【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第203話 タリア達の決意

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 「こっちだぞー!」

 「ほらほら、来い来い来い来いー!」

 翼竜王を倒したタリア達は肉の確保もすべく、ボスエリアの外である空に向かって叫んでいた。

 遠くの空では翼竜達が飛んでいるが、ボスである翼竜王が倒された為か一向に近付こうとしない。

 「いや……タリアは挑発の戦技が使えたよな……?」

 「……あ」

 アヤメの呟きにタリアは思い出したかの様に反応した。

 「「はぁ……、平和ボケですね。 勇者タリアよ」」

 カリンとコリンに冷たい目で見られながら、タリアは戦技を使用する。

 「いや、違うから! いくよ?! 挑発の角笛!」

 勇者専用戦技である挑発の角笛を使用すると、あれだけ警戒していた翼竜達は一斉にタリアだけに向かって飛んできた。

 翼竜王程ではなくとも、巨体が40以上も向かって来るのは中々に心臓に悪い光景だ。

 「ぎゃー! アヤメ、殺るよ!!」

 「はぁ……いや、あのさ。 セムネイル様に出会う前の、使命の為に! 民の為に! だって私は勇者何だから! っていうタリアより、絶対に今の方が良いんだけど……人ってこんなに変わるんだね~」

 以前は、人見知りで言葉使いも勇者らしかった。

 それが今や、愛し愛され変わり果てた勇者タリアを改めて見たアヤメはため息を吐く。

 「以前なら、あんな全力で挑発して全員を誘き寄せるなんてミスは無かったから」

 「やっぱり、平和ボケね」

 「いや、アヤメ達も大概だと思うんだけどー?! ほら、早く構えて! ごめんってばー!」

 挑発された翼竜達はタリアしか見えておらず、全ての攻撃がタリアに向かう。

 しかし、タリアは飛んでくる風の刃を難なく大剣で捌き切っておりセムネイルの言う通りタリア達は尋常じゃない程に強くなっていた。

 「はいはい、カリンコリンお願い」

 「「分かりました。 早く終えてセムネイル様達に合流しましょう」」

 ようやくアヤメ達が参戦し、ものの数十分で全ての翼竜を倒したのであった。

 ◆◇◆

 「セムネイル様ー! 全部倒せましたー!」

 タリアは上機嫌で竜の果実を集めていたセムネイルの下へと走る。

 「お、早かったな。 よし、セリス。 これぐらいにするか」

 「はい、貴方様。 かなり集まったので、当分は大丈夫でしょう」

 見渡す限り全て回収し終えたセムネイルは、タリア達が倒した翼竜の回収に向かう。

 「あ、あの……セムネイル様」

 すると、歩きながらタリアが何やら気まずそうに口を開く。

 「ん? どうした、タリア」

 「私達、本当に凄く強くなってました」

 「おう、知ってるぞ」

 「……ありがとうございます」

 改めてお礼を言うタリアの頭をセムネイルは撫でながら歩く。

 「礼は不要だ。 4人共、俺の大切な妻達だからな」

 「……えへへ」

 「くっくっくっ、タリアは可愛いな」

 「ふふ、タリアさん顔が真っ赤ですよ」

 嬉しそうに笑うタリアを見て、セムネイルとセリスは微笑む。

 しかし、タリアは真剣な表情になり本当に話したかった事を口にする。

 「後、その……実は、アヤメ達と話し合いまして」

 「……ん?」

 「ハヤと同じ様に、夜以外は冒険者として4次元の外に行っても良いでしょうか……」

 タリアの切り出した話しにセムネイルは首を傾げる。 

 セリスは何かを察し、黙って後ろに下がった。 邪魔をすべきでは無いと判断したのだろう。

 「それは……何故だ?」

 「私は……勇者です。 望んでなった訳ではありません」

 「そうだな」

 「それでも、魔物に襲われた村や町を助けたり……力の無い人々を救う事だけは誇りに思っていました」

 セムネイルは黙ってタリアの言葉を待つ。

 「前は上級の魔物相手にするのにも命がけだったのが、今の私達は竜すら楽に倒せる力をセムネイル様から貰えました」

 「……そうだな」

 「だから、欲が出てしまいました。 今も、魔物に苦しめられている人々がこの世界には居ます。 きっと、セムネイル様が出会った人々は救われるでしょうが……他の場所に居る人々は救われません。 だから……魔王の使徒として、様々な場所に赴きたいのです」

 セムネイルは既に理解している。

 隣に立つ女勇者タリアは決意したのだ。 手にした力を確認した今、救える命が増えたなら救う為に旅に出ると。

 「それは……アヤメ達も賛成なんだな?」

 「……はい」

 セムネイルは思い悩む。

 確かに、タリア達は強くなっている。 今の世界基準の上級に値する魔物はどれも最早敵では無い。

 しかし、もし魔神や神に襲われたら。 もし、魔族や魔王に襲われたら。 

 そんな不安がセムネイルの胸を襲う。

 ハヤとは違い、街の近くの依頼を受ける訳では無い。 もし、夜になってもタリア達が4次元に帰って来ない事態になってもセムネイルは直ぐに助けには行けれないのだ。

 妻達の安全を最優先に考えるなら、許可する訳にはいかない。

 だが、力無き人々を救いたいというタリア達の想いを無下にして良いのかも判断出来なかった。

 「……幾つか条件を出す。 先ず、今の装備はまだ貧弱過ぎる。 このダンジョンでタリア達に渡せる装備をリセマラで手に入れておくから、それまで待っていてくれ。 それと……必ず夜には4次元の家に帰って来い」

 「それだけ……ですか?」

 「最後のは絶対だからな? じゃないと、世界を滅ぼすぞ? なんたって俺は極悪非道な魔王だからな?」

 冗談めかしたセムネイルの言葉に、タリアは笑う。

 「はい! 必ずセムネイル様の下に帰りますから」

 「なら構わん。 準備が出来たら、行って来い」

 セムネイルは願う。

 自分の手が届かぬ場所で、愛しい妻達に災いが降りかからないことを。
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