【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

第87話 冒険者達の暴動

　セムネイルは妻達に一言伝えてから、サシャの宿屋を出た。

　「さて、ギルドに向かうか」

　宿屋を出ると、逃げていた人々も帰って来たのかかなりの人通りがあった。

　「おぉ、凄いな。　俺が来たばかりの頃より増えてないか？」

　行商人らしき者も居れば、身なりの良さげな者達も歩いている。

　「まぁ、別にどうでもいいな。　よし、急ぐか」

　セムネイルかギルドに向かう最中、何人かの人々が立ち止まって凝視してくるが全く気にする事無く歩き続ける。

　程なくして、広場に到着すると領主の館はまだ騒がしく騎士達や衛兵達が大勢出入りしているのが見えた。

　少し離れた所にあるエオルニア教会にも神父らしき者達やシスターらしき少女達が出入りしている。

　冒険者ギルドに着いたセムネイルは扉を開け、中へと入った。

　ギルドの中では、大勢の冒険者達が受け付けに殺到し大混乱だった。

　「ん？　おい、お前。　コレは何の騒ぎだ」

　殺到している冒険者達の後ろに居た男に話し掛けると、興奮した男が振り返った。

　「あぁん？！　誰に口聞いて……すみません！　コレはですね、先の総動員の際に約束された報酬が払われなくて暴動が起きてる所です、はい」

　しかし、直ぐにセムネイルに気付いた男は礼儀正しく敬礼し状況を説明する。

　「はぁ？　あの蛸、何やってんだ……悪いな、助かった」

　セムネイルは男に礼を言い、受け付けのカウンターへと向かう。

　殺到していた冒険者達は近付くセムネイルに気付くと二手に別れ、出来た道を辿って泣いている受付嬢の下へと辿り着いた。

　「すまん、ギルマスは居るか？　ギルドの料理長をスカウトに来たんだが」

　「ひぐっ、ひぐっ、すみません、すみません」

　セムネイルが用件を伝えるも、受付嬢は冒険者達に詰められて号泣しており全く話が通じない。

　「やれやれ……一応、此処は俺の妻の職場だ。　同僚が泣いているのを放ってはおけないか……教えてくれ、幾ら払えてないんだ」

　「ひぐっ、あ、貴方はローズさんの噂の旦那様ですか？」

　「お、おう。　噂は知らんがそうだ。　教えてくれ、助けてやるから」

　受付嬢はセムネイルの正体を知ると、今度は泣きながら喜び始めた。

　「お会いしたかったんですー！　私は新人受付嬢のフィオと申しますー！　うわーん！！」

　赤髪のフィオは可愛らしい顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。

　「よろしくな、フィオ。　それで、幾ら払えてないんだ」

　「あの、その、今、ギルマスが金策に走っているんですが……金貨にして3000枚足りないです。　白金貨にすると3枚になるので、小さな村が買えちゃいます。　あはははは……」

　セムネイルはまだ理解しきれていないが、金貨1枚で平民は1年暮らせる価値があるのだ。

　この場に居る冒険者達以外にも、戦死した冒険者の遺族へと見舞金も含まれている為に膨大な報償金に膨れ上がってしまったのだろう。

　「分かった。　おい、お前等！　各自好きに取ったら帰れ！」

　セムネイルは4次元から幾ら消費しても全く減らない金銀財宝の雪崩を起こし、好きに取らせた。

　「これで解決したな？　よし、フィオ。　ギルドの料理長をスカウトしたいから、案内してくれるか？」

　「あわわわわわ」

　しかし、フィオは驚きの光景に固まり泡を吹いて気絶してしまっていた。

　「はぁ……勘弁してくれよ」