【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第59話 手柄より大切な光景

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 「セリス! 皆、無事か?」

 セムネイル達はセリス達の待つ広場へとようやく戻ってきた。  

 広場では安全を確認出来たからか、今は衛兵長や兵士達が4次元へ避難していた住民達を外に出している所だ。  

 「貴方様! それにローズ姉様! ご無事で良かったです!」

 セリスが泣きながらローズの胸に飛び込む。

 「セリスちゃん、ごめんね。 言う事聞かずに飛び出して」

 「本当ですよ! 当分許しませんからね! 貴方様が必ず助けると言って下さったから耐えましたが……本当に心配したんですから!」

 ローズは泣きじゃくるセリスの頭を優しく撫でながら抱きしめた。

 「ごめんね。 本当にごめんね」

 本当の姉妹の様に抱き合う2人をセムネイルは穏やかな顔で見ていると、衛兵長ザモンが部下達連れてやって来た。

 「セムネイル殿! 先程の魔物倒した光、貴方の魔法なのですか? まさか、本当にあの扉も?」

 「ん? そうだ。 あぁ、全員出したら教えてくれ消すから」

 「いえ、そんなあっさりと。 では、兵士達や住民達の怪我が治ったのはどうなのですか? もし、全てセムネイル殿がしたのなら貴方は街を救った英雄になりますぞ。 わざわざSランク冒険者になる必要も無い程の偉業です」

 衛兵長ザモンの言葉にセムネイルは顔を歪める。

 「おい、蛸。 おめでとう、お前が英雄だ」

 「は? え、マジですか!? まさか、手柄も全部要らないんですかい?」

 「マジだ。 面倒臭い、俺は妻達を連れてさっさと帰りたいんだ。 そういう事だ、諸々の説明はお前等が考えて勝手にやれ」

 セムネイルは他の妻達を探そうと歩き出す。

 「はは、本当に貴方は凄い御仁だ。 最後に……大迷宮のダンジョンは攻略出来たのですか?」

 衛兵長ザモンの問に足を止め、セムネイルは答えた。

 「当然だ。 長い時間で進化した魔物もこれで軒並み殺しただろうから、明日のリスポーンリセットでまた馬鹿ばかりになる。 もうこんな事は無いだろう」

 「その言葉を聞いて安心しました。 取引の件、全て私が良いように致します。 本当に感謝しますぞ」

 衛兵長ザモンは頭を下げる。 それを見た他の部下達もセムネイルに頭を下げた。

 少なくとも、今後ブルムフの兵士達が黒髪が差別する事は二度と無いだろう。

 彼等は誰が街を救ったか知っているから。

 ◆◇◆

 「おー、ノラとリン。 何やら大人気だな」

 セムネイルが妻達を探して歩いていると、子供達に集られるノラとリンの姿があった。

 「お! セムネイル! なんか、こいつ等元気だ!」

 ノラは両手に子供をぶら下げて回って遊んでおり。

 「ふふ、そうですね。 弓の練習は沢山しましたよ?」

 リンは弓を見せながら、子供達に何やら教えていた。

 「あ! もしかして、犬耳の姉ちゃんの彼氏か?」

 「違うよ! きっとリン姉ちゃんの彼氏だよ!」

 「違うし! リン姉ちゃんは俺と結婚するんだし!」

 「はぁ!? なら僕はノラ姉ちゃんと結婚するし!」

 セムネイルに気付いた子供達が何やら指を差しながら言い始めた。 

 「ふはははは! 残念だったなチビ共! その2人は既に俺の妻達だー! ふははははは!」

 大人気ないセムネイルが子供達を追いかけ始め、皆笑顔で走り回る。 先程まで4次元の中に避難し、絶望し、泣いていたのが嘘のような光景に見ている住民達も笑顔になった。

 広場に避難して来た住民達は

 「あはは! そうだぞ! ノラはセムネイルの雌だ!」

 「ふふ、恥ずかしいですけど……そうなんですよ」

 「「「「えぇぇぇぇー! 兄ちゃんずるい!」」」」

 子供達から大ブーイングだが、セムネイルはそんな事は気にしない。

 「黙れチビ共! お前等の親は無事なのか?」

 突然聞かれた子供達はそれぞれ指を差しながら答える。

 「いるよー」 「姉ちゃん達が助けてくれたから無事なのー」 「父ちゃんと母ちゃんなら元気だ」 「呼ぼうかー?」

 「はっ! なら良かったな。 今日は嫌な事があっただろ? ほれ、これ待って家に帰れ。 それで美味いもん食えよ? 飯エリアのタナカの店がオススメだ」

 「「「「わーい! ありがとー! またねー!」」」」

 セムネイルが4次元から取り出した金貨を子供達の手の平に山程乗せると、子供達は喜びながら両親の下に帰って行った。

 「よし、ノラ、リン。 帰るぞー」

 「わはは! あんなに懐かれたの初めてだ!」

 「そうですね。 ふふ、他の皆さんからも沢山お礼言われちゃいました」

 「おう、そうか……良かったな」

 セムネイルは2人の頭を撫でながら、残りの妻達を探しに向かう。

 きっと、亜人である2人がこの街で差別される事は少なくなるだろうと想いながら。
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