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第121話 奴隷市場壊滅

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 「さてと……よっと」

 セムネイルは無惨にも飛び散った死体の中を這いずり逃げようとする肥えた商人の頭を踏み潰す。

 「た、たたたすぎゃばっ?!」

 「「「ひぃっ!」」」

 そして、肥えた商人が助けを求めようとした隅で隠れる荒くれ者達の下に向かう。

 「勘弁して下さい!」 「改心します! 改心しますから!」 「2度と人拐いもしませんでさぁ! 絶対に!」

 アドナの店で行われた殺戮を目の当たりにした3人の荒くれ者達は涙や鼻水を盛大に垂らしながら許しを請う。

 「お前達は今まで何人の罪のない亜人や人間の娘を拐ってきたんだ?」

 セムネイルに間近で凄まれ、荒くれ者達はガタガタと震える。

 「つ、角……? そ、それは……」 「あ、いや、俺達はさっきのが初めてです!」 「そ、そうでさぁそうでさぁ!」

 助かる望みに掛けて、荒くれ者達は一斉に首を横に振り始めた。

 「そうか。 なら答え合わせといこう」

 セムネイルは4次元の穴から痙攣するキンを取り出し、頬を叩く。 

 「おい、起きろ」

 「あぐっ?! え? は? ここは……」

 目を覚ました男は周囲を見渡し、惨劇を見た瞬間に股間を濡らした。

 「ひ、ひぇぇぇっ! 何があったんだよ……コレ、あが?!」

 セムネイルはキンの頭を掴み、荒くれ者達の方へと顔を無理矢理向け問う。

 「一度だけ聞くぞ、正直に答えろ。 こいつ等は今まで何人の亜人や人間の娘を拐った?」

 「あ、あんたが殺ったのか……。 分かった、分かったよ……答えるよ。 俺は依頼されたばかりだから詳しくは無いからな。 奴隷商人アドナ曰く、こいつ等を含む私兵達は今まで数千人単位の亜人や人間の娘達を拐って奴隷にしてきたんだって自慢気に話してたよ」

 「て、てめぇ!」 「裏切りやがったな!」 「嫌だ、嫌だ嫌だ死にたくないぃぃぃ!」

 キンの告発に荒くれ者達は憤慨するが、次の瞬間にはセムネイルが持つ魔剣により細切れとなり痛みを感じる暇も無く死んだ。

 「おっ、おぇっ! あ、アンタ……とんでもねぇな」

 「俺からしたら、お前等の様な家畜以下の糞共の方がとんでもないけどな。 さて、お前にはやってもらうことがあるんだが……こいつ等の様に死ぬのと、俺の願いを聞くの。 どっちにするか選べ」

 元Aランク冒険者のキンは人生で1番素早く判断し、セムネイルの願いを聞く事を選んだ。

 ◆◇◆

 セムネイルは様子を見に来たセリス達と共にアドナの店に囚われていた奴隷達を連れて、奴隷市場の入口で待つグラの下へ帰ってきていた。 

 「あ、セムネイル~! 奴隷にされてた皆は全員4次元の扉に送ったわよ。 数は今連れて来た娘達を入れて100人ぐらいかな。 ローズ達やプレーリー達に任せてる」

 「おう、ありがとな。 此方も片付いた。 リン、ノラ、この娘達も4次元に連れて行ってやれ」

 「任せて下さい!」 「おう! お前達、此方だぞー!」

 リンとノラの後ろをエルフと獣人の娘達が怯えながらも付いて行く。

 「あれ? セムネイル……後ろのって確か」

 グラはセムネイルの後ろで縄に縛られている男に気付く。

 キンはセムネイルに縛られ、セリスによって引き摺られていた。

 「あぁ、この奴隷市場の惨劇の犯人だ。 やれやれ……酷い奴だな」

 セリスに引き摺られグロッキー状態なキンはセムネイルの言葉に顔を顰める。

 その場で殺されないとしても、衛兵に引き渡されたら最悪打首なのだ。 しかし、あの様な死に方をするよりはマシだろう。

 「ふふ、なるほど……直ぐに殺さなかったのはそういう狙いもあったのね。 それと、犯罪奴隷っぽい奴等はそっちに集めてるわよ。 まぁ……犯罪者にしては大人しく従ったけど」

 セムネイルがグラの指した先を見ると、強面の男達が此方を睨んでいた。 数は30名、全員が娘達とは違い首輪を付けられている。

 「おい、この奴隷市場には犯罪奴隷が居るのか?」

 引き摺られ、顔面が傷だらけになっているキンが答える。

 「知らねぇですよ! でも……確か、アドナが犯罪奴隷は利益が低いからなるべく置きたくないって言ってたのを聞いたなぁ。 いででで!」

 「そうか……一応確認してからだな。 もうすぐ衛兵達が来る、撤収の準備をしておいてくれ」

 セムネイルは強面の男達の下へと近付く。

 「おい、兄ちゃん! お前……何なんだよ!! 俺の娘を何処にやったんだ!」

 最初にスキンヘッドの男がセムネイルに向かって怒鳴る。

 「そうだ! 俺の妻も其処の扉に消えちまった!」

 「返してくれ! 俺はどうなっても構わない、娘達を返してくれ!」

 続いて他の男達もセムネイルに対して怒りを顕にした。

 「聞いても良いか? お前達が先程助けた奴隷の夫や父だとして、何故奴隷にされたんだ。 見た目はどう考えても一般人には見えんぞ」

 「そりゃそうだ。 俺達は元々冒険者だったからな。 全員、元Bランクパーティー筋肉の絆のメンバーだよ。 この街を暫く留守にして、戻って来たら俺やメンバーの家族が全員奴隷にされてたんだ。 助けに来たが、家族を人質に取られ……そのまま呪縛の首輪を付けられたのさ」  

 スキンヘッドの男が自身の首輪を指で差した。

 「呪縛の首輪か……確か力も入らず魔法も使用不可にされる弱体化の呪いだな。 よし、事情は理解した。 全員、目を瞑って絶対に動くなよ……家族が大事ならな」

 セムネイルは魔剣デザイアを引き抜き、男達に向けた。

 「ちっ!」 「くそ!」 「リア……すまねぇ」

 全員が、死を覚悟し家族の為に目を瞑った。 

 「俺達を殺しても構わん、だが……娘達や妻達には優しくしてやってくれ……頼むぞ」

 男達が目を瞑り、リーダーらしきスキンヘッドの男もセムネイルに願いを託し目を瞑った。

 「へっ、また俺の罪状が増えるのかよ……いでっ!」

 「煩い、貴方様がそんな蛮行をする訳無いでしょう?」

 セムネイルが魔剣を振ると、男達を縛っていた呪縛の首輪が粉々に砕ける。

 「全員、扉を潜れ。 その先で家族が待っているぞ」

 「兄ちゃん……俺達の話しを信じてくれるのか」

 「あぁ、お前達は俺が昔共に戦った戦友達と同じ目をしている。 大切な者の為なら命すら捨てる目だ。 なら、信じるさ」

 セムネイルはセリスに男達を引き連れさせ、門を潜らせ閉じた。

 「さて、グラ……ひと芝居といくか」

 「ふふ、そうね。 まぁ……そこのボロ雑巾次第かな?」

 2人の魔王に睨まれたキンは気絶しそうなのを必死に耐えていた。 
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