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第147話 ハヤの決断ミス
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時は少し遡り、ハヤがキュイジーヌのレストランで食事をしていた頃。
(とにかく今は話を合わせた方が良さそうだ……。 何よ、あのオーガを倒したとか。 あんなのに人間が勝てる訳無いじゃない)
ハヤは考えるのを止めたフリをしながら、情報収集に徹していた。 高ランク冒険者として、相手を欺くなど容易いものなのだ。
「あら、呼ばれてきたのですけど?」
すると、エルフのプレーリーが質素な服を持ってレストランにやって来た。
(またエルフ……ん? 右手の甲に……奴隷の刻印。 このエルフも何処かから逃げた逃亡奴隷なんだ。 ふふ……最近、うちのパーティーは運が悪かったけど此処の逃亡奴隷達をギルドに差し出したらかなりの報奨金が貰えるんじゃないの?)
ハヤは内心で捕らぬ狸の皮算用をしながら微笑む。
その考えがどれ程に愚かかも知らずに。
後ろにはローズやタリア達も付いてきており、見たことのないハヤを見つめている。
「プレーリー、すみません。 色々と事情がありまして……この人間、侵入者です」
オルガの一言でプレーリーは目を見開き、タリアとアヤメが即座に武器を抜いてローズの前へと出た。
「侵入者!?」 「なら何で食事させてるの!」
「ちょっ、タリアさんもアヤメさんも落ち着いて! オルガさん、それと……ミリムさんだっけ? 何があったか教えてくれる?」
ローズが慌てて仲裁し、2人を止めた。 そして、オルガとミリムはハヤを一瞥してから事情を説明するのであった。
◆◇◆
「そっか~……大変だったのねハヤさん」
オーガに襲われ、仲間を殺され、目を覚ましたハヤが4次元に勝手に侵入した事情を知ったローズは双子のシスターにハヤの治療をさせていた。
「「癒し手の願いを聞き給え、貴女の下僕を癒し給え、ヒール」」
「あ、ありがとうございます。 此処にはシスターも居るのですね……」
(どういう事? エオルニア教のシスターが居るなら、此処は聖エオルニア教国の領地なの?)
「「私達は既にエオルニアのシスターでは非ず、今は欲望と狭間の魔王セムネイル様の妻にしてシスターなのです」」
「おい、カリンとコリン。 また適当な事を言って……」
アヤメは呆れているが、ハヤは衝撃を受けていた。
(つまり、このシスター達は聖エオルニア教国から逃げた逃亡シスターって事? ふふふ、やばいやばいよ! これなら、本当に借金を全部返して高ランク冒険者パーティーとしてまた返り咲けるよ兄上!)
心が躍るのを止められないハヤをオルガだけは冷たい瞳で見つめていた。
(それに、何が魔王よ! そんなおとぎ話の存在で私がビビると思ってたの? 馬鹿にしてくれるわね!)
「ローズ姐さん。 治療も終わったし、このハヤさんには4次元から出て行ってもらったほうが良いのでは?」
アヤメの至極真っ当な指摘にローズは首を傾げる。
「ん~? 女の子を放り出して大丈夫かな……タリアさんはどう思う?」
ローズに問われた勇者タリアは食事を続けるハヤを見ながら考え込む。
「初めてなので私も判断できかねるのですが、アヤメの言う通りセムネイル様に招かれていないのなら出すべきです」
(おっと……何か雲行きが怪しくなってきたね。 でも、この人も冒険者っぽい。 何か犯罪をしてギルドから逃げてる……とか? ふ~ん……なら、賞金とか掛かってるかもね。 やるなら今か……ごめんね、親切にしてくれたのに)
タリアとアヤメが食事中のハヤを追い出そうとした時、ハヤは瞬時に決断をし隠していたナイフを瞬時に取り出した。
「武器だ!」
アヤメが叫び、タリアはローズを守る。
「ふふ、ごめんなさいね。 依頼だから!」
ハヤは凄まじい速度で依頼の対象であるミリムを捕えようと動いた。 しかし、ずっとハヤを疑っていたオルガがミリムを押し出し自らが人質となってしまう。
「ぐっ!」
「オルガ!? 何でっ……」
押し出されたミリムは、首筋にナイフを当てられ苦しむオルガを見て絶句した。
「ちっ! でも良いわ、どうせ皆逃亡奴隷とか犯罪者何でしょ? ふふ、取引よ。 この場所をバラされたく無かったら、他の鬼人族も連れてきなさい! 早く!」
(どのみち、後で兄上達を連れて来て全員捕まえてやるけどね!)
ハヤはニヤリと笑い、人質を無事に取れたことに安堵する。
「ハヤさん落ち着いて! 私達は敵じゃない、お願いだからオルガさんを離して」
ローズがオルガを助けようとするが、タリアは近付く事を許さない。
「ローズ姉さん、ダメです! アヤメ、いける?」
「行けるけど、その場合……あの冒険者は死ぬけど良い?」
「何してるの早く連れて来て! この鬼人族がどうなっても良いの?!」
ハヤは怒鳴りながらもキュイジーヌのレストランを出る為に後退りする。
「ぐっ、ハヤさん……さっき忠告はしたからね?」
「ふふ……何よそれ、負け惜しみかしら? ほら、早く連れて来て!」
ハヤの下に、オルガの仲間である鬼人族達がやって来た。
少し離れた所には、身代わりとして向かった先輩鬼人達を見つめるミリム達が泣きながら見つめている。
「ふっ、何も言わずともその判断が出来たのね……私は嬉しいよ」
「止めて下さいよオルガ姐さん、これでもチャンスだと思って来たんですから」
1人の鬼人に言われたオルガは笑う。
「ふふ、なるほどね。 それなら……私も身代わりになった役得があるかな」
「な、何なのよあんた達……」
ハヤは人質にされた鬼人達が笑う事に理解できず、顔を引き攣らせながら4次元の門を後退りしながら潜るのであった。
(とにかく今は話を合わせた方が良さそうだ……。 何よ、あのオーガを倒したとか。 あんなのに人間が勝てる訳無いじゃない)
ハヤは考えるのを止めたフリをしながら、情報収集に徹していた。 高ランク冒険者として、相手を欺くなど容易いものなのだ。
「あら、呼ばれてきたのですけど?」
すると、エルフのプレーリーが質素な服を持ってレストランにやって来た。
(またエルフ……ん? 右手の甲に……奴隷の刻印。 このエルフも何処かから逃げた逃亡奴隷なんだ。 ふふ……最近、うちのパーティーは運が悪かったけど此処の逃亡奴隷達をギルドに差し出したらかなりの報奨金が貰えるんじゃないの?)
ハヤは内心で捕らぬ狸の皮算用をしながら微笑む。
その考えがどれ程に愚かかも知らずに。
後ろにはローズやタリア達も付いてきており、見たことのないハヤを見つめている。
「プレーリー、すみません。 色々と事情がありまして……この人間、侵入者です」
オルガの一言でプレーリーは目を見開き、タリアとアヤメが即座に武器を抜いてローズの前へと出た。
「侵入者!?」 「なら何で食事させてるの!」
「ちょっ、タリアさんもアヤメさんも落ち着いて! オルガさん、それと……ミリムさんだっけ? 何があったか教えてくれる?」
ローズが慌てて仲裁し、2人を止めた。 そして、オルガとミリムはハヤを一瞥してから事情を説明するのであった。
◆◇◆
「そっか~……大変だったのねハヤさん」
オーガに襲われ、仲間を殺され、目を覚ましたハヤが4次元に勝手に侵入した事情を知ったローズは双子のシスターにハヤの治療をさせていた。
「「癒し手の願いを聞き給え、貴女の下僕を癒し給え、ヒール」」
「あ、ありがとうございます。 此処にはシスターも居るのですね……」
(どういう事? エオルニア教のシスターが居るなら、此処は聖エオルニア教国の領地なの?)
「「私達は既にエオルニアのシスターでは非ず、今は欲望と狭間の魔王セムネイル様の妻にしてシスターなのです」」
「おい、カリンとコリン。 また適当な事を言って……」
アヤメは呆れているが、ハヤは衝撃を受けていた。
(つまり、このシスター達は聖エオルニア教国から逃げた逃亡シスターって事? ふふふ、やばいやばいよ! これなら、本当に借金を全部返して高ランク冒険者パーティーとしてまた返り咲けるよ兄上!)
心が躍るのを止められないハヤをオルガだけは冷たい瞳で見つめていた。
(それに、何が魔王よ! そんなおとぎ話の存在で私がビビると思ってたの? 馬鹿にしてくれるわね!)
「ローズ姐さん。 治療も終わったし、このハヤさんには4次元から出て行ってもらったほうが良いのでは?」
アヤメの至極真っ当な指摘にローズは首を傾げる。
「ん~? 女の子を放り出して大丈夫かな……タリアさんはどう思う?」
ローズに問われた勇者タリアは食事を続けるハヤを見ながら考え込む。
「初めてなので私も判断できかねるのですが、アヤメの言う通りセムネイル様に招かれていないのなら出すべきです」
(おっと……何か雲行きが怪しくなってきたね。 でも、この人も冒険者っぽい。 何か犯罪をしてギルドから逃げてる……とか? ふ~ん……なら、賞金とか掛かってるかもね。 やるなら今か……ごめんね、親切にしてくれたのに)
タリアとアヤメが食事中のハヤを追い出そうとした時、ハヤは瞬時に決断をし隠していたナイフを瞬時に取り出した。
「武器だ!」
アヤメが叫び、タリアはローズを守る。
「ふふ、ごめんなさいね。 依頼だから!」
ハヤは凄まじい速度で依頼の対象であるミリムを捕えようと動いた。 しかし、ずっとハヤを疑っていたオルガがミリムを押し出し自らが人質となってしまう。
「ぐっ!」
「オルガ!? 何でっ……」
押し出されたミリムは、首筋にナイフを当てられ苦しむオルガを見て絶句した。
「ちっ! でも良いわ、どうせ皆逃亡奴隷とか犯罪者何でしょ? ふふ、取引よ。 この場所をバラされたく無かったら、他の鬼人族も連れてきなさい! 早く!」
(どのみち、後で兄上達を連れて来て全員捕まえてやるけどね!)
ハヤはニヤリと笑い、人質を無事に取れたことに安堵する。
「ハヤさん落ち着いて! 私達は敵じゃない、お願いだからオルガさんを離して」
ローズがオルガを助けようとするが、タリアは近付く事を許さない。
「ローズ姉さん、ダメです! アヤメ、いける?」
「行けるけど、その場合……あの冒険者は死ぬけど良い?」
「何してるの早く連れて来て! この鬼人族がどうなっても良いの?!」
ハヤは怒鳴りながらもキュイジーヌのレストランを出る為に後退りする。
「ぐっ、ハヤさん……さっき忠告はしたからね?」
「ふふ……何よそれ、負け惜しみかしら? ほら、早く連れて来て!」
ハヤの下に、オルガの仲間である鬼人族達がやって来た。
少し離れた所には、身代わりとして向かった先輩鬼人達を見つめるミリム達が泣きながら見つめている。
「ふっ、何も言わずともその判断が出来たのね……私は嬉しいよ」
「止めて下さいよオルガ姐さん、これでもチャンスだと思って来たんですから」
1人の鬼人に言われたオルガは笑う。
「ふふ、なるほどね。 それなら……私も身代わりになった役得があるかな」
「な、何なのよあんた達……」
ハヤは人質にされた鬼人達が笑う事に理解できず、顔を引き攣らせながら4次元の門を後退りしながら潜るのであった。
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