【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第215話 クリスタルとダンジョンコア

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 「先輩、まだ4次元の世界作れるんっすよね?」

 「勿論だ。 封印が解けた後に出会った妻達や、奴隷にされた者達を解放して住まわせているぞ」

 「妻達……っすか。 あはは、本当に先輩は変わったんっすね」

 ケィティはセムネイルからの返答に目を見開き、苦笑いを浮かべる。

 「なら、話は早いっす。 お願いっす、雷竜王ちゃんと水竜王ちゃんを先輩の4次元に逃がして欲しいっす。 理由は分からないっすけど、多分……このダンジョンは崩壊してるんっすよね?」

 「……そうだ。 俺達より前に来た魔王達が何やら実験をしたらしくてな。 四階層で氷竜王から他の属性の竜王達の首が生えた化け物を生み出していた。 何とか倒せたが、その余波でこのダンジョンは……直に崩壊する」

 セムネイルは状況を説明しながら気付く。

 ダンジョンが崩壊するという事は、ダンジョンコアに無理矢理繋げられ老いずに生きてきたケィティも一緒に死ぬという事に。

 「あはは……最悪っすね。 やっと……先輩に会えたんっすけどね。 さっき言ったのは……嘘っす。 本当は……ずっとずっと先輩が大好きだったっす。 裏切った時も、あんな事をするつもりは無かったんっす……信じられないと思うっすけど、憎しみや嫉妬の感情が皆抑えられなくなってたんす」

 確実な死が近付いていると悟ったケィティはセムネイルに隠していた想いを吐露した。

 そして、寂しげに微笑んだ。

 「ケィティ……」

 「でも……もう、遅いっす。 自分はエオルニアにぐちゃぐちゃにされたっす。 ダンジョンコアからも離れられないっす。 だから……家族の竜王ちゃん達を頼むっすよ。 先輩」

 頬から涙を流し、仲間であり家族の竜王達をセムネイルに託したケィティは死を覚悟したのだ。

 セムネイルはそんなケィティを見つめ、歯を食いしばり額から角を生やす。

 「ケィティ、力を貸してくれ。 雷竜王と水竜王も頼む」

 セムネイルは魔剣を抜き、背後にある宝物庫の扉に対峙する。

 「先輩……? まさか」

 「うぉりゃぁぁ!! そのまさかだ! 宝物庫をこじ開け、その先にある筈のダンジョンコアをケィティと一緒に4次元へ回収する! そうすれば、ケィティも竜王達も助かる!」

 セムネイルは宝物庫の扉に斬りかかり、激しい火花が散った。

 「先輩、無理っすよ! ダンジョンの最終階層の宝物庫はボスを倒さないと開かないっす!」

 「いや、俺は諦めん!! 雷竜王! 水竜王! 最大火力の魔法をぶつけろ! 俺ごとでも構わん!」

 「ガラガラガラガラ!!」

 「シュルルルルル!!」

 セムネイルのケィティを助けたいという想いが伝わったのか、2匹の竜王から最大火力の雷と水の魔法が扉へと放たれる。

 この間にもダンジョンの崩壊は進み、宝物庫前以外は完全に瓦礫で埋もれ一刻の猶予も無かった。

 「ケィティ! お前の力も必要だ! 槍の英雄の力を貸してくれ!」

 「本気なんすね……あは! それに、先輩が自分の力を必要としてくれるなんて! あははは! 生きてて良かったっすよ!」

 本気で宝物庫の扉を破ろうとするセムネイルの姿を見て、ケィティは笑いながらグンニグルを構え扉へと突進した。

 2人と2匹の攻撃は凄まじく、扉は徐々に削れ破片が飛び散り始めた。

 「いける! ケィティ、全力でやるぞ! 喰らえ魔剣デザイア!!」

 「了解っすよ! 穿て神槍グンニグル!」

 「ガラガラガラガラガラガラァァァァァァ!」

 「シュルルルルルゥゥゥゥゥ!!」

 セムネイルの魔剣が紅く光り、ケィティのグンニグルも神々しく輝いた。 2匹の竜王も雷と水を合わせた複合魔法を放ち、遂に宝物庫の扉は吹き飛んだ。

 「よし、中に入れ! 急げ!!」

 同時に、残っていた宝物庫前の空間も瓦礫が雪崩込みセムネイル達は急いで宝物庫へと逃げ込んだ。

 ◆◇◆

 「わわ! 2匹には狭いっすね。 少しだけ辛抱してて欲しいっす」

 「ガラガラ」

 「シュルル」

 無事に宝物庫へと逃げ込んだが、天井は低く雷竜王と水竜王の巨体では狭かったようだ。

 だが、2匹ともまだケィティが生きている事に喜んでいるのか大きな舌でケィティの顔を舐めている。

 「ケィティ、此方に来てくれ」

 「あ、はいっす!」

 ケィティが宝物庫の奥へと進むと、其処には巨大なクリスタルが鎮座しており中には小柄な少女が閉じ込められていた。

 「これが、ケィティが守っていた亜人の女神か?」

 「そうっす。 確か……ドワーフ? とかって名前の種族を管理する女神っすね」

 「分かった。 とりあえず回収して、目的の場所を探そう」

 セムネイルはクリスタルを4次元へと収納し、クリスタルが鎮座していた場所の先にある壁へと向かった。

 半透明の糸が繋がっているのは奥の壁を越えた先だからだ。

 「此処もどれぐらい持ち堪えれるか分からないっすからね」

 「ん……? この壁、すり抜けれるぞ」

 セムネイルとケィティはそのまま壁をすり抜け、隠された空間へと出た。

 「コレが……ダンジョンコア? 自分、初めて見たっすよ」

 「……俺もだ」

 2人の目の前には抱きかかえれる程の大きな宝石が空中に浮かんでいる。

 部屋は真っ白で、何処か神聖さすら感じられた。

 「ケィティ、先ずは俺が触る。 少し下がっていてくれ」

 「あはは、先輩……優しいっすね」

 セムネイルはケィティを後ろに下がらせ、ダンジョンコアに触れる。

 しかし、触れた直後に感電したかの様な衝撃が襲いセムネイルは弾かれた。

 「ぐっ?!」

 「先輩! 大丈夫っすか!?」

 セムネイルは吹き飛ばされ、真っ白な空間の壁にぶつかる。

 「だ、大丈夫だ。 くそ、4次元への回収も無理か……」

 4次元への回収も試みるが無理だった事にセムネイルは悪態をついた。

 「な、なら自分が触ってみるっすよ。 ダンジョンコアと繋がっているなら、ある意味ダンジョンコアは自分と同じ筈っす」

 「分かった。 だが、気を付けろ。 かなりの衝撃が襲ってきたぞ」

 ケィティは恐る恐るダンジョンコアに近付き、そして触れたと同時にダンジョンコアはケィティの身体に吸収される様にして消えた。

 「……へ?」

 「ケィティ! 大丈夫か? 身体に異常は無いのか?」

 「わ、分かんないっす。 でも、自分でも説明出来ないんっすけどこのままだとヤバい感じがするっす。 こう……また身体からダンジョンコアがポンッて出そうっす!」

 セムネイルは何が起きたか分からなかったが、ケィティを4次元に移動出来る最後のチャンスかも知れないと直ぐに行動を移した。

 「よし、直ぐに戻るぞ! 竜王達もシステムから解放され、殺さなくても4次元に移動出来るかもしれん!」

 「りょ、了解っす! って、えぇぇ!? もしかして、コレが失敗だったら竜王ちゃん達先輩に殺されるんっすか?!」

 説明する時間が惜しいセムネイルは、驚愕するケィティの手を引き竜王達の下へと走るのであった。
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