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第154話 愚かな肉食獣
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「入るぞー? カリン、コリン此処で何をしているんだ?」
平屋に到着したセムネイルは廊下を進みとある部屋を開けた。 其処には何故か隠れていたシスターであり最愛の妻でもあるカリンとコリンが居り、事前に気配察知で知っていたセムネイルは首を傾げる。
「な、何でもないのです……」 「そうです、大丈夫ですから。 セムネイル様」
明らかにセムネイルが到着したと同時に隠れた事を知っているセムネイルは眉をひそめる。
「カリン、コリン。 正直に言ってくれ……何があった」
2人は隠そうとしているが、服の至る所がズタズタに引き裂かれているのが丸見えだ。
「……救出された獣人達がキュイジーヌさんのレストランで今日、喧嘩してたらしいんです。 それで、怪我をしたまま平屋の部屋に戻ったと聞いて、治療しに行ったのですが……」
「その獣人達のボスになった獣人に、お前達はシスターだろう! なら我等の国を滅ぼした聖エオルニア教国の人間だろう! と、怒鳴られまして……治療をしたいだけと伝えたのですが」
「……襲われたんだな」
セムネイルの低い問いに、カリンとコリンは頷く。
「そうか。 服だけがズタズタなのは、自分達で怪我を治療したからだよな? それに、俺に隠そうとした。 何故、その獣人達を庇う」
「私達シスターが無関係では無いからです。 昔、私達がシスターになる前に教国は亜人の大きな国を次々に攻め滅ぼしました」
「彼女達の故郷である、獣人最大の獅子王国を滅ぼしたのは確かに聖エオルニア教国です。 そして、その際に教国の兵士達を治療しサポートしていたのがシスター達なのです」
2人の話にセムネイルはため息を吐く。
「分かった。 ……だが、2人は既に教国から離れている筈だ。 2人が襲われていい理由にはならん。 決めた……そいつ等は追い出そう。 ベアから頼まれた手前、殺すことはせんが……次に何かすれば俺は我慢出来ん」
殺気を放ちながら部屋から出ようとするセムネイルを、カリンとコリンは手を掴んで制止する。
「お待ちくださいセムネイル様!」 「彼女達は悪く有りません! 奴隷にされていたのも、国が滅ぼされたのも、全ては聖エオルニア教国のせいなのです! 私達が非難され、襲われてもそれは致し方無いのです!」
必死に説得され、セムネイルは2人の頭を撫でた。 そして、微笑むと同時に殺気を霧散させる。
「ふぅ……わかったよ。 じゃあ、その獣人達は予定通りにしてみる。 2人はもう家に帰って、夕飯を食べていてくれ。 直ぐに戻るから」
「ありがとうございます、セムネイル様」
「我が儘言ってしまい、申し訳ありません」
カリンとコリンは涙目でセムネイルに抱きつき、セムネイルも優しく抱き返した。
「ふははは! カリンとコリンは俺の大切な妻だからな。 我が儘なら幾らでも言えば良いぞ。 じゃあ、また家でな」
「「はい、今日の夜は沢山ご奉仕させて下さいませ♡」」
セムネイルは2人と別れ、奥の大部屋へと向かった。
◆◇◆
「入るぞ」
セムネイルが大部屋に入ると、其処は悲惨な有り様だった。 壁や床には爪を研いだ跡が残り、布団は見るも無惨に引き千切られていた。
そして、獣人の娘達はこの平屋の主の様に踏ん反り返っていた。 皆、一様に美しく筋肉が整った身体をしている。 肉食獣の獣人らしく、戦いや狩りに向いているのは本当の様だ。
「あん? おい、てめぇ……人間だな?」
大部屋の中央で、傷だらけの獣人を椅子にして座っていた女が立ち上がりセムネイルの目の前に進み出てきた。
「人間じゃないが……こりゃ、弱ったな。 なぁ、外も暗い。 さっさと家に帰って飯を食いたいんだ。 手短にいこう」
立ち上がった女に続いて、他の獣人の娘達もセムネイルを囲む。
「はっ! どう見ても人間だろう? 私は獅子王国のレオン王家の血を引く王族ライだ! 私達は、貴様等人間達に山程恨みがあるんだ! よくも私達の王国を滅ぼしたな! よくも私達を奴隷にして、毎日毎日犯しやがったな! 許せねぇ! 殺してやるよ!」
「……で? わざわざお前達を治療に来た俺の妻達を襲ったんだな?」
セムネイルは笑顔で接するが、内心では必死にキレるのを抑えていた。 そんな事を知る由もないライ達は、セムネイルを弱者であり獲物として捉え煽る。
「ははっ! そうだよ、ズタズタに引き裂いて殺してやった! 今頃、外の廊下で死んでるだろうよ。 私達を助けてくれた、あの恐ろしい鬼人にゃ感謝してるけどね。 てめぇらみたいな人間達は許せねぇ! 肉食獣の獣人のプライドが許さねぇ! 私達の絶望を味わえ人間!」
ライが殺気を放ち鋭利な爪を構えると、他の獣人達も爪や牙を出して臨戦態勢をとる。 唯一、倒れている獣人達やセムネイルに気付いている娘達は距離を取り、魔王の怒りを買わないように賢い選択をとった。
「そうか。 よし、決めた。 獣共、俺が躾けてやるよ。 それから、未来に向けて話そう」
「……はぁ? 何を言ってやがーーおごんっ?!」
奴隷から解放され、それでも故郷を滅ぼされ、犯され、絶望し暴力的になっていた肉食獣人の娘達は口を大きく開けて硬直した。
一番喧嘩が強く、肉食獣人達のボスになったライがセムネイルの張り手一発で大部屋の壁をぶち抜き吹き飛んでいったからである。
「さて、お前達もだ」
平屋に到着したセムネイルは廊下を進みとある部屋を開けた。 其処には何故か隠れていたシスターであり最愛の妻でもあるカリンとコリンが居り、事前に気配察知で知っていたセムネイルは首を傾げる。
「な、何でもないのです……」 「そうです、大丈夫ですから。 セムネイル様」
明らかにセムネイルが到着したと同時に隠れた事を知っているセムネイルは眉をひそめる。
「カリン、コリン。 正直に言ってくれ……何があった」
2人は隠そうとしているが、服の至る所がズタズタに引き裂かれているのが丸見えだ。
「……救出された獣人達がキュイジーヌさんのレストランで今日、喧嘩してたらしいんです。 それで、怪我をしたまま平屋の部屋に戻ったと聞いて、治療しに行ったのですが……」
「その獣人達のボスになった獣人に、お前達はシスターだろう! なら我等の国を滅ぼした聖エオルニア教国の人間だろう! と、怒鳴られまして……治療をしたいだけと伝えたのですが」
「……襲われたんだな」
セムネイルの低い問いに、カリンとコリンは頷く。
「そうか。 服だけがズタズタなのは、自分達で怪我を治療したからだよな? それに、俺に隠そうとした。 何故、その獣人達を庇う」
「私達シスターが無関係では無いからです。 昔、私達がシスターになる前に教国は亜人の大きな国を次々に攻め滅ぼしました」
「彼女達の故郷である、獣人最大の獅子王国を滅ぼしたのは確かに聖エオルニア教国です。 そして、その際に教国の兵士達を治療しサポートしていたのがシスター達なのです」
2人の話にセムネイルはため息を吐く。
「分かった。 ……だが、2人は既に教国から離れている筈だ。 2人が襲われていい理由にはならん。 決めた……そいつ等は追い出そう。 ベアから頼まれた手前、殺すことはせんが……次に何かすれば俺は我慢出来ん」
殺気を放ちながら部屋から出ようとするセムネイルを、カリンとコリンは手を掴んで制止する。
「お待ちくださいセムネイル様!」 「彼女達は悪く有りません! 奴隷にされていたのも、国が滅ぼされたのも、全ては聖エオルニア教国のせいなのです! 私達が非難され、襲われてもそれは致し方無いのです!」
必死に説得され、セムネイルは2人の頭を撫でた。 そして、微笑むと同時に殺気を霧散させる。
「ふぅ……わかったよ。 じゃあ、その獣人達は予定通りにしてみる。 2人はもう家に帰って、夕飯を食べていてくれ。 直ぐに戻るから」
「ありがとうございます、セムネイル様」
「我が儘言ってしまい、申し訳ありません」
カリンとコリンは涙目でセムネイルに抱きつき、セムネイルも優しく抱き返した。
「ふははは! カリンとコリンは俺の大切な妻だからな。 我が儘なら幾らでも言えば良いぞ。 じゃあ、また家でな」
「「はい、今日の夜は沢山ご奉仕させて下さいませ♡」」
セムネイルは2人と別れ、奥の大部屋へと向かった。
◆◇◆
「入るぞ」
セムネイルが大部屋に入ると、其処は悲惨な有り様だった。 壁や床には爪を研いだ跡が残り、布団は見るも無惨に引き千切られていた。
そして、獣人の娘達はこの平屋の主の様に踏ん反り返っていた。 皆、一様に美しく筋肉が整った身体をしている。 肉食獣の獣人らしく、戦いや狩りに向いているのは本当の様だ。
「あん? おい、てめぇ……人間だな?」
大部屋の中央で、傷だらけの獣人を椅子にして座っていた女が立ち上がりセムネイルの目の前に進み出てきた。
「人間じゃないが……こりゃ、弱ったな。 なぁ、外も暗い。 さっさと家に帰って飯を食いたいんだ。 手短にいこう」
立ち上がった女に続いて、他の獣人の娘達もセムネイルを囲む。
「はっ! どう見ても人間だろう? 私は獅子王国のレオン王家の血を引く王族ライだ! 私達は、貴様等人間達に山程恨みがあるんだ! よくも私達の王国を滅ぼしたな! よくも私達を奴隷にして、毎日毎日犯しやがったな! 許せねぇ! 殺してやるよ!」
「……で? わざわざお前達を治療に来た俺の妻達を襲ったんだな?」
セムネイルは笑顔で接するが、内心では必死にキレるのを抑えていた。 そんな事を知る由もないライ達は、セムネイルを弱者であり獲物として捉え煽る。
「ははっ! そうだよ、ズタズタに引き裂いて殺してやった! 今頃、外の廊下で死んでるだろうよ。 私達を助けてくれた、あの恐ろしい鬼人にゃ感謝してるけどね。 てめぇらみたいな人間達は許せねぇ! 肉食獣の獣人のプライドが許さねぇ! 私達の絶望を味わえ人間!」
ライが殺気を放ち鋭利な爪を構えると、他の獣人達も爪や牙を出して臨戦態勢をとる。 唯一、倒れている獣人達やセムネイルに気付いている娘達は距離を取り、魔王の怒りを買わないように賢い選択をとった。
「そうか。 よし、決めた。 獣共、俺が躾けてやるよ。 それから、未来に向けて話そう」
「……はぁ? 何を言ってやがーーおごんっ?!」
奴隷から解放され、それでも故郷を滅ぼされ、犯され、絶望し暴力的になっていた肉食獣人の娘達は口を大きく開けて硬直した。
一番喧嘩が強く、肉食獣人達のボスになったライがセムネイルの張り手一発で大部屋の壁をぶち抜き吹き飛んでいったからである。
「さて、お前達もだ」
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