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第61話 奴隷達とタリア達の安らぎ

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 「サシャ、戻った。 また地下の部屋を借りても良いか?」

 セムネイル達はサシャの宿屋まで戻って来た。
 あれだけの騒動があったせいか、他に客は誰も居ない様だ。

 「お帰りなさいお兄さん。 勿論、前に貰った代金がまだまだあるからね。 それに……大所帯だけど、部屋の広さ足りるのかい?」

 サシャが心配した通り、ダンジョンに出発する前は4人だったメンバーが今では10人だ。 地下の部屋では手狭だろうが、セムネイルには関係は無い。

 「問題無い。 また世話になる……ん? くっくっくっ、こりゃアイツ大喜びだな」

 階段を降りる前に、治癒の女神ウルナの祭壇を見ると山盛りの葡萄が供えてあった。 恐らく、奇跡のお礼にサシャが供えたのだろう。

 地下の扉を開き、部屋に入ると直ぐに4次元の扉を出す。

 「……お? セリス、衛兵長ザモンは全員出したって言ってたんだよな?」

 「はい、確かです。 あ! すみません貴方様。 お伝えして無かったです……あの、奴隷にされてた亜人達を助けまして……平屋に匿ってます」

 「セリス」

 セリスはセムネイルに黙ってした事を咎められると思ったのか、身体を少し震わせた。

 「お前は本当に最高の女だ」

 セムネイルに抱きしめられ、頭を撫でられる。

 「あ、貴方様……その、はい♡」

 「うむ、完璧な判断だ。 よし、様子を見たら休むぞ」

 「「「「「「「はーい!」」」」」」」 「おー!」 「うえーん」

 賑やかな妻達とタリアを連れて4次元に入る。

 「あ、そうだ。 アヤメ、カリン、コリンの部屋は家に準備してある。 タリアの事が落ち着いたらセリスに聞いてくれ」

 「え!? 本当ですか? やった!」 「「ありがとうございます、セムネイル様」」

 「おう、グラこっちだ。 あ、セリスも一応来てくれ。 俺だけだと怯えるかもしれん」

 「んー」 「ひぐっひぐっひぐっ」

 「はい! 勿論ですわ」

 セムネイルはセリス達を連れ平屋に向かう。

 「じゃあ、リンちゃんは私と一緒にご飯作ろっか」 「それは良いですね! 頑張りますローズ姉さん!」 「お! 料理か? ノラも手伝うぞ!」 「「あー……味見をお願いします」」 「任せろー!」

 ローズ達は家で食事の準備をする様だ。

 料理が苦手なノラは、味見役を任され嬉しそうに尻尾を振っていた。

 ◆◇◆

 「お? やっぱり警戒されてるな。 とりあえず、この部屋を使えタリア」

 「勇者何だろ? しっかりしろ! よっと」

 グラにベッドへ下ろされたタリアは、泣きつかれたのかそのまま寝てしまう。

 「ごめんなタリア……私達が死んだと思ってからずっと苦しかったよな」

 「「勇者と云えど、今は休息が必要。 いい夢をタリア」」

 アヤメ達はタリアの下に残り、セムネイル達は奥の大部屋に向かう。

 「10……30人か。 何があったんだ?」

 「エオルニア教国の司教を名乗る豚が現れまして、色々妄想を汚い口から垂れ流していたので殺そうかと思ったのですが……鎖に繋がった亜人の奴隷達を引き連れて来まして」

 「そうか……ちょっとソイツ殺してくる」

 「ん? セムネイル、多分ソレ私がもう灰にしたよ?」

 後ろに居たグラがそんな事を言うので、セムネイルがセリスを見ると笑顔で頷く。

 「そうなんです。 グラさんが私を助けてくれて、亜人の子達の鎖も切ってくれたんです」

 「そうか、グラありがとう。 ナイスだ!」

 「セムネイルの嫌いそうな奴だったからね!」

 奥の大部屋に到着し、扉を開ける。

 「きゃっ!」 「ひっ!」 「小さな子達は後ろに!」

 中に居た亜人達は、リンやノラと同い年ぐらいの娘達だった。

 セムネイルを見て、完全に怯えている。

 「あ! 助けてくれた……優しい人」 「あの人は鎖を切ってくれた人だ」

 しかし、セリスとグラに気付くと混乱は次第に落ち着き。
 警戒心が少し薄れてきた。

 「皆さん、大丈夫ですよ。 こちらが、私の言ってた旦那様にしてこの4次元空間の主! 欲望と狭間の魔王セムネイル様です!」

 「よ! あんたが大将!」

 セリスとグラの不思議なかけ声に、亜人の娘達は感嘆の声を上げる。

 「ふはははははは!! グラ、因みにそのノリは今の時代通用しないからな? さて、俺がセムネイルだ。 お前達の事は妻のセリスから聞いた。 先ず、ここは安全だ。 だが、一応聞くが……誰がどの種族何だ?」

 30人居る娘達は明らかに人間では無い。
 しかし、セムネイルの知る亜人はまだエルフと獣人だけなのだ。

 「えっと……先ずは、私達から。 鬼人族です」

 最初に名乗りを上げたのは額に角が一本生えた鬼人族だ。

 赤髪や茶髪が多く、7人の娘達が手を上げる。

 「次は私達かな。 初めましてセムネイル様、私達はドワーフ族だよ」

 少し小柄で幼い見た目の少女達はドワーフ族。 

 5人が手を上げた。

 「多分……同胞が貴方様の奥様の1人かと。 エルフ族ですわ」

 3番目に手を上げたのは、リンと同じエルフ族だ。

 人数が一番多く、10人が手を上げた。

 「くんくん、うん! お前、良い匂いするからいい奴だな! 確か、俺達と同じ獣人が番にいるだろ? まぁ、俺達獣人は種類が豊富だからな! むははははー!」

 元気良く手を上げるのは、ノラと同じく獣人族だ。

 エルフ達の次に人数が多く、多種多様な耳をしている8人が手を上げた。

 合計30人の亜人達が自己紹介を終える。

 「うむ、よろしく頼む。 とりあえず今後の事は休んでから決める、今はとにかく休め。 俺がいる限り、此処は世界で一番安全だからな。 それと、怪我人は居ないか? 居たら言えよ? 直ぐに治してやる」

 皆一様に首を横に振るので、怪我人は居ない様だ。

 「おし、ちょっと待てよ……よっと!」

 娘達の前に、ダンジョンへ潜る時にスーパーで買い溜めした食料品を雪崩のように大部屋に出した。

 亜人の娘達から歓声が上がる。

 「とりあえず、コレを好きに食え。 飲み物は、外にある川で飲んでくれ。 この4次元には生き物が居ないから、新鮮で美味い水だぞ」

 「「「「「「「「「「「「ありがとうございます! セムネイル様!」」」」」」」」」」」」

 一斉にお礼を言われたセムネイルは、セリスとグラを連れてタリアの部屋に戻る。

 「おい、アヤメ……ん? くっくっくっ、仲良く寝てるな。 セリス、布団取りに行くか」

 「はい、貴方様」 「私も手伝う」

 タリアの部屋では、手をつなぎ合い幸せそうに眠る4人の姿があった。
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