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第77話 サシャの過去
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「前にね、お兄さんに聞きたいって思ってたのはさ。 その……これぐらいの小さなラケットが付いたネックレスって、街の近くにある初心者のダンジョンで入手したりしてないかい?」
サシャに聞かれたセムネイルは、記憶を辿りもしかしたらと4次元から幾つかのネックレスを出した。
これらは、最初のダンジョンでリセマラをした際に出た貴金属であり特に効果も付与されていないからと放置してあった物だ。
「すまん、この中に無かったら持ってないな」
サシャは恐る恐るネックレスを探り、一つの古ぼけたネックレスを手に持った。 そのネックレスには、古い血の跡がベッタリと付着しているがサシャは気にする事無く大事そうに抱きしめた。
「あはは……信じられないね。 やっぱり……彼処で死んでたんだね。 おかしいね……そうかもって、何年も何年も探しても見つからなかったのに」
ネックレスに付いているラケットを開くと、若い頃のサシャが描かれた小さな絵が入っているのが見えた。 サシャの頬には大粒の涙が伝う。
「サシャ……どういう事か教えてくれるか?」
「あ、ご、ごめんよ。 お兄さん、ありがとう。 やっと、彼にふんぎりがついたよ。 私はさ……昔、幼馴染と2人で冒険者を夢見てたんだ。 16才になり、2人で冒険者登録をこの街でしてね……それで、初めてのダンジョンに行った。 それが……全ての始まりであり、終わりだった。 彼とはいつか一緒になろうって約束しててね。 その時は宿屋でもしよう、その為に冒険者で金を稼ぐんだって息巻いててさ。 ダンジョンに行って……ゴブリンの群れに襲われた。 最初に私が殴られ気絶して、次に目が覚めた時には……ゴブリン達に犯されてた」
サシャは話しながら、自らの腕を抱き震える。
「どんなに泣き叫んでも、懇願しても、彼の姿は無かった。 幾日かが過ぎて……他の冒険者達に助けられてね。 それから街に戻り、彼を探したけど何処にも居なかった。 助けてくれた冒険者に聞いたら、誰も居なかったから逃げ出したんだろうって……信じたく無かったし、それでも良いからいつか私の所に帰って来て欲しかった! だから……身体を売ってでもこの宿屋を建てたのさ。 いつか……いつか彼と宿屋をするんだって……でも、でも……うぁぁぁぁぁぁ!」
サシャはネックレスを抱きしめながら泣き崩れる。
きっと、サシャの想い人は気絶するサシャを助ける為に必死に戦ったのだろう。 抵抗し、抗い、ゴブリン達に原型を留める事も無い程に無惨に殺されるまで助けようと戦ったのだろう。
セムネイルはもう会えぬ一人の男に敬意を示した。
「サシャ……お前の男は、世界でも類を見ない程に立派な男だったんだな。 同じ男として、尊敬する」
「ふふ、お兄さんみたいに凄い人に尊敬されたら、あの人きっと喜ぶだろうね。 英雄みたいな男になるんだっていつも言ってたから……。 ねぇ、ありがとうお兄さん。 私を長い呪縛から解き放たってくれて……本当にありがとう」
「サシャの様な良い女に感謝されたら嬉しくて仕方がないな。 これからはどうするんだ? 宿屋を続けるのか?」
「勿論さ。 お客さんも来てくれるしね。 結婚は……もう行き遅れだし。 さっき聞いての通り、私は穢れてるのさ。 お兄さんも……私を抱きたい何てもう言えないだろ?」
自傷気味に笑うサシャをセムネイルは抱きしめた。
「ちょっ?! お兄さん!?」
「サシャ、俺の女になってくれないか」
「えぇっ!? ダメだよ、お兄さんにはもう沢山お連れが居るじゃないか! それに……こんな行き遅れを抱いてどうするのさ」
「サシャ、ずっと俺が言うことは変わらん。 お前を抱きたい、俺の妻の一人になってくれないか」
サシャはセムネイルが本気だと悟ると、顔を赤面させる。
「ほ、本当何だね……? もう、後で無しとか許さないよ?」
「俺は嘘はつかん。 サシャ……好きだ。 今日からは俺がお前を守る。 お前を命懸けで守った男の想いを俺が受け継ぐ」
強く抱きしめられたサシャは、遂に観念しセムネイルを受け入れた。
「分かったよ……じゃあ、お兄さん。 その、奥に私の部屋が有るから……其処に連れてって」
「お安い御用だ」
セムネイルはサシャを抱き上げ、奥の部屋へと消えていった。
そして、扉の隙間から覗き見をしていた竜の尻尾パーティーのメルディはこの後に聞こえ始めた声や音に顔を真っ赤にしながら悶える。
耳が非常に優れているメルディには少し刺激が強すぎたのだろう。
サシャに聞かれたセムネイルは、記憶を辿りもしかしたらと4次元から幾つかのネックレスを出した。
これらは、最初のダンジョンでリセマラをした際に出た貴金属であり特に効果も付与されていないからと放置してあった物だ。
「すまん、この中に無かったら持ってないな」
サシャは恐る恐るネックレスを探り、一つの古ぼけたネックレスを手に持った。 そのネックレスには、古い血の跡がベッタリと付着しているがサシャは気にする事無く大事そうに抱きしめた。
「あはは……信じられないね。 やっぱり……彼処で死んでたんだね。 おかしいね……そうかもって、何年も何年も探しても見つからなかったのに」
ネックレスに付いているラケットを開くと、若い頃のサシャが描かれた小さな絵が入っているのが見えた。 サシャの頬には大粒の涙が伝う。
「サシャ……どういう事か教えてくれるか?」
「あ、ご、ごめんよ。 お兄さん、ありがとう。 やっと、彼にふんぎりがついたよ。 私はさ……昔、幼馴染と2人で冒険者を夢見てたんだ。 16才になり、2人で冒険者登録をこの街でしてね……それで、初めてのダンジョンに行った。 それが……全ての始まりであり、終わりだった。 彼とはいつか一緒になろうって約束しててね。 その時は宿屋でもしよう、その為に冒険者で金を稼ぐんだって息巻いててさ。 ダンジョンに行って……ゴブリンの群れに襲われた。 最初に私が殴られ気絶して、次に目が覚めた時には……ゴブリン達に犯されてた」
サシャは話しながら、自らの腕を抱き震える。
「どんなに泣き叫んでも、懇願しても、彼の姿は無かった。 幾日かが過ぎて……他の冒険者達に助けられてね。 それから街に戻り、彼を探したけど何処にも居なかった。 助けてくれた冒険者に聞いたら、誰も居なかったから逃げ出したんだろうって……信じたく無かったし、それでも良いからいつか私の所に帰って来て欲しかった! だから……身体を売ってでもこの宿屋を建てたのさ。 いつか……いつか彼と宿屋をするんだって……でも、でも……うぁぁぁぁぁぁ!」
サシャはネックレスを抱きしめながら泣き崩れる。
きっと、サシャの想い人は気絶するサシャを助ける為に必死に戦ったのだろう。 抵抗し、抗い、ゴブリン達に原型を留める事も無い程に無惨に殺されるまで助けようと戦ったのだろう。
セムネイルはもう会えぬ一人の男に敬意を示した。
「サシャ……お前の男は、世界でも類を見ない程に立派な男だったんだな。 同じ男として、尊敬する」
「ふふ、お兄さんみたいに凄い人に尊敬されたら、あの人きっと喜ぶだろうね。 英雄みたいな男になるんだっていつも言ってたから……。 ねぇ、ありがとうお兄さん。 私を長い呪縛から解き放たってくれて……本当にありがとう」
「サシャの様な良い女に感謝されたら嬉しくて仕方がないな。 これからはどうするんだ? 宿屋を続けるのか?」
「勿論さ。 お客さんも来てくれるしね。 結婚は……もう行き遅れだし。 さっき聞いての通り、私は穢れてるのさ。 お兄さんも……私を抱きたい何てもう言えないだろ?」
自傷気味に笑うサシャをセムネイルは抱きしめた。
「ちょっ?! お兄さん!?」
「サシャ、俺の女になってくれないか」
「えぇっ!? ダメだよ、お兄さんにはもう沢山お連れが居るじゃないか! それに……こんな行き遅れを抱いてどうするのさ」
「サシャ、ずっと俺が言うことは変わらん。 お前を抱きたい、俺の妻の一人になってくれないか」
サシャはセムネイルが本気だと悟ると、顔を赤面させる。
「ほ、本当何だね……? もう、後で無しとか許さないよ?」
「俺は嘘はつかん。 サシャ……好きだ。 今日からは俺がお前を守る。 お前を命懸けで守った男の想いを俺が受け継ぐ」
強く抱きしめられたサシャは、遂に観念しセムネイルを受け入れた。
「分かったよ……じゃあ、お兄さん。 その、奥に私の部屋が有るから……其処に連れてって」
「お安い御用だ」
セムネイルはサシャを抱き上げ、奥の部屋へと消えていった。
そして、扉の隙間から覗き見をしていた竜の尻尾パーティーのメルディはこの後に聞こえ始めた声や音に顔を真っ赤にしながら悶える。
耳が非常に優れているメルディには少し刺激が強すぎたのだろう。
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