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第199話 魔王達の誤算

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 「皆さん、すみません。 一旦撤収しますよ。 内通者からの連絡が来ました」
 
 フードを深く被った者達は、ボブムズ王国王都にある高い建物の屋上でとある依頼を遂行しようとしていた。 

 「あん? おいシャドー、彼奴等が王城に着く前に殺す話じゃ無かったのか??」

 「はぁ……パッションさん。 何時も言っているでしょう? 内通者からの連絡が何よりも最優先されると。 兎に角、用意されている屋敷に撤退しますよ。 早く影に入って下さい」

 残りの3人もシャドーの下に集まり、真っ黒な影の中へと溶け込んでいった。

 ◆◇◆

 「到着です。 私は連絡内容の解読をしてきますので、皆さんはお好きにしていて下さい」

 シャドーはフードを外し、紫色の長髪を掻き上げる。 そして、魔道具を触りながら屋敷の部屋から出て行った。

 「ちぇっ! 暴れられると思ったのになー! やれやれ、影の魔王は直ぐに優先が優先が~って、情熱が足りないね~」

 パッションもフードを外し、赤髪をボリボリを掻きながらボヤく。 服を脱ぎ散らかし、野性味あふれる引き締まった身体を曝け出し全裸で柔軟を始めた。

 「こ、これパッション! まだ部屋にはラビンとジェノも居るのじゃ。 はしたない事は止めるのじゃ!」

 「なはは! セイントは細かい事を気にするよな! 2人を見ろよ、全く気にしてねぇぞ?」

 金髪の美しい美女セイントは顔を真っ赤にして止めるが、パッションは笑いながら柔軟を止める気配は無い。

 「うん、パッションの裸には全く興味無いから」

 「いや、お主滅茶苦茶見とるじゃろ! ダメじゃパッション! ラビン、お主の裸に興味津々じゃぞ!!」

 少年の様な見た目のラビンは、目元まで伸びた茶髪の隙間からパッションの裸をガン見していた。 そんなラビンにセイントがツッコミを入れる。

 「がはははは! やはりお主達は面白いのう。 神魔大戦で数多の神を暗殺した影の魔王に、多くの魔族を率いた情熱の魔王。 戦いに死にゆく魔族達を癒した聖女の魔王。 そして、ダンジョンを自在に操る迷宮の魔王……うむ、同志として不安要素ばかりだが、我は今日も愉快愉快! がははははは!」

 筋骨隆々で肌が浅黒い丸坊主の大男、ジェノは豪快に笑った。 丸坊主のせいで、他の魔王達より頭に生えている2本の角が目立っている。

 「はぁ……何を言っておるのじゃ。 不安要素が一番大きいのはお主じゃろうに。 虐殺の魔王ジェノよ」

 「んん? おいおい、アスモ様にお仕えしてからは敵味方問わずに殺すのはちゃんと我は止めたぞ?」

 ジェノの悪びれない様子にセイントはため息を吐いた。

 「はぁ……もう良いのじゃ。 それより、パッションさっさと服を……」

 「そう、上手じゃないかラビン♡ 其処を丁寧に舐めると女は悦ぶんだよ♡ あんっ♡」

 セイントが振り返ると、パッションが股を開き其処にラビンが鼻息荒くピチャピチャと舐めていた。

 ラビンの荒い舌使いにパッションも息を荒くし、気持ちよさそうに喘ぐ。

 「こ、こりゃーーー! お主ら何をしておるのじゃ!! ラビン、お主にはまだ早い! 早くパッションから離れるのじゃー!」

 「ぷはぁっ! セイント、僕も一応三千歳何だけど?」   

 セイントに無理矢理引き剥がされたラビンは不満気に頬を膨らます。

 「じゃが、その見た目でアウトじゃろ! ダメじゃダメじゃ! それにパッション! 同志を誑かすでない!」

 「あはは~ごめんごめん! 最近、情熱的に抱かれて無いからさ。 溜まってて……てへ」

 「てへじゃなかろうがー!」

 ぷりぷりと怒るセイントや他の同志達の寸劇をジェノは大笑いしながら見物するのであった。

 ◆◇◆

 「すみません、遅くなりました。 最悪の事態です……? 何故、パッションさんは裸なのですか? 遂に脳みそまで筋肉になったのです?」

 暫く時間が経ち、ようやくシャドーが帰って来た。

 「おう、シャドーお帰り~」

 「何故かセイントに説教されてる。 僕は何も悪く無いのに」

 セイントがパッションとラビンを土下座させ、クドクドと説教をしている場面を見てシャドーは頭が痛くなるのを感じた。

 「うるさいのじゃ! それで、影の。 何が最悪の事態なのじゃ?」  

 「はぁ……まぁ、いいです。 先のアスモ様からの任務で実験したダンジョンにセムネイルが魔剣の魔王グラを連れて潜りました」

 シャドーの報告に魔王達は目を点にさせ驚く。

 「「「……は?」」」 「がははは! そりゃ、ヤバいな」

 「内通者リボンの報告によると、未発見だったと聞いていたあのダンジョンをギルドマスターが把握しておりセムネイルに攻略を依頼してしまったそうです」

 「何てタイミングだい。 内通者のリボンは止めれなかったのかい? 確か、あの街の冒険者ギルドで受付嬢してただろ」

 全裸のパッションに問われたシャドーは目を逸らしながら答える。

 「我々の実験結果を聞いていたリボンは、愚かにも実験体でセムネイルを亡き者にしようと止めなかった様ですね……馬鹿が」

 魔道具を持つ手に力が入り、シャドーの全身から闇の靄が溢れ出した。

 「シャドー、落ち着いて。 溢れてるよ」

 「は!? ……失礼しました。 そして、既に一階層の失敗作の地竜王は殺されたのかリボンに託した魔石指輪が1つ砕けたそうです」

 怒りを鎮めたシャドーからは闇の靄は消え失せ、部屋に広がっていた死の気配も消えた。

 「おぉ! アレを屠るとは、やはり最強の魔王は違うな! がははははは!!」

 ジェノは嬉しそうに笑い、セイントは冷や汗を掻く。

 「あの暴走した地竜王は、不意を突かれれば我等でも危うい筈じゃろ? それ以上に恐ろしいのは、あの魔石を造りしアスモ様じゃが……」

 「そうですね。 我等ですら扱えきれぬ物ですから。 まぁ、あのセムネイルなら倒すでしょう。 そして、もっと最悪な事態ですが……万が一、魔石を回収されるとセムネイルがアスモ様の計画に勘づくかもしれません」

 シャドーの言葉にパッション達は凍り付き、ジェノすら冷や汗を流す。

 魔王達の誤算により、世界の運命が今大きく変わろうとしていた。
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