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第83話 勇者の呪い
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「やれやれ、終わったな。 ローズ、またギルドでCランクへの昇格の手続きを頼む」
セムネイルは領主の館を後にし広場へと出てきた。 人集りは駆け付けた衛兵達が対処しており、衛兵長ザモンが此方を凝視しているが、セムネイルは全く気にせずに無視をしている。
「はい! お任せ下さい! その時はセリスちゃん達も一緒にお願いしますね。 あ、グラさんって……どうするんでしょう。 もし、冒険者になるようでしたら一緒にお願いします」
「うむ、また聞いてみるか。 よし、2人は家に帰っててくれ。 俺はタリア達の様子を見てから戻る」
「分かりました! お早いお帰り……お待ちしておりますね貴方様♡」
頬を染めるセリスの頭を撫で、ローズの頭も撫でたセムネイルは広場にある巨大な教会へと向かった。
「いやいや! 説明して下さいよ!」
結局完全に無視された事にギルドマスターゼゴンは声を荒げるが、セムネイルが振り返ることは無い。
「ゼゴン殿……かの御仁には、我等の常識は通用しないのだ。 諦めよう……」
「えぇ……ザモン殿。 ……達観してるんですな」
「まぁな……セムネイル殿が居なければ、街は滅んでいたからな。 私は彼が何をしても味方するつもりだ」
教会へと向かうセムネイルを、ギルドマスターゼゴンと衛兵長ザモンは黙って見送るのであった。
◆◇◆
「邪魔するぞー? アヤメ、カリン、コリン、家に帰るぞー!」
教会に入り、大声で呼ぶと直ぐに3人が駆けて来た。
「迎えに来てくれたの? 嬉しいよ! でも……あのさ」
「「アヤメ、セムネイル様は私達も迎えに来てくれたの。 貴女だけじゃない」」
「ふはは! 勿論、3人を迎えに来たんだぞ? それと……タリアはどうした」
セムネイルは嬉しそうに抱き付いてきた3人を優しく撫でていたが、勇者タリアの姿がない事に気付いた。
「それが……その、お願いです! もし可能ならタリアを助けてやって下さい!」
「「私達からもお願いです。 苦しむタリアを解放して上げて下さい」」
「理由は分からんが、任せろ。 俺は妻の頼みには必ず応える。 少し待っててくれ。 直ぐに、5人で家に帰ろう」
「は、はい!」 「「感謝します、セムネイル様」」
セムネイルは気配察知で確認し、奥の扉へと1人で向かう。 司教とやらがグラに殺されたからかは知らないが、この巨大な教会には妻達以外には勇者タリアの気配があるのみだ。
音を立てて扉が開き、見えた先には大きな女神像の側で項垂れるタリアが見え、周囲には本が山と積まれておりセムネイルはタリアが何を調べたのか直ぐに察した。
「よぉ、タリア」
「……どうも、セムネイルさん。 3人を迎えに?」
タリアが項垂れる顔を上げると、泣いていたのか頬が濡れていた。
「あぁ、そうだ」
セムネイルの返答に、タリアは嬉しくも寂しそうに笑う。
「ふふ、そうですよね。 良いなぁ……3人が羨ましいです」
「何がだ」
セムネイルはタリアの目の前に座り、目を見て問う。
「コレを見て下さい……私が勇者たる資格にして、呪いです。 何をしても解けない、解く方法が死ぬしか無い……そんな呪いです」
タリアは上着を捲り、下腹部をセムネイルに見せた。
其処には、聖エオルニア教国にて勇者の証だとされる淫紋が刻まれており、薄っすらピンクに光っている。
「お前もか……。 あの時から本当に変わらないな、あの糞女神が」
セムネイルは顔を顰め、タリアの下腹部で光る淫紋をなぞる。
セムネイルは知っている、これは勇者の証などでは無いと。
これは生贄の証だ。 英雄としての素質がある者に刻み、専用スキルを与え特別な者だと思い込ませる。 その生涯をエオルニアが力を増す為の広告塔として消費され、死んだらエオルニアの元へと誘われるのだ。
そして、魂が擦り切れるまで戦いに使われるか、見た目の良し悪し次第ではエオルニアに犯され続けるのだ。 一番最悪なのは、勇者が女であれば生涯処女で居ることを強制させる力を持つ。 死後にエオルニアがそれを奪う為に。
初代の勇者であり、友であり、裏切り者が自傷気味に笑いながら言っていた事を思い出し、歯切りする。
もしかすると、今もエオルニアの元には彼女が居るのかも知れない。 そう考えただけで、腸が煮えくり返る。
「セムネイルさん……? ふふ、貴方は優しい人ですね。 もし、もし……勇者を辞めれるなら。 私も貴方の様な人と結ばれたかったです」
ポロポロと涙するタリアをセムネイルは優しく抱きしめた。
タリアが勇者を辞めようとしたのは、セムネイルと結ばれる為だけでは無いだろう。 しかし、大昔。 どうしたら良いかも分からずに、考える事もせずに、懇願する彼女を拒否した後悔がセムネイルの胸を抉る。
「分かった。 タリア……俺がお前を解放してやる。 エオルニアの勇者等辞めさせてやる!」
セムネイルは服を脱ぎ、タリアを抱きしめた。
二度と同じ過ちはしないと。
セムネイルは領主の館を後にし広場へと出てきた。 人集りは駆け付けた衛兵達が対処しており、衛兵長ザモンが此方を凝視しているが、セムネイルは全く気にせずに無視をしている。
「はい! お任せ下さい! その時はセリスちゃん達も一緒にお願いしますね。 あ、グラさんって……どうするんでしょう。 もし、冒険者になるようでしたら一緒にお願いします」
「うむ、また聞いてみるか。 よし、2人は家に帰っててくれ。 俺はタリア達の様子を見てから戻る」
「分かりました! お早いお帰り……お待ちしておりますね貴方様♡」
頬を染めるセリスの頭を撫で、ローズの頭も撫でたセムネイルは広場にある巨大な教会へと向かった。
「いやいや! 説明して下さいよ!」
結局完全に無視された事にギルドマスターゼゴンは声を荒げるが、セムネイルが振り返ることは無い。
「ゼゴン殿……かの御仁には、我等の常識は通用しないのだ。 諦めよう……」
「えぇ……ザモン殿。 ……達観してるんですな」
「まぁな……セムネイル殿が居なければ、街は滅んでいたからな。 私は彼が何をしても味方するつもりだ」
教会へと向かうセムネイルを、ギルドマスターゼゴンと衛兵長ザモンは黙って見送るのであった。
◆◇◆
「邪魔するぞー? アヤメ、カリン、コリン、家に帰るぞー!」
教会に入り、大声で呼ぶと直ぐに3人が駆けて来た。
「迎えに来てくれたの? 嬉しいよ! でも……あのさ」
「「アヤメ、セムネイル様は私達も迎えに来てくれたの。 貴女だけじゃない」」
「ふはは! 勿論、3人を迎えに来たんだぞ? それと……タリアはどうした」
セムネイルは嬉しそうに抱き付いてきた3人を優しく撫でていたが、勇者タリアの姿がない事に気付いた。
「それが……その、お願いです! もし可能ならタリアを助けてやって下さい!」
「「私達からもお願いです。 苦しむタリアを解放して上げて下さい」」
「理由は分からんが、任せろ。 俺は妻の頼みには必ず応える。 少し待っててくれ。 直ぐに、5人で家に帰ろう」
「は、はい!」 「「感謝します、セムネイル様」」
セムネイルは気配察知で確認し、奥の扉へと1人で向かう。 司教とやらがグラに殺されたからかは知らないが、この巨大な教会には妻達以外には勇者タリアの気配があるのみだ。
音を立てて扉が開き、見えた先には大きな女神像の側で項垂れるタリアが見え、周囲には本が山と積まれておりセムネイルはタリアが何を調べたのか直ぐに察した。
「よぉ、タリア」
「……どうも、セムネイルさん。 3人を迎えに?」
タリアが項垂れる顔を上げると、泣いていたのか頬が濡れていた。
「あぁ、そうだ」
セムネイルの返答に、タリアは嬉しくも寂しそうに笑う。
「ふふ、そうですよね。 良いなぁ……3人が羨ましいです」
「何がだ」
セムネイルはタリアの目の前に座り、目を見て問う。
「コレを見て下さい……私が勇者たる資格にして、呪いです。 何をしても解けない、解く方法が死ぬしか無い……そんな呪いです」
タリアは上着を捲り、下腹部をセムネイルに見せた。
其処には、聖エオルニア教国にて勇者の証だとされる淫紋が刻まれており、薄っすらピンクに光っている。
「お前もか……。 あの時から本当に変わらないな、あの糞女神が」
セムネイルは顔を顰め、タリアの下腹部で光る淫紋をなぞる。
セムネイルは知っている、これは勇者の証などでは無いと。
これは生贄の証だ。 英雄としての素質がある者に刻み、専用スキルを与え特別な者だと思い込ませる。 その生涯をエオルニアが力を増す為の広告塔として消費され、死んだらエオルニアの元へと誘われるのだ。
そして、魂が擦り切れるまで戦いに使われるか、見た目の良し悪し次第ではエオルニアに犯され続けるのだ。 一番最悪なのは、勇者が女であれば生涯処女で居ることを強制させる力を持つ。 死後にエオルニアがそれを奪う為に。
初代の勇者であり、友であり、裏切り者が自傷気味に笑いながら言っていた事を思い出し、歯切りする。
もしかすると、今もエオルニアの元には彼女が居るのかも知れない。 そう考えただけで、腸が煮えくり返る。
「セムネイルさん……? ふふ、貴方は優しい人ですね。 もし、もし……勇者を辞めれるなら。 私も貴方の様な人と結ばれたかったです」
ポロポロと涙するタリアをセムネイルは優しく抱きしめた。
タリアが勇者を辞めようとしたのは、セムネイルと結ばれる為だけでは無いだろう。 しかし、大昔。 どうしたら良いかも分からずに、考える事もせずに、懇願する彼女を拒否した後悔がセムネイルの胸を抉る。
「分かった。 タリア……俺がお前を解放してやる。 エオルニアの勇者等辞めさせてやる!」
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二度と同じ過ちはしないと。
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