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第211話 契約魔法の新技

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 「ん? これは……グラの手か?」

 セムネイルは竜王達に追われながら、再度4次元に手を突っ込んでいると手を握られ何かを手渡された。

 セムネイルが作り出す4次元の穴は4次元内の好きな場所と繋げれるのだが、今はポーションを取り出す為に宝物庫に繋げていたのだ。

 そして、手渡された手紙を読みグラ達が無事に脱出した事を知りセムネイルは笑みを浮かべる。

 「ふはははは! これでもう、無駄に逃げ惑う必要は無いな。 決着をつけようか、トカゲ共」

 「「「「「「ゴギャルルル!」」」」」」

 セムネイルは四階層を逃げ惑っている間、魔力を殆ど使用しなかった。

 それ故に当然、回避不可能な攻撃が直撃する時もある。

 当然、現在も様々な属性の攻撃魔法が雨の様に飛んできており、そんな攻撃が当たり千切れかけていた左腕をセムネイルは斬って捨てる。

 他にも足や腹に尖った岩や氷柱が刺さっているが足を止めたら死ぬ為に治療も全て走りながら行っていた。

 そして、ポーションを飲み干し左腕を再生させると同時に他の傷も綺麗に回復する。

 既に装備はボロボロで上半身は裸も当然だ。

 「あ~~~苦い。 さて、いくぞ!」

 セムネイルはポーションの瓶を投げ捨て、頭から角を生やし反撃を開始した。

 「くっくっくっ、新たな契約を交わした事で可能になった新技を味わえる事に感謝しろ! 契約せし魔剣の魔王よ、魔神を裏切り俺に味方した愛しき妻よ。 その権能を示し、俺に多数の意識を操る力を貸してくれ! 魔王の分裂!」

 セムネイルの背後に半透明のグラが現れ、権能の力をセムネイルへと授けた。

 そして、5人に分裂したセムネイルはそれぞれ別の契約魔法の詠唱を始める。

 ゆっくりと迫る竜王達は、セムネイルから発される魔力に恐れ慄き急いで殺そうと複合魔法を溜め始めるがその速度は余りにも遅かった。

 「遅い! 我と契約せし重力喚びの魔女サリアよ、宇宙の全てを吸い込む闇を呼び覚ませ! その姿を現し、全ての魔法を超える重力魔法の見せてやれ! ブラックホール!」

 分裂したセムネイルの背後に半透明の魔女サリアが現れ、持っている杖をかざす。

 「「「「「ガギャァァァァァ!!」」」」」」 

 竜王達の口から放たれた複合魔法が四階層の地面を抉りながらセムネイルへと向かったが、直撃する前に突如として現れた渦巻く闇に全て吸い込まれた。 

 その威力は凄まじく、四階層の天井や地面すら吸い込み瞬く間に四階層の崩壊が始まる。

 「我と契約せし12の翼を持つ天使よ。 不遜なる者を裁き、不義なる者を裁く公平にして神界一の裏切り者、最高位天使ミカエルよ。 裁きを受ける者が逃げ出さない様に、その正義の鉄槌を下せ! 光の磔!!」
 
 分裂したセムネイルの傍らに半透明の12枚の翼を持つ神々しく美しい天使ミカエルが現れ、竜王達の巨大な身体に光の杭が幾つも打ち込まれ竜王達は痛みに叫ぶ。

 その攻撃の余波で、天井が更に崩れ周囲に瓦礫が落ち始めた。

 「「「「「「ゴギャァァァ?!」」」」」」

 天使ミカエルが打ち付けた光の杭は魂に直接刺さる為、竜王達は回復できずに全ての首がのたうち回る。

 「くっくっくっ、良くも散々痛め付けてくれたな! 踊れ、笑え、契約せし殺戮人形。 俺の手に持つ魔剣にその刃を宿せ。 痛み、傷み、苦痛の限りを味わせろ! 殺戮人形の舞!」

 分裂したセムネイルの背後に半透明の美しい少女の人形が現れ、恍惚の表情で笑みを浮かべていた。

 セムネイルは魔剣を振り、竜王達の首を全て叩き斬る。

 竜王達は身の危険を感じ、咄嗟に土魔法と水魔法の複合魔法である金剛体を使ったがまるで豆腐を切るかのようにスルリと首が飛んだ。

 そして、魔剣デザイアに宿った死闇刃しあんじんの力により斬られた竜王達の首が再生される事は無かった。

 死闇刃に斬られた者に死の安寧が訪れるのは朝を迎えた時のみだが、竜王達はその朝を待つ事すら出来ないだろう。

 「「「「「「ギュギギギキギ?! ガギャッ!」」」」」」

 のたうち回る竜王達の首を踏みながら、残った胴体に向けて分裂した最後のセムネイルが向かう。

 4次元から刀を取り出し、詠唱を終えた。

 「俺と契約せし刀馬鹿! 神剣流派でこのデカブツをバラバラにしろ! 神剣流奥義、霧散斬り!」

 刀を構え飛び掛かったセムネイルの背後に長い黒髪を後ろで結び、はだけた布の服から鍛え上げられた筋肉を出した半透明のリュウマが現れ巨大な獲物を見て獰猛な笑みを浮かべる。

 そして、分裂したセムネイルの持つ刀に神剣の力が宿りオリハルコン製の剣以上の切れ味を持った剣撃が竜王達の胴体を微塵切りにした。

 「ふぅーー……中々にしんどいなこりゃ。 さて、これでもまだ魔力察知の反応が消えないって事は……まだ居るな」

 分裂体を回収したセムネイルは汗を拭う。

 契約魔法の同時詠唱と云う初の試みは大成功だったが、寧ろ此処までしないと止められない竜王達の首を持つ存在が異常なのだ。

 セムネイルの予想通り、微塵切りとなった胴体の中で何かが蠢き膨らむと同時に長い手がセムネイルへと襲い掛かった。

 「ガラララララララララララ!!!」

 「ちっ! やっぱりまだお前が残ってるよな! 寄生獣ガララ!」

 出てきたのは、腹部に巨大な紅い宝石を埋め込まれた寄生獣ガララであった。
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