【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第58話 治癒と勘違い

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 「よし、魔力探知に反応は無いな。 ローズ、待たせた。 全ての魔物は殲滅したから安心しろ」

 セムネイルは地上に戻り、ローズ達と合流する。  

 「ありがとうございますセムネイル様! 流石です!」

 「ふはははは! そうだろ? うむ、ローズに良い所も見せれた。 セリス達と合流して早く休むとするか」

 妻であるローズに良い所を見せれたセムネイルはご機嫌である。 ローズを抱きしてイチャイチャしていると、タナカが荷物を背負ってやって来た。

 「お兄さん、もし宴会するなら店にまた来てよ。 街を救ってもらったんだ、私の料理で良ければたらふくご馳走するよ」

 タナカの料理が食べたかったセムネイルは笑顔で答える。

 「お! 良いな。 だが、今日は無理だろ。 明日、皆で行かせてもらう」

 「あいよ! ローズちゃん、本当にありがとうね。 でも、あんな無茶もうしたらダメだよ?」

 タナカは2人に手を振りながら店に戻って行った。

 「良かったなローズ。 タナカが生きているのは、ローズのおかげだ」

 「えへへ、ありがとうございます」

 頭を撫でられたローズは嬉しそうに微笑む。

 「あ、あのよ。 邪魔するつもりは無いんだけどよ……あんな凄い魔法が使えるなら、広範囲の回復魔法とかは……ねぇですよね?」  

 2人の世界にギルマスゼゴンが恐る恐る踏み入る。

 因みに、ゼゴンが言い放った事を、他の魔法使いに言えばその場で攻撃魔法が飛んでくる程の暴言だ。

 回復魔法であるヒールは対象を1人づつしか回復は出来ない。
 それは常識である。

 今日までは。

 「ん? 蛸か。 使えるぞ? 必要か?」

 「えっ?! マジですか?! もし、可能ならお願いしやす! 兵士達も重傷者が多くいやすし、冒険者や住民達にも動けない怪我人が沢山いる筈なんでさ!」

 「分かった。 お前は約束を守り、ローズを助けに来てくれていた。 ならばそれに報いよう。 契約せし癒しの女神よ、神々を裏切り俺を味方した慈悲深き女神よ。街で傷付き横たわる者達を癒せ、死への旅路から現世に戻せ、全ての者にお前の奇跡を見せてやれ!  治癒女神の歌声!」

 セムネイルの背後に半透明の治癒の女神ウルナが現れ、祈るように手を組みながら歌う。

 聞こえない声で歌われた声は緑色の淡い光となり、街全体を包み込んだ。  

 暫く光った後、治癒の女神ウルナはセムネイルとローズに微笑みかけ消えていった。

 「よし、広場に行くぞ。 ついて来い蛸」

 ◆◇◆

 「ブッチ! また何か来ます!」

 上空を見るリックがブッチに叫ぶ。

 「マジかよ! ルーザーは虫の息だ、早く助けを求めねぇとヤバいのに! リック、防げるか!?」

 「無理です! え!? これは?!」

 緑色の淡い光が3人を包み込み、光が消えた時には全身の怪我は消えブッチの背中に背負われたルーザーが息を吹き返す。

 「がはっ?! ゲホッゲホッ! な、何があったんでやすか? あれ? あっしは確か……死んだ筈じゃ」

 「ルーザー! おい、リック! ルーザーが目覚めたぞ! すげえ、しかも怪我も全部治ってる! 何が起きたんだ!?」

 ブッチはルーザーを地面に降ろし、何処にも怪我が無いことに涙した。

 「今のは……まさか、回復魔法? それも、広範囲の? あり得ない……一体誰が!」

 リックは持つ杖を握り締め、今起こった事がどれ程の事かと震える。

 「おーい! ルーザー、生きてるー?」

 遠くからメルディも合流し、竜の尻尾は無事に全員生還したのであった。

 ◆◇◆

 「な、何が起きたんだい? いきなり空から星が降ってきたと思ったら魔物が全部死んじまってる!! それに、さっきの優しい光は……え? 傷が消えてる! まさか、治癒の女神ウルナ様が……?」

 セムネイル達が宿屋エリアを通って広場に向かっていると、セムネイルお気に入りの宿屋の前にブラックゴブリンキング達の死骸が山積みになっていた。

 それに、店の前で盾と剣を持ちボロボロの革鎧を着たサシャが状況を飲み込めずに右往左往していたのを見つける。

 「サシャ? まさか、逃げなかったのか」

 「え? あ! お兄さん! それにローズちゃん! 良かった、無事だったんだね! そうなんだよ、大切な人と約束して建てた大事な宿屋だからね。 でも、急に魔物達が死んで……もう、何が何だか……」

 「ふふ、セムネイル様が魔物を全て殲滅して下さいました。 なので、もう安心ですよ」   

 ローズが自慢する様にサシャに事実を伝えたが、サシャは全く信用していなかった。

 「えぇ……? いや、何の冗談だい? それにほら! さっきまで傷だらけだったのに、緑色の綺麗な光が触れたら治っちまったんだよ! きっと、これは女神ウルナ様の奇跡さ!」

 挙句の果てには、全てはサシャが信仰する治癒の女神ウルナの奇跡だと言い始める。

 「い、いえ……セムネイル様が女神ウルナ様を呼んで街全体に治癒の魔法を掛けて下さったからですけど」

 流石に苦笑いのローズを見て、セムネイルは笑った。

 「ローズ、別に構わん。 俺は妻を助けに来ただけなんだ。 無理に信用してもらう必要は無い。 じゃあ、また後で部屋を借りるからよろしくなサシャ」

 「あ……あぁ、分かったよ。 ローズちゃんとお兄さんも気を付けな! 次はこんな奇跡は起きないかも知れないからね」

 セムネイル達はサシャに別れを告げ、広場へと向かった。
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