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第141話 達成報告

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 「すまん、騒がせたな。 依頼の報告に来たんだが」

 セムネイルは受付に居た受付嬢に冒険者のタグを提示したが、受付嬢は先程の惨劇に怯えてそれどころでは無かった。

 「ん? どうした、受理を頼む」

 二度目の問い掛けに受付嬢はようやく我に返り、セムネイル達のタグを受け取った。

 「た、大変失礼しました! す、すすすすぐに確認致しますね」

 受付嬢はガタガタと震え、他の職員や冒険者達もセムネイル達を遠巻きに見て怯えているのが分かった。

 「あはは……これはこれで変な目で見られてるね。 セムネイル」

 「ん?? 別に構わんだろ。 わざわざ命を捨てに来たのは向こうだからな」

 グラは苦笑いで周囲を見渡しているが、セリス達は特に気にもとめていなかった。 悪いのは絡んできた馬鹿達だからだ。

 しかし、そうは思わない者達も居るだろう。

 「よぉ、ちょっといいかい? お兄さん」

 受付で待っていると、大柄な男がセムネイルに話し掛けて来た。 頭に毛髪は無く、筋肉の鎧で覆われている。

 「いや、ダメだ。 あっちに行っててくれ」

 「ふっ、そうかい。 でもよ、ホームで好き勝手にされちゃぁ俺達も黙ってはいられねぇんだよな」

 大柄の男達の後ろからは、10人程の冒険者達がゾロゾロと武器を手に集まって来た。

 「俺はAランク冒険者パーティー、瞬足の前足で頭を張ってるソクドってもんだ。 まぁ、さっきのはあの糞共が悪いわな。 だが、何も殺さなくてもいいんじゃ無かったのか?」

 「はぁ……俺はCランク冒険者パーティー魔王の花束のセムネイルだ。 少なくとも、奴等は俺の妻達を侮辱した。 死んで当然だと思うが? 寧ろ、生きたまま細切れにされ死なない苦しみよりマシだろ」

 ソクドが放つ殺気よりも、更に強い殺気で応えるセムネイルとの間ではまさに一触即発の空気が流れる。

 「あれ? 貴方様、瞬足の前足と云えばリンとノラを拐おうとしたキンとかいう犯罪者が所属していたパーティーでは?」

 セリスの発言で、セムネイルは思い出しソクド達は目を見開いた。

 「そうか……よし、分かった。 なら、お前達もあの男と同じ様な人間達なんだな? 金次第で亜人を攫い、奴隷市場に平然と少女達を売り飛ばす糞ったれな男の仲間なんだな?」

 セムネイルはリンとノラを庇うように動くと、ソクドは頭を深く下げて謝罪した。

 「すまん! 犯罪に手を染め、パーティーを抜けたとはいえ確かにキンは俺達の元仲間だ。 アンタの可愛らしい奥さん達に酷い事をしようとしたんだな……本当にすまん。 見つけ次第、この手で始末をつけようと探しているんだがまだ見つかって無いんだ」

 ソクドは亜人であるリンとノラにも頭を深く下げて謝る。

 その行動を見て、セムネイルはソクド達を床の染みに変えようとするのを止めて殺気を霧散させた。

 「どうやら、お前達はあの男とは違うようだな。 どんな理由があったからは知らんが、今奴は奴隷市場を壊滅させた罪で衛兵に捕らわれてるから安心しろ」

 「な、何だって……。 そうかい……お兄さんには借りが出来たな。 さっきは喧嘩を売ってすまなかった」

 「くっくっくっ、いいさ」

 セムネイルは善人らしきソクドと握手を交わし、見守っていた職員達や冒険者達は事なきを得て胸を撫で下ろすのであった。

 ◆◇◆

 セムネイルとソクドが雑談していると、小柄な受付嬢が戻って来た。

 「お、お待たせ致しましたセムネイル様。 それでは確認なのですが、先ずオーガの討伐確認をさせて下さいね」

 戻って来た受付嬢は、ソクドとのやり取りを見ていたのか先程よりもセムネイルに対して怯えずに対応する。

 「タグの討伐では確かに1体倒したと記録されていますが、依頼の個体が確認できる物を何かお持ちですか?」

 「あぁ、そうか……すまない細切れにしたから素材は何も無いな。 あ、奴が使ってた武器ならあるぞ?」

 受付の上にオーガの鉈を4次元から出して置いた。

 「ひ、ひぃっ!? うわぁ……コレは凄いですね」

 受付嬢は年季の入った鉈を確認し、依頼書と確認する。

 「へぇ、オーガかよ。 おいおい……俺達でも仲間が揃ってる状態でも無理だぜ? そりゃSランクの依頼だろ?」

 「そうなのか。 まぁ、どうでもいいさ。 王都に行く序の依頼だったからな」

 「ぶはっ! 序でオーガ討伐かよ! こりゃ参ったぜ」

 ソクドはつるつるの頭を叩き笑う。

 「確認出来ました。 依頼に記載されていた特徴として合致しましたので、オーガ討伐達成です。 次に、逃亡奴隷の捜索はどうでしたか?」

 「オーガの洞窟で死んでいた」

 セムネイルの言葉にソクドは舌打ちし、受付嬢は表情を落とした。

 「……分かりました。 人数の確認だけしたいので、発見した遺体の数を教えて下さい」

 「鬼人の娘達10人だ。 それと、冒険者達の遺体もあったぞ。 これがタグだ」

 セムネイルが嘘の報告をしながらタグを受付に置くと、受付嬢は手に取り確認する。

 「っ……ソクドさん。 残念なお知らせです」

 「俺か? おいおい……まさか」

 「はい。 瞬速の前足所属でセムネイル様と同じ逃亡奴隷の捜索に出ていた皆さんのタグです」

 ソクドは受付嬢から血まみれのタグを受け取り涙した。

 「そうか……糞が! 俺の留守の間に勝手に受けやがって! 馬鹿野郎が……兄さん、すまねぇ。 更に借りが出来ちまったな」

 「構わん。 後で洞窟の場所を教えよう。 遺族がいるなら、手厚く葬ってやれ」

 セムネイルは情に厚いソクドの事を気に入り、肩を叩いて慰めた。

 「確認出来ました。 人数に差異はありません……達成とさせて頂きます。 最後に山賊の討伐ですが、こちらも既に?」

 「あぁ、終わってる。 山賊の頭以外は全員始末した」

 「す、凄いですね……。 それで、山賊の頭は何処に?」

 「此処だ」

 セムネイルは4次元の穴を天井に空け、山賊の頭を落とした。

 暗闇に閉じ込められ、更に頭から落とされた山賊の頭は気絶している。

 「あはは……妹から聞いた通りとんでもない方々ですね。 すみません、ソレを縛り上げて衛兵の下にお願いします」

 受付嬢の意味深な言葉に、セムネイルは首を捻るのであった。
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