【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

第134話 救出とジト目

　セムネイルが洞窟に戻ると、奥から怯えた悲鳴が聞こえた。

　「あー……驚かせてすまん。　オーガはもういないぞ、安心してくれ」

　セムネイルは角を引っ込めて、なるべく優しい声で話し掛けた。

　すると、最初に助けた鬼人の娘が進み出て焚き火に照らされたセムネイルを見て驚く。

　「あの……貴方は亜人では無いのですか？　さっきは確かに角が……。　もしや、人間？」

　ミリムは仲間を守る様にセムネイルの前へと立ちはだかる。

　「いや、俺は魔族だ。　欲望と狭間の魔王セムネイルと云う。　此処には冒険者としての依頼と、お前達を助けるように頼まれて来たんだ」

　ミリムは冒険者と云う言葉に後退りしたが、感じた違和感に眉をひそめた。

　「貴方……いえ、貴方様が魔族だと云うことは信じます。　あれ程に強いオーガを倒せる御方が人間にいる方が不可思議ですから。　ですが……誰が私達を助ける様にと……？」

　セムネイルに助けられたと云う事実から、敵では無いと確信はしているようだが亜人であり奴隷の自分達を助ける様に頼む者にミリムは心当たりは無かった。

　「む？　あぁ、奴隷市場とやらを昨日壊滅させてな。　その時に助けた鬼人の娘達に頼まれたんだ」

　「え！？　ミンガムの奴隷市場を……壊滅させた？　でも、それなら……この強さ……本当なのかも……。　ご無礼をお許し下さい、セムネイル様。　も、もし……貴方様の仰ることが事実なら、私の持てる全てでお礼を致します。　なので、先ずはその娘達に会わせて頂けないでしょうか？」

　ミリムは後ろの仲間に下がっているように手で、合図を送る。

　「勿論良いぞ」

　最悪の事態を警戒するミリムに対して、セムネイルはあっさりと了承する。

　「ありがとうございます。　皆、もし私が戻らなければ北へ向かいなさい。　そうすれば、他の生き残りに会えるかもしれないから……」

　「ミリム姉様……」　「悪い人だったら、ミリム姉さんが」　

　「ダメだよ、ミリム姉さんばっかり……」　

　ミリムが仲間達と抱き合い、振り向いた時には何故か焚き火の側に見知らぬ扉が出現していた。

　そして、セムネイルの姿も無い。

　「え……？　あれ？　これは……？」

　扉が開くと、中からセムネイルが出て来た。

　「お、すまん待たせたな。　ほれ、あってるか？」

　「ミリ厶姉様だ！」　「他の姉さん達も居るよ！」　「良かった、良かったよーーー！」

　セムネイルの後ろからは、奴隷市場に残されていた妹分の娘達が出て来てミリムを抱きしめた。

　「皆！　あぁ……我等が鬼人の女神モーンデ様、この幸運に感謝致します。　まさか、またこの娘達に会えるなんて……ごめんね、あの時置いていってごめんね」

　ミリムを抱きしめた娘達は泣きじゃくり、洞窟の奥に居た鬼人の娘達も再会を喜んだ。

　「さて、再開を喜ぶのを良いが。　腹は減ってないか？　美味い肉料理を出してくれるレストランがあるんだ。　そこに行こう」

　セムネイルは扉を開け放ち、ミリム達を誘導する。

　既にキュイジーヌの料理を食べた娘達は笑顔でミリム達の手を引いて中へと入った。

　そして、門を潜ったミリムは広がる光景に目を見開く。

　「ここは……？　さっきまで、私達は洞窟に……」

　見渡す限りの平原に、山々が見え川のせせらぎが聞こえる。

　門の周囲には、立派な館や様々な建物が建てられちょっとした街の様になっていた。　奥には農場や牧場らしき建造物も見える。

　驚く事に、人間とドワーフが仲良く何かを話しながら歩き。　エルフと鬼人が仲よさげに建物へと入って行った。

　獣人達と人間らしき子供が駆け回り、皆楽しそうである。

　「凄い……こんな世界があるなんて！　セムネイル様……」

　他の鬼人達も周囲を見渡し、広がる光景に驚いている。

　騒ぎを聞きつけた者達が集まりだし、セムネイルの妻達も家から出て来た所だった。

　「おう。　ここなら安全だ。　先に暮らしている鬼人のオルガ達と仲良くしてくれ。　お、丁度いいな。　おーい、オルガ、セリスー！　こっちだ……ん？！」

　とろんとした表情のミリムはセムネイルの側へと近付き、振り向いたと同時にその唇を奪った。

　「ん、んん……ぷはぁっ♡　セムネイル様……神の如き御方。　どうか、私を好きにして貴方様のものにして下さいませぇ♡」

　窮地を助けられ、神の如き光景を見せられたミリムはセムネイルに惚れてしまい情熱的にセムネイルへと絡む。

　薄く、ボロボロの服から伝わるミリムの感触にセムネイルの身体は少し熱を持ったが。

　すぐに周囲をジト目で見る妻達の視線に気付き、一瞬で冷めてしまった。