【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

第118話 家畜以下の人間達

　「美味かった。　ありがとう」

　「あいよ！　毎度ありー！　お嫁さん達も気を付けてな～！」

　焼き鳥屋の主人と別れたセムネイル達は市場の散策へと戻り、果物屋と家畜が買える店を探していた。

　すると、1人の男が話しかけて来る。

　「やぁ、男前のお兄さん。　何かお探しかい？」

　「あぁ、果物屋と家畜を買える店をな」

　「へぇ……なら良い店を知ってるぜ。　付いてきな」

　セムネイル達は男の案内に従い、市場を移動した。　道中、グラの目配せに気付いたセムネイルは黙って頷く。

　(分かってる。　コイツは後ろを尾行してる奴等の仲間だろうな)

　暫く進むと、本当に果物屋に到着し男は笑う。

　「へっへっへ、着いたぜお兄さん。　この街で果物を買うならこの店がオススメだ。　家畜を扱う店はこの後に案内してやるよ」

　妙に親切なこの男はリンとノラを横目で見て不快な笑みを浮かべる。

　「そうか、助かった。　これは礼だ」

　セムネイルが1枚の金貨を男に渡すと、何故か男は受け取ろうとしない。

　「いやいや、必要ねぇよ。　さぁ、買い物してくんな」

　セムネイルは無言で金貨を仕舞い、果物屋へと入った。

　「すまん、この店の果物を全部くれ」

　果物屋の女主人は、店に来て直ぐにとんでもない事を言い始めるセムネイルに驚く。

　「いらっしゃぁぁぁ？！　何言ってるんですかお客様！」

　「それと、店先で少し騒ぐ。　後で迷惑代も含めて払うから計算しておいてくれ」

　セムネイルはそう伝えると直ぐに店を出た。

　「ちょっ、ちょっとお客様ー！？」

　◆◇◆

　店を出ると予想通りグラが男を取り押さえて待っていた。

　「おう、この店は確かに美味そうな果物が沢山あったよ」

　「いででで！　そりゃ良かったよ！　ちょっ、このお嬢さんめちゃくちゃ強いな、くそ！」

　男は暴れようとするが、残念ながら魔剣の魔王グラに人拐い等が勝てる筈も無く地面に顔を押し付けられていた。

　「セムネイル、予想通り店に入ったと同時にリンとノラを拐おうとしたわよ。　まぁ……私が止めなくても無理だったけどね」

　「そうですわね、グラさん。　むしろグラさんに感謝して下さいね……本当なら今すぐに貴方の頭蓋骨に雷魔法を死なない程度にぶち込んで、生きたまま脳みそを私に焼かれてたのですから」

　「ひ、ひぃぃぃぃ！　勘弁してくれよ！」

　手から雷を走らせたセリスが真顔で男を睨み、リンとノラは店先でセムネイルを待っていた。

　「2人共すまない、怖くなかったか？」

　「いえ、事前にグラさんから聞いてましたから」
　
　「大丈夫だぞセムネイル、こんな雑魚相手なら怖くもない」

　「ふははは！　そうか、そうだよな。　さて……お前、後ろの奴等には助けを求めなくて良いのか？」

　セムネイルに図星を突かれた男は顔を真っ青にし、怯え始めた。

　「わ、悪かったよ！　俺は奴隷商人のアドナに頼まれただけなんだ！　後ろの奴等に引き渡せば、金を貰えるって……いでででで！」

　周囲の商人や買い物客がざわつき、果物屋を囲み大騒ぎとなる。

　「セリス、グラ、殺すな。　まだ買い物と依頼が済んでない」

　「分かっておりますわ、貴方様」

　「そうね。　街に着いたばかりで殺人を起こせば確かに面倒臭いわ。　でも……セムネイルらしくないわね」

　セリスは直ぐに引き下がり、グラは男を離しながら文句を呟く。

　「いでっ！　な、おい……見逃してくれんのか？」

　解放された男は下種な笑みを浮かべながらセムネイルへと近付く。

　「教えてくれるか？　家畜を売ってる店はどの方角だ」

　「へ？　あ、あぁ……アッチを進んだ先だよ。　も、もぉ行っても良いか？　へへ、もうアンタの奴隷に手を出した――ぎゃぁぁぁぁ？！」

　セムネイルは男から話しを聞いた直後、言い終える前に足元に空けた4次元の穴へと落とした。

　「下種が。　おい、其処にいる奴等！　後で貴様等の奴隷市場に行ってやる！　楽しみにして待ってろ！！」

　眼の前で男が消えた事に野次馬達は悲鳴を上げるが、当然セムネイルには知ったことでは無い。　セムネイルの怒声に怯え、尾行していた者達が逃げるのを気配察知で確認する。

　(ほぉ、そっちか。　わざわざ道案内ご苦労だな)

　幾人かの冒険者達がセムネイル達に何か言いたげだったが、それも無視した。

　目の前で殺さなかっただけマシだと、セムネイルは踵を返して果物屋の中へと戻るのであった。