【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第174話 ソルバと不穏

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 「おはよう、ギルマスは居るか?」

 「おはようございます、直ぐに呼んで参りますので少々お待ち下さい」

 セムネイルは朝を迎え、妻達に一時の別れを告げた後、魔王の花束のメンバーとハヤを連れて冒険者ギルドを訪れていた。

 受付嬢のリポンは、ギルドマスターソルバを呼びに席を立った。

 「あ、あの……セムネイル様。 兄上や仲間の皆を探しに行ってきても良いですか?」

 「ん? 当たり前だろハヤ。 別に俺の妻になったらずっと4次元に居ないといけない訳じゃないんだソクド達の所に行ってこい。 もし、4次元に帰る時は指輪を使うんだぞ?」

 ハヤはセムネイルに頭を撫でられ、耳まで赤く染める。

 「ひゃ、ひゃい……ありがとうございます。 じゃあ、行ってきます。 セムネイル様達もダンジョン攻略気を付けて下さいね」

 「勿論だ。 夜には4次元の家に戻るから、またその時にな」

 「くー! ハヤちゃんはとっても可愛いですね。 でも、良いですか? 何か有れば直ぐに4次元に逃げるんですよ?」

 「ハヤさん、明日の朝は一緒に朝ご飯作りましょうね」

 「おう! ハヤまたな! 晩飯に竜の肉が食えるから楽しみにしてろよー!」

 「そうね、竜の肉を食べたら他の肉は食べれないぐらい美味しいから楽しみに待ってて」

 ハヤはセムネイル達に見送られ、ソクド達を探しに出掛けた。

 周囲の冒険者達がノラとグラの発言に驚き、椅子から転げ落ちていたがセムネイル達は気にも止めなかった。

 冒険者達が驚くのも無理はなく。 竜は魔物の頂点にして最強の魔物だ。 一匹の竜が街に現れ、一晩で壊滅等よくある話しとして有名である。 それ故に、竜を狩れる者は英雄として語られる。 素材も全て希少で、肉を目的に狩る魔物では無い筈なのだ。

 「ほっほっほっほ、すまん待たせたの」

 ようやくギルドマスターソルバが現れ、カウンターの上にずっしりとした皮袋を置いた。

 「構わん。 それは……買い取りの代金か?」

 「そうじゃ。 と言っても……セムネイル殿が来た時に不躾な冒険者達を殺してしもうたじゃろ? やはり、衛兵の方で問題になりかけての。 解決する為に、幾らか金貨を使わせてもらっておる。 残っているのが金貨250枚じゃな」

 セムネイルからすると大した金額では無いが、様子を窺っていた冒険者達からは驚きの声が上がる。

 「そうか、すまん助かった。 それと、ソルバに伝えていなかった事がある。 実は……奴隷市場で、ジェイソン達を助けて匿っている。 本人達の意向で、俺のとある拠点にいるんだが問題無いか?」

 「何と! そうか……生きておったか。 いやはや、セムネイル殿には感謝してもしきれんのぉ。 勿論、問題等無い。 そうか……奴隷市場に囚われておったのか。 ギルドマスターとして不甲斐ないのぅ。 奴隷等という制度をあの時止められなかった儂の罪か……」

 ソルバは歯を食いしばり、怒りをあらわにする。

 どうやら、ソルバの過去には奴隷制度に対する確執があるようだ。 そして、勘の良いソルバは気付く。

 「ん? ならば、本当に奴隷市場を壊滅させたのは……」

 ソルバの言葉を制止させる様に、セムネイルは頼み事を被せた。

 「ソルバ、この代金はお前に預ける。 もし、お前に衛兵を使う権力があるのならば、この代金は奴隷市場を再建させない為に使ってくれ」

 セムネイルはソルバが奴隷制度を憎んでいると判断し、代金の入った皮袋を手渡した。

 「ほっほっほっほ……これは、信頼に応えねばなりませんな。 必ずや、お約束しましょう。 二度とこの街に奴隷を扱うクズ共を蔓延らせたりしませぬ」

 「ふっ、頼むぞ。 それと、今日から竜の洞窟攻略に入る。 地図をくれるか? 実は竜の肉を大量に確保しないといけないんだ」

 「ほっ! 竜を食用肉と同じ扱いですか……。 ぜひ、一度儂も食べてみたいものですな。 地図は此方ですじゃ。 入口は秘匿させておりますので、近付けばセムネイル殿なら分かるかと」

 セムネイルは地図を受け取り広げる。

 「了解だ。 それと、ソルバの仲間が使っていたらしき装備や武器があれば回収するからその時は確認を頼む。 じゃあな」

 セリス達はソルバに会釈し、セムネイルに続いて冒険者ギルドを出て行った。

 「ギルマス、大丈夫ですか?」

 心配そうなリポンがソルバに話し掛けると、ソルバは静かに涙を流していた。

 「ほっ! すまんすまん、この年になると涙もろくていかんな。 ほっほっほっほ……アレが極悪非道な魔王じゃと? 何処がじゃ……」

 危険な筈のダンジョンで冒険者の形見を探す。 これは本来ご法度な行為だ。

 何故なら、そんな事をダンジョンでしていたら探している本人も骸の仲間入りを果たすからである。

 しかし、セムネイルからすると、ついでの事であり全く負担にもならないのだが長年冒険者をしていたソルバは嬉しさで涙を流した。

 「さて、儂もやるべき事をやらねばな。 リポン、儂はちと衛兵の詰所に行ってくる。 後は頼むぞ」

 「はい、勿論ですギルマス。 ギルドの業務はお任せ下さい」

 ソルバが去った後、残された受付嬢リポンは薄く紅く光った目で不敵に笑う。

 「ふふ……馬鹿ね。 今竜の洞窟に行けば、流石の最強最悪の魔王でも生きては帰れないでしょうに」

 しかし、クエストを受けに来た冒険者が近づくと目の色は元に戻り何時ものリポンに戻るのであった。
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