【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第190話 翼竜王の卵と竜の果実

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 「グラ……ダンジョンに縛られる魔物が卵を産むって聞いたことあるか?」

 「ん~、無いね。 でも、神魔大戦でダンジョンを管理してた魔神も魔王も死んで居ないならイレギュラーが起こっても不思議じゃないかも。 あ、これ宝箱の中身ね」

 「お、すまん。 珍しいな……竜玉のネックレスか。 効果はまた調べるとして……コレをどうしたもんか」

 セムネイルとグラは巣に残された大きな卵を見つめ話し合っていた。

 リンとグラはセムネイルに頼まれ、竜の果実を集めに行っている。

 「貴方様、この卵……恐らく産み落とされたばかりです。 凄まじい魔力が込められていますね……」

 セリスは卵に触れて分析を行っており、セムネイルはセリスの言葉に納得する。

 「だからか。 翼竜王は魔法を使わなかったんじゃない、使えなかったんだ」

 「卵を産む為に全部使い切ってたのね……少し気の毒な事をしたわね」

 「だとしても、ノラが危険だったので致し方ないですよ。 でも……ごめんなさい」

 グラとセリスは雌であろう翼竜王に少し同情し、卵を優しく撫でた。 それを見ているセムネイルは悩む。

 もし仮に、親を殺した責任を感じて卵を持って帰れば4次元に魔物を連れ込む事になるのだ。

 それはどの様な結果になるかは既に大昔に経験しており、4次元の主である立場からすると見て見ぬ振りをするべきなのだが……セムネイルは妻達に甘い。

 「なら、持って帰って世話をしよう。 孵化うかした時に、俺達の誰かを見れば襲ったりはしない筈だ」

 「貴方様……よろしいのですか?」

 セリスの笑顔にセムネイルは苦笑する。

 「勿論だ。 それと……翼竜王だけは食わずにおくか」

 セムネイルは4次元から翼竜王の死骸を取り出し、岩場へと寝かせた。 明日にはリスポーンするのだ。 こんな事に意味は無いが、セリスは嬉しそうであった。

 「貴方様……ありがとうございます」

 母としての憧れか、親無き卵への同情か、それとも女としての本能か。 どれかは分からないが、セムネイルにとっては妻達が何よりも優先される。

 当然、他の翼竜は食うし、そもそも殺した者がこんな事をするのは偽善かもしれない。 それでも、妻の心が少しでも晴れるなら構わないのだ。 

 「ふ~ん、セムネイル……優しいじゃん」

 「ん? ……まぁな。 さて、じゃあ卵は一旦4次元に仕舞うぞ? 家に帰ったら世話の方法を教えてやるからな」

 「貴方様は竜の卵の世話をした事があるのですか?」

 卵を回収していたセムネイルは一瞬固まり、また直ぐに動き出した。 その横顔は何処か寂しげで、悲しそうでもあった。

 「大昔に……ちょっとな。 よし、リン! ノラー! 集まったかー?」

 「はーい!」 「おう! 此処に積んであるぞー!」

 巣の向こう側ではリンとノラが赤くて大きな果実を山の様に積んでいた。

 「流石だな。 じゃあ、全部回収したら三階層に上がって帰るか~」

 「「はい!」」 「おー!」 「あ~、お腹減った~」

 こうしてセムネイル達は出現した三階層の階段を上がるのであった。

 ◆◇◆

 「うっひょーーー! セムネイル様、私一生付いて行きますからねー!!」

 キュイジーヌのレストランでは、昨日に続き大興奮のキュイジーヌが中央に出された翼竜に頬ずりをしていた。

 今日は果実もあるということで、エルフのプレーリー達も居るのだが翼竜の大きさと興奮するキュイジーヌにドン引きである。

 「分かったから、翼竜の唐揚げを頼むぞ」

 「まっかせてー! お手伝いさん達~? お願いね~」

  「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 キュイジーヌが呼ぶと、厨房から肉食獣人のライ達がコックコートを着て出て来た。

 「お? どうしたんだ、ライ。 それに、他の肉食獣人達も。 コックコートが似合ってるじゃないか」

 「本当かセムネイル様! えへへ……実は地竜のステーキ食べた時に感動してさ。 だから、キュイジーヌに美味い料理を作れるようになりたいって言ったらコレ渡されたんだ」

 野性的なライ達がコックコートを身に纏うとギャップからか、何時も以上に可愛く見える。

 「そうか、まぁ訓練ばかりも毒だからな。 色々してみるといい。 それに自分で料理を作れるようになりたいって気持ちはとっても素敵だぞ」

 セムネイルに褒められ、ライ達は顔を真っ赤にして照れる。

 「え、い、いやぁ……えへへ。 そのさ、俺達全員……セムネイル様に美味い料理作ってあげたいんだ。 ほら……その……いつか俺達を貰ってくれるんだろ? だから頑張るんだ!」

 ライ達は気合を入れて、キュイジーヌの切り分けた食材を運び始めた。 

 その後ろでは、プレーリー達が長耳をピクピクと痙攣させ恐ろしい顔をしていたが、直ぐに隣のオルガに小突かれた。

 「プレーリー、昨日の夜に言ったでしょ? ちゃんと数に私達も入ってるから我慢しなさい」

 「うー……でもでも! ずるいですわー!」

 「はぁ……プレーリー? 言っておくけど、エルフ族の代表もして亜人族の代表もしている貴女はそれを言える立場なの?」

 オルガに図星を突かれたプレーリーはいきり立つ長耳をしおらせ席に項垂れた。

 「ごめんなさい……オルガさんの言う通りですわ。 セムネイル様のお役に立つのは料理だけでは無いですものね」

 「その通り……あ、セムネイル様!」

 「くっくっくっ、2人は仲が良いんだな」

 セムネイルはプレーリー達の席に近付き、テーブルの上に竜の果実を取り出した。

 「セムネイル様!? し、失礼致しました……あら? この大きな果実は……何て良い香り」

 「おう、切るともっと香るぞ? プレーリー、それに他の皆も昨日はすまなかったな。 肉を食えないプレーリー達を除け者にするつもりは無かったんだ……許してくれ」

 セムネイルの謝罪にプレーリー達は立ち上がり、必死に顔を横に振る。

 「と、とととととんでもございませんわ! セムネイル様のお気持ちだけで、私達は胸いっぱいでございます!」

 プレーリーの言葉に、他のエルフ達も顔を立て振る。

 言える筈が無い。

 昨日の夜、肉の宴が開かれている隙に農場エリアで敬愛するセムネイルの男根を模したオトコノキノコの栽培をしていた等と。

 「そうか、ありがとう。 よっと、ほら良い香りだろ? 竜の果実はそのまま食うのも美味いんだ」

 セムネイルはプレーリー達が気にしていない事を知り、胸を撫で下ろした。 そして、オリハルコンのナイフで竜の果実を切り分けプレーリーに手渡す。

 「す、凄いですわ……こんなに良い香りの果実は初めてです。 戴きます……あむ?! 美味しいぃですわぁぁぁぁ!」

 プレーリーは香りを楽しんだ後に、真っ赤な実を口にする。

 直後、プレーリーの口の中には様々な旨味が溢れ出し、消える様な柔らかさの果肉を飲み込むと席を立ち上がって叫んだ。
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