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第119話 奴隷市場の終わり

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 「よし、やっと買い物が終わったな。 俺はこのまま家畜以下の人間達に会いに行ってくるが、皆はどうする。 俺としては、何処かの宿屋で家に戻っていて欲しいんだが」

 セムネイルは大量の家畜を4次元に収納し、市場の入口まで戻っていた。

 「そうね。 私もセリスちゃん達には手を汚させない方が良いと思うけど」 

 「私は善良の人間は好きですが、下種な生き物は魔物と同じだと思ってます。 一緒に行かせて下さい」

 「わ、私も一緒に行きたいです! 悪人なら射殺しても、平気だと思いますから」

 「ん? いや、俺は人間と殺し合った事あるぞ?」

 妻達の意見を聞き、セムネイルは笑う。

 「分かった、ならさっさと行くか。 さっきは普通の商人や買い物客達が居たからその場では殺さなかったが、これから行く奴隷市場とやらでは敵は片っ端から殺すぞ」

 逃げた方角へとセムネイル達は歩き始めた。

 ◆◇◆

 「はぁはぁはぁ、くそ! 何なんだよアイツ等!」

 「忌み子が連れた奴隷を掻っ攫う簡単な仕事だった筈だろ?! 何だよ、あの殺気!」

 「うるせぇお前等、もっと早く走れ! アイツに後を付けられたら、俺達も穴に落とされるんだぞ!」

 3人の荒くれ者達が必死に奴隷エリアの中を走っていた。

 道中、檻や店先で人間や亜人の奴隷達が荒くれ者達に怯え悲鳴を上げるが今は構ってられない。

 「おい、お前等走るな! 商品が怯えてんだろうが!」

 荒くれ者達を知っている商人が怒鳴るが、無視して走り続ける。

 そして、奴隷市場で1番豪華な建物に駆け込み雇い主を探した。

 「おい、アドナ様を呼んでくれ!」 「頼むよ、早くしてくれ!」 「アドナ様に言われてちょっかいかけた奴、めちゃくちゃヤバい奴等だったんだよ!」

 店の従業員は騒がしい荒くれ者達に嫌な顔をするが、仕方無く店の主人を呼びに行った。

 「アイツにバレてねぇよな?」 「そりゃ、アレだけ野次馬が居たらわかんねぇだろ」 「ずっと全力で走ってきたし、アイツはこの街に来たばかりだろ? 奴隷市場が何処かも知らねぇ筈だ!」

 ようやく一息つけた荒くれ者達は床に座り、安堵のため息を吐いた。

 「やれやれ、騒がしいね。 おや? お前達、指示した娘達は何処にいるんだい?」

 現れた高級奴隷商人アドナが豪華な服を身に纏い、店の奥からやって来た。

 「アドナ様!」 「すんません、アドナ様」 「アレは俺達の手には負えねぇです!」

 頭を下げる3人に、アドナは怒りを顕にする。

 「ふざけんじゃないよ! 折角、買収してる衛兵から上等な亜人の娘が街に入ったって聞いたのに……幾らその衛兵に払ったと思ってんだい! それとも何かい? お前達が奴隷として身売りして金を作ってくれるのかぇ? あぁ!?」

 「ひ、ひぃぃ!」 「あいつ等、Cランク冒険者とか絶対に嘘ですよ!」 「そうなんです! 元Aランクパーティー瞬速の前足に所属してたキンが忌み子の娘に一瞬で取り押さえられたんです! しかも、忌み子の男が突然真っ黒な穴を出してキンを消したんですよ!」

 アドナは3人の荒くれ者達の話しを信じるつもりは無く、失敗した言い訳だと判断した。

 「馬鹿だね。 キンが失敗する訳ないだろ? どうせ、お前達がヘマをしたんだろ! もういい、この奴隷市場を支配する私に嘘をついたらどうなるか思い知らせてやるよ!」

 腰に付けた鞭を取り出し、アドナが荒くれ者達を打とうとしたその時、店に商人が逃げ込んできた。

 「ア、アドナ様! た、大変ですー!」

 「ちょっと、どうしたんだいそんなに慌てて。 私等がそんなんじゃ、奴隷達に舐められるだろ!」

 「す、すみません。 ですが、緊急事態なんです! 忌み子の男と亜人の娘達が奴隷市場にやって来て殺戮を始めました!! 衛兵には連絡を送りましたが、このままでは到着する前に私達が皆殺しにされます! ど、どどどうしましょー!」

 「……は? はぁぁぁぁぁぁ?!」   

 店の外からは仲間と思しき者達の悲鳴が聞こえ、直ぐ側まで来ている事に気付く。

 アドナは知らない。

 踏んだのは虎の尾どころか、神や魔神すら倒す事の出来なかった極悪非道の魔王の怒りだと云うことを。

 汗を大量に流す肥えた商人の言葉に3人の荒くれ者達はガタガタと怯えるのであった。
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