【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第196話 火竜王の御前

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 「喰らえ、魔剣デザイア!!」

 セムネイルはナイフの様にズラリと並んだ火竜の大口を避け、そのまま魔剣に首から上を喰わせた。

 「ガフォォォ………」

 火竜の巨体が音を立てて岩場に倒れ、地鳴りが起きる。

 「よし、これで火竜は全部狩れたな」

 最初の一体目を狩ってから、セムネイル達は三階層に居た十体全てを倒していた。

 「貴方様、そろそろ情熱の加護をかけ直し致しますね」

 「おう、頼むよセリス」

 妻達と協力して倒した火竜を4次元に収納し、セリスが魔法を唱える。

 「ふ~……流石に鱗には私の矢は通りませんでした」

 「疲れたなー。 動き早いし、セムネイルに貰った大剣でも刃が通らない所があったぞー?」

 「ふふ、それはねノラちゃん。 狙う所が鱗も筋肉も分厚い所を狙ってるからよ? その漆黒の大剣はヒヒイロカネで造られてるから、使い手次第では神や魔神を斬れるからね。 良い? 先ず狙うべきなのは」

 リンは弓の手入れをしながら一息つき、ノラは背丈より大きな大剣を軽々と持ち上げ首を傾げていた。

 其処に、魔剣の魔王にして魔剣の達人グラがノラにアドバイスを始める。

 その光景をセムネイルは眺めながら、最後の気配に集中していた。

 (そうか、長生きすると竜はそれだけ龍に近付くのか。 くっくっくっ、大昔は生まれたら直ぐに死んでたから調べようが無かったからな……アイツが知ったら大喜びするだろうに)

 三階層ボスの火竜王が途轍もない強さの魔力を放っており、それはセムネイルの知っている龍にすら近付いていたのだ。

 不敵に微笑みながら、大昔セムネイルの国で魔物を飼育し使役していた友の事を思い出していた。

 ◆◇◆

 「さて、すまんがセリス達は一旦4次元に帰っててくれるか?」

 火竜王が探知出来ない距離で、セムネイルは4次元の扉を出しセリス達を帰そうとしていた。

 「あのセムネイル様! 火竜は最初以外は問題無く狩れました。 ボスも皆で戦った方が良いんじゃないでしょうか」

 リンの提案をセリスが止める。

 「リン、ダメよ。 貴方様の判断は間違ってない。 魔力の強さが、火竜よりも遥かに上なの。 最悪、私達が足手まといになって貴方様を危険に晒すことになる」

 「そ、そうでしたか……すみませんセムネイル様」

 頭を下げるリンを優しくセムネイルは撫でる。

 「ありがとう、リン。 だが、俺がちょっと心配性なだけだ。 直ぐにセリスやリン達だけで狩れる様になるさ」

 リンは少し落ち込みながらも、セムネイルの優しさに微笑む。

 「くんくん……そうだな。 俺達には無理だぞ。 匂いが凄く嫌な匂いだ。 行ったら……多分、俺とリンは直ぐに死ぬぞ」

 ノラも匂いを嗅ぎ、冷静な判断が出来ていた。

 「お~、ノラちゃん偉いね。 よし、じゃあ私とセムネイルでぱぱっと倒してくるから先に帰って待ってて~」

 「そうだな。 なぁに、直ぐに戻る。 そうしたら、オヤツにしよう」

 「ふふ、ではローズ姉様達と何か作ってますね」

 セリスはリンとノラを連れて4次元の扉を潜り、見送ったセムネイルは扉を消した。

 「行くか」

 「うん、いや~父より強い魔力だけど大丈夫なの? まだ、力を完全に取り戻して無いでしょ?」

 「ん? そうだな、半分って所か。 だが、負けはしない。 俺の妻にして、最強の魔剣使いが此処に居るからな」

 セムネイルはニヤリと笑い、照れるグラを連れてボスエリアへと進んだ。

 ◆◇◆

 ボスエリアの周囲は溶岩で囲まれており、中央の真っ黒な岩場の広場にソレは居た。

 火竜よりも身体は小さく、迫力が無いように見えるがそれは見た目だけだ。

 太くはち切れんばかりの筋肉が凝縮され、細い腕となり。 分厚い鱗も凄まじい密度で立ち並びオリハルコンですら斬れそうに無い。

 顔も首も細く、全体的に痩せ細っていた。

 しかし、セムネイルにもグラにも目の前の火竜王は通常とは比べ物にならない程に強いと魔力察知で見抜いている。

 「火竜っていうより、こりゃもう火龍だな」

 「そうね、見た目も似てる。 まぁ……随分昔に死んだけどね」

 セムネイルは魔剣デザイアを手に持ち、グラも二本の魔剣を肩に担ぐ。

 2人は火竜王から放たれるプレッシャーに一切怯む事なく進み続け、目の前にやって来た。

 その間、火竜王は岩場で横になったまま近付く2人をじろりと睨んでいる。

 何やら訝しげな顔でセムネイルとグラを睨みつけ、口から吐息のように小さな火を吹くとゆっくり立ち上がった。

 「ガフルルルル……サテ、王ヲ前ニ頭ガ高イナ。 ホレ、頭ヲ下ゲ王ニ平伏スルチャンスヲヤロウ」

 まさか喋るとは思っていなかったセムネイルとグラは笑う。

 「くっくっくっ、おい聞いたかグラ。 最近のトカゲは喋るらしいぞ」

 「ぷぷっ、ダメだよセムネイル。 ほら、王様に頭を下げなきゃ~。 はは~~~って? 馬鹿じゃないの」

 火竜王は2人の言葉を理解しているようで、瞬時に憤怒の顔に変わる。

 「ガフォォォォ! 痴レ者メ! 偉大ナル火竜王デアル我ヲトカゲダト?! 何様ダァァァァァァァ!!」

 口から炎を噴き出し怒り狂った。 だが、そんな火竜王に対しセムネイル達は武器を向けニヤリと笑う。

 「「魔王様だよ!!」」

 こうして、三階層のボス火竜王との戦いの火蓋が切られた。
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