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第114話 新たな住民
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「セ、セムネイル様、いかがされたのですか」
セムネイルとグラの後ろをイマの祖父が追って来た。
「イマの祖父よ……お前は知っているのか? 此処を出たら死ぬのだと」
セムネイルが結界に触れながら問うと、祖父は淋しげに笑った。
「此処から出ようと試みた者は、皆……出て直ぐに死にましたからな」
「そうか。 イマは最後の子供か?」
「はい。 魔人同士で生まれた子の最後がイマでした……不思議な事にイマだけは結界から出ても平気だったのですじゃ」
セムネイルは何事かと顔を出す魔人達を見渡し、セリス達に問う。
「なぁ、セリス、リン、ノラ。 家の庭でイマと遊びたくないか?」
「ふふ、貴方様のお考えは分かりましたわ」 「遊びたいです!」 「イマも一緒に住むのか? やたー!」
「はぁ……まぁ、別にアイツがまだ生きてて襲って来たら殺れば良いんじゃない?」
この場の妻達の承諾を得て、セムネイルは微笑む。
「祖父よ、皆を集めてくれ。 話がしたい」
「良くわかりませぬが、分かりました」
◆◇◆
「皆、良く集まってくれた。 お越しになられた欲望と狭間の魔王セムネイル様よりお話がある。 しかと聞くように」
イマの祖父はこの村の村長であり、一番の年長者であった。
その為に、誰もが村長の話しを聞き大人しく集まる。
「集まってくれた事、感謝する。 先程紹介があった様に、俺は欲望と狭間の魔王セムネイルと云う。 お前達を此処に閉じ込めた魔王アスモと同じ魔族だ。 早速だが、現実を叩き付けさせてもらう。 この村に住む魔人達は、初めから見捨てる事を前提として作られている」
殆どの魔人は既に理解しているのか、表情は暗い。
「その証拠として、お前達の身体の中には結界を出たら即死する術式が組み込まれている。 それも、お前達本来の魔力を動力源に動く糞みたいな呪いだ。 このままだと、お前達は外の世界を見ずに長い寿命を消費するだけになる」
セムネイルの話しをイマは驚いた顔で聞いていた。
「イマは長く続けた魔人同士の交配の結果、魔王アスモの呪いが薄まり自然と消えていた様だな」
「セムネイル様……つまり、儂等魔人同士が子供を作ると親が死ぬのも」
「……そうだ。 魔王アスモは初めから魔人の繁栄を許していない」
「……そんな」
「お祖父ちゃん!?」
見捨てられたと分かっていても、現実を突きつけられた祖父が崩れ落ちた。
集まる魔人達は絶望し、泣き崩れる者もいるがセムネイルは話を続ける。
「だが、俺は決してその様な事は許さん! 魔人達よ、俺の所に来い! 俺が作る4次元世界では、アスモ如きの呪いは届かん。 お前達が今まで生きてきたのは、今日この日に俺達と出会う為だ! アスモがお前達を殺そうとした時は守ってやる、これからは希望に満ちた日々を送らせてやる。 来い、俺の下に!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
セムネイルは4次元の扉を開き、演説を終えた。
どうやら魔人達はセムネイルを受け入れ、付いていくこと決めたようだ。
扉を出現させると、皆の顔に希望が灯った。
「セムネイル様……本当に儂等は此処を出られるのですか?」
「無論だ。 俺は、魔族を作り出した魔神の様な振る舞いをするアスモが許せん。 まぁ、俺のエゴだが……良かったら俺の下で平和に暮らしてくれ」
「ありがとうございます、ありがとうございますじゃ! 何度、何度あの結界を越えようとしたか……孫の為に、今まで生きてきて良かったですじゃ」
泣き崩れる祖父をイマは優しく抱きしめる。
「よし、引っ越しだ!」
セムネイルの号令で、魔人達は一斉に動き始めた。
セムネイルとグラの後ろをイマの祖父が追って来た。
「イマの祖父よ……お前は知っているのか? 此処を出たら死ぬのだと」
セムネイルが結界に触れながら問うと、祖父は淋しげに笑った。
「此処から出ようと試みた者は、皆……出て直ぐに死にましたからな」
「そうか。 イマは最後の子供か?」
「はい。 魔人同士で生まれた子の最後がイマでした……不思議な事にイマだけは結界から出ても平気だったのですじゃ」
セムネイルは何事かと顔を出す魔人達を見渡し、セリス達に問う。
「なぁ、セリス、リン、ノラ。 家の庭でイマと遊びたくないか?」
「ふふ、貴方様のお考えは分かりましたわ」 「遊びたいです!」 「イマも一緒に住むのか? やたー!」
「はぁ……まぁ、別にアイツがまだ生きてて襲って来たら殺れば良いんじゃない?」
この場の妻達の承諾を得て、セムネイルは微笑む。
「祖父よ、皆を集めてくれ。 話がしたい」
「良くわかりませぬが、分かりました」
◆◇◆
「皆、良く集まってくれた。 お越しになられた欲望と狭間の魔王セムネイル様よりお話がある。 しかと聞くように」
イマの祖父はこの村の村長であり、一番の年長者であった。
その為に、誰もが村長の話しを聞き大人しく集まる。
「集まってくれた事、感謝する。 先程紹介があった様に、俺は欲望と狭間の魔王セムネイルと云う。 お前達を此処に閉じ込めた魔王アスモと同じ魔族だ。 早速だが、現実を叩き付けさせてもらう。 この村に住む魔人達は、初めから見捨てる事を前提として作られている」
殆どの魔人は既に理解しているのか、表情は暗い。
「その証拠として、お前達の身体の中には結界を出たら即死する術式が組み込まれている。 それも、お前達本来の魔力を動力源に動く糞みたいな呪いだ。 このままだと、お前達は外の世界を見ずに長い寿命を消費するだけになる」
セムネイルの話しをイマは驚いた顔で聞いていた。
「イマは長く続けた魔人同士の交配の結果、魔王アスモの呪いが薄まり自然と消えていた様だな」
「セムネイル様……つまり、儂等魔人同士が子供を作ると親が死ぬのも」
「……そうだ。 魔王アスモは初めから魔人の繁栄を許していない」
「……そんな」
「お祖父ちゃん!?」
見捨てられたと分かっていても、現実を突きつけられた祖父が崩れ落ちた。
集まる魔人達は絶望し、泣き崩れる者もいるがセムネイルは話を続ける。
「だが、俺は決してその様な事は許さん! 魔人達よ、俺の所に来い! 俺が作る4次元世界では、アスモ如きの呪いは届かん。 お前達が今まで生きてきたのは、今日この日に俺達と出会う為だ! アスモがお前達を殺そうとした時は守ってやる、これからは希望に満ちた日々を送らせてやる。 来い、俺の下に!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
セムネイルは4次元の扉を開き、演説を終えた。
どうやら魔人達はセムネイルを受け入れ、付いていくこと決めたようだ。
扉を出現させると、皆の顔に希望が灯った。
「セムネイル様……本当に儂等は此処を出られるのですか?」
「無論だ。 俺は、魔族を作り出した魔神の様な振る舞いをするアスモが許せん。 まぁ、俺のエゴだが……良かったら俺の下で平和に暮らしてくれ」
「ありがとうございます、ありがとうございますじゃ! 何度、何度あの結界を越えようとしたか……孫の為に、今まで生きてきて良かったですじゃ」
泣き崩れる祖父をイマは優しく抱きしめる。
「よし、引っ越しだ!」
セムネイルの号令で、魔人達は一斉に動き始めた。
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