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第161話 和解と訓練
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「おーっす、来たぞ~」
「あ! セムネイル様! おはようだー! 来てくれて嬉しいー!」
セムネイルがカリンとコリンを連れてコロシアムを訪れると、朝から案山子相手に訓練をしているライ達の姿があった。
「おう、おはようライ。 他の皆も朝から精が出るな」
「「「「「「「おはようございますセムネイル様!」」」」」」」
「お、おう……おはよう」
21人の肉食獣人の娘達は訓練の手を止め、セムネイルに一斉に敬意を示す。 どうやら、昨晩の事で牙を圧し折られた娘達はセムネイルに絶対の忠誠心を植え付けられたようだ。
「「皆さん、おはようございます」」
セムネイルの左右にカリンとコリンが立ち、微笑みながら挨拶をする。 肉食獣人の娘達は顔を曇らせ、ライは怖怖としながら2人の下に赴いた。
「あ! その……あの、昨日は……本当にごめんよ」
そして頭を下げると、カリンとコリンはライを優しく抱きしめる。
「「苦しかったですね、辛かったですね。 皆さんは神よりも素晴らしきお方の庇護下に置かれました。 これから先は決して皆さんがあったような目には絶対にあいません。 安心して下さい」」
慈愛に満ちた2人のシスターに抱きしめられたライは涙を流し、後ろで聞いていたセムネイルは苦笑いを浮かべる。
(いや……だから、俺は神じゃないんだがな)
「ぐすっ……ありがとう。 でも、俺達強くなるんだ! 肉食獣人として、守ってられるだけは性に合わない! だから、セムネイル様に住まわせてもらえた此処で沢山訓練する!」
「良いですね。 ライさん達なら、誇りある生き方が出来ます」
「そうね、カリン。 私達も負けてられないわね」
セムネイルは少し心配していたが、どうやら昨晩の確執も無く仲良くなれそうだと安堵する。
「ふぅ……まぁ、訓練は必ず結界の中でな? そうだ、案山子相手も良いが……動く相手の方が訓練になるだろ」
「そうだけど……セムネイル様が俺達同士で戦うのは無しだって言ってただろ? そもそも何でなんだ?」
セムネイルがコロシアムの中央に歩き出したのをライは付いて行きながら問いかけた。 すると、セムネイルは少しそっぽを向きながら答える。
「……俺がライ達が攻撃合うのを見たくないからだ」
「ははっ、カリンちゃんとコリンちゃんがセムネイル様にぞっこんな理由が分かったな。 えへへ……嬉しい」
ライが嬉しそうに笑うのを聞きながらセムネイルはコロシアムの中央に手をかざす。
「相手は人間の大きさが良いだろう。 強さは……先ずは鉄からだな。 狭間の魔王が命じる、人形よ踊れ、鉄よ助けよ、我が命を聞き動き出せ! 創造の人形!」
セムネイルが権能を使うと、目の前に大人程の背丈の鉄ゴーレムが現れお辞儀をする。
「うぇぇぇぇ?! 何だ、コレ!」
「これはゴーレムだ。 俺の戦闘技術を一通り読み込んである。 どんな訓練がしたいか伝えれば、その要望に沿った動きをしてくれるぞ」
「「流石です、セムネイル様」」
2人の妻から褒められ、セムネイルは自慢気に胸を張る。
「くっくっくっ、どれ手本を見せてやる。 鉄ゴーレム、素手での接近戦訓練を開始しろ」
セムネイルが鉄ゴーレムの目の前で構えると、鉄ゴーレムも同じ構えをとった。
次の瞬間、鉄ゴーレムの重い拳がセムネイルに向けて放たれセムネイルはその拳を難なく受け流した。
その後も、間髪入れずに蹴りや関節技を鉄ゴーレムは縦横無尽に繰り出す。
その全てを捌き切ると、鉄ゴーレムは動きを停止し訓練の終了を知らせた。
「「「「「「おぉぉぉ~!」」」」」」
肉食獣人の娘達から拍手が送られ、カリンとコリンもセムネイルを称賛する。
「うむ、まぁ鉄だからこんなもんか。 コロシアムの武器庫に木製から鉄製の武器を保管しているから好きな獲物の訓練をすればいい」
「ふぉぉぉ、すげぇなセムネイル様! でも、こっちが武器を持って訓練するのは卑怯じゃないのか?」
「くっくっくっ、ライは誇り高いな。 だが、心配は無用だ。 見てろ」
鉄ゴーレムの目の前で腰に差している魔剣を抜くと、即座に鉄ゴーレムの片手が剣の形に変形した。
「な? 槍だろうが、大剣だろうが、どんな武器にも変形可能だ」
「えへへ、それ程でも~。 うぉ?! すげぇ! ははははは! これなら訓練し放題だぜ! ありがとうな、セムネイル様!」
「構わん。 但し、何度も言うが訓練は必ずコロシアムの結界で行え。 鉄ゴーレムも万能に見えるが、この結界内でしか動けないからな」
セムネイルはライ達に何度も釘を差す。 正直な所、セムネイルはライ達には誰かを殺す戦いをさせるつもりは毛頭無い。
しかし、彼女達の精神衛生上を考えるとコレが最善だと考えたのだ。
(もう……弱みに漬け込んで抱くやり方は止めないとな)
当の妻達は一切気にしていないのだが、セムネイルはローズを始め精神が弱りきった所を抱いた事で妻達を自分に惚れさせたのでは無いかと自問自答していた。
過去の過ちを繰り返さないようにした結果、新たな過ちを犯しているのでは無いかと己を責めているのだ。
しかし、妻達がそんな事は無くセムネイルの優しさや愛に惚れたのをセムネイル自身が知るのはまだ先の事である。
「あ! セムネイル様! おはようだー! 来てくれて嬉しいー!」
セムネイルがカリンとコリンを連れてコロシアムを訪れると、朝から案山子相手に訓練をしているライ達の姿があった。
「おう、おはようライ。 他の皆も朝から精が出るな」
「「「「「「「おはようございますセムネイル様!」」」」」」」
「お、おう……おはよう」
21人の肉食獣人の娘達は訓練の手を止め、セムネイルに一斉に敬意を示す。 どうやら、昨晩の事で牙を圧し折られた娘達はセムネイルに絶対の忠誠心を植え付けられたようだ。
「「皆さん、おはようございます」」
セムネイルの左右にカリンとコリンが立ち、微笑みながら挨拶をする。 肉食獣人の娘達は顔を曇らせ、ライは怖怖としながら2人の下に赴いた。
「あ! その……あの、昨日は……本当にごめんよ」
そして頭を下げると、カリンとコリンはライを優しく抱きしめる。
「「苦しかったですね、辛かったですね。 皆さんは神よりも素晴らしきお方の庇護下に置かれました。 これから先は決して皆さんがあったような目には絶対にあいません。 安心して下さい」」
慈愛に満ちた2人のシスターに抱きしめられたライは涙を流し、後ろで聞いていたセムネイルは苦笑いを浮かべる。
(いや……だから、俺は神じゃないんだがな)
「ぐすっ……ありがとう。 でも、俺達強くなるんだ! 肉食獣人として、守ってられるだけは性に合わない! だから、セムネイル様に住まわせてもらえた此処で沢山訓練する!」
「良いですね。 ライさん達なら、誇りある生き方が出来ます」
「そうね、カリン。 私達も負けてられないわね」
セムネイルは少し心配していたが、どうやら昨晩の確執も無く仲良くなれそうだと安堵する。
「ふぅ……まぁ、訓練は必ず結界の中でな? そうだ、案山子相手も良いが……動く相手の方が訓練になるだろ」
「そうだけど……セムネイル様が俺達同士で戦うのは無しだって言ってただろ? そもそも何でなんだ?」
セムネイルがコロシアムの中央に歩き出したのをライは付いて行きながら問いかけた。 すると、セムネイルは少しそっぽを向きながら答える。
「……俺がライ達が攻撃合うのを見たくないからだ」
「ははっ、カリンちゃんとコリンちゃんがセムネイル様にぞっこんな理由が分かったな。 えへへ……嬉しい」
ライが嬉しそうに笑うのを聞きながらセムネイルはコロシアムの中央に手をかざす。
「相手は人間の大きさが良いだろう。 強さは……先ずは鉄からだな。 狭間の魔王が命じる、人形よ踊れ、鉄よ助けよ、我が命を聞き動き出せ! 創造の人形!」
セムネイルが権能を使うと、目の前に大人程の背丈の鉄ゴーレムが現れお辞儀をする。
「うぇぇぇぇ?! 何だ、コレ!」
「これはゴーレムだ。 俺の戦闘技術を一通り読み込んである。 どんな訓練がしたいか伝えれば、その要望に沿った動きをしてくれるぞ」
「「流石です、セムネイル様」」
2人の妻から褒められ、セムネイルは自慢気に胸を張る。
「くっくっくっ、どれ手本を見せてやる。 鉄ゴーレム、素手での接近戦訓練を開始しろ」
セムネイルが鉄ゴーレムの目の前で構えると、鉄ゴーレムも同じ構えをとった。
次の瞬間、鉄ゴーレムの重い拳がセムネイルに向けて放たれセムネイルはその拳を難なく受け流した。
その後も、間髪入れずに蹴りや関節技を鉄ゴーレムは縦横無尽に繰り出す。
その全てを捌き切ると、鉄ゴーレムは動きを停止し訓練の終了を知らせた。
「「「「「「おぉぉぉ~!」」」」」」
肉食獣人の娘達から拍手が送られ、カリンとコリンもセムネイルを称賛する。
「うむ、まぁ鉄だからこんなもんか。 コロシアムの武器庫に木製から鉄製の武器を保管しているから好きな獲物の訓練をすればいい」
「ふぉぉぉ、すげぇなセムネイル様! でも、こっちが武器を持って訓練するのは卑怯じゃないのか?」
「くっくっくっ、ライは誇り高いな。 だが、心配は無用だ。 見てろ」
鉄ゴーレムの目の前で腰に差している魔剣を抜くと、即座に鉄ゴーレムの片手が剣の形に変形した。
「な? 槍だろうが、大剣だろうが、どんな武器にも変形可能だ」
「えへへ、それ程でも~。 うぉ?! すげぇ! ははははは! これなら訓練し放題だぜ! ありがとうな、セムネイル様!」
「構わん。 但し、何度も言うが訓練は必ずコロシアムの結界で行え。 鉄ゴーレムも万能に見えるが、この結界内でしか動けないからな」
セムネイルはライ達に何度も釘を差す。 正直な所、セムネイルはライ達には誰かを殺す戦いをさせるつもりは毛頭無い。
しかし、彼女達の精神衛生上を考えるとコレが最善だと考えたのだ。
(もう……弱みに漬け込んで抱くやり方は止めないとな)
当の妻達は一切気にしていないのだが、セムネイルはローズを始め精神が弱りきった所を抱いた事で妻達を自分に惚れさせたのでは無いかと自問自答していた。
過去の過ちを繰り返さないようにした結果、新たな過ちを犯しているのでは無いかと己を責めているのだ。
しかし、妻達がそんな事は無くセムネイルの優しさや愛に惚れたのをセムネイル自身が知るのはまだ先の事である。
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