や亜人族の女神達と共に神と戦ったのだ」

 「黒龍……そうだったのか。 すまない……ありがとう」

 「グァハハハハハ! なんだ、古き敵よ。 お主は封印されている間に何やら丸くなったでは無いか! 昔のお主なら、知った事かと礼等絶対に言わなかったであろうに」

 頭を下げるセムネイルを見て、黒龍は目を丸く大笑いする。

 「昔を思い出す度に恥じるばかりだよ」

 「グァハハハ! そうか、うむうむ。 我の目は間違いでは無かったか。 さて、何処まで話したか……あぁ、そうだ。 我等と神側の戦いよな。 当初は我等が優勢であった。 神側がかなり疲弊しておった故な。 だが……憎きエオルニアが地殻変動を起こし、亜人族の住む大陸を中央大陸に無理矢理繋げ、戦況は傾いた」
 
 セムネイルは黒龍の話しを聞きながら歯を食いしばる。

 現在の状況を見れば、その戦いがどうなったのか明白だからだ。

 「負けたんだな……」

 「む? いや、勝ったぞ?」

 黒龍からの予想外な返答にセムネイルは驚く。

 「はぁ? え、勝ったのか? なら、何で亜人族の女神は封印されてんだよ」

 「グァハハハハハ! そう焦るな。 確かに、一度我等は神達に勝った。 だが、それは3000年も前の事。 当時居た強き英雄達が死に、無理矢理同じ大陸で住むことになった亜人族は生き残った人間達と争いとなった。 疲弊した神達が神界で休んでおる間に、世界の状況は変わり果てたのだ。 フゥ……そして、黒龍の我でも長いと感じる程の年月が経過した」

 黒龍は一息つき、ため息を吐いてから吐露する様に吐き出した。

 「今より1000年前、多少は回復した憎きエオルニアが自身を祀る国を作り、亜人達を狩らせ始めたのだ。 面白き事だろ? あれ程に神達から奴隷として、使い捨ての玩具として扱われた人間達が今度はその神達を崇め従い始めたのだ」

 「聖エオルニア教国……そんな昔からあるのかよ」

 「何度か名前は変えた様だが、根本は変わらぬ。 その時、我等龍は恩たる亜人族の女神達が無謀にも神界へと殴り込みをかけるのを知り得ない状況にあったのだ。 気付いた時には既に遅く、全員捕らえられておった」

 黒龍は当時の事を思い出し、苛立つように尻尾を地面へと打ち付けた。

 「故に、我はそれ以来神界を監視し続けた。 すると、数百年前に我の予想通り亜人族の女神達がそれぞれ封印され新たに作られたダンジョンへと散りばめられたのを知ったのだ」

 「ん? 何で黒龍は亜人族の女神達が封印されると知ってたんだ? 滅ぼされてもおかしくないだろ」

 「グァハハハハハ! それをすれば世界を管理する均衡は崩れ去り、この世界は滅ぶからよの。 忘れてはおるまいな? ?」

 「……なる程な。 だから、封印された女神達に何かあれば世界が滅ぶって訳か」

 セムネイルは黒龍から以前に言われた言葉を思い出し、ようやく納得した。

 「うむ。 古き敵は神魔大戦の時代に全てのダンジョンを踏破した変わり者故、適任だと考えた」

 「まぁな……だが、封印から解かれてから入ったダンジョンは全て俺の知らないダンジョンだった。 それは何故だ?」

 「憎きエオルニアが地殻変動を起こした際に、ダンジョンは一度全て崩れ去った。 現在、存在するダンジョンは全て後に生き残った魔神や味方の人間に試練を課す為に迷宮の神が作ったものよの」

 黒龍からの話しを聞き、疑問がどんどん解消されるセムネイルは当初の質問を思い出す。

 「だからか。 分かった、黒龍。 お前にもかなりの借りがある様だ。 欲望と狭間の魔王セムネイルの名に掛けて約束しよう、必ず全ての女神達を救い出す。 だが、そもそもの話の始まりだった魔王達とはどう繋がるんだ? 魔王達も魔族達も数はかなり減ってるんだろ?」

 「そうだ。 だからこそ、奴等はずっと企んでおるのよ」

 「何をだ」

 「……第二次神魔大戦を起こす事をな」

 セムネイルは黒龍の言葉に顔を顰め、拳を握り締めた。

 「そんな馬鹿な事を考える奴は1人だけだ! 謀略と叡智の魔王……アスモ!!」
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