【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第56話 妻達の戦い

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 魔剣の魔王グラは久し振りの戦闘に心を踊らせていた。

 愛剣を両手に持ち、舞いながらミノタウロスを斬り殺す。
 魔剣の能力を使用するまでもなく、グラが巨大な魔剣を振り下ろすだけで魔物達が斬殺され細切れの死体が道に飛び散る。

 「おい、あれ誰だ?!」 「強すぎるだろ!」 「か、可憐だ……!」 「馬鹿言ってないで俺達もあの人の援護するぞ!」

 上級の魔物を圧倒するグラに兵士達や冒険者達は唖然としていたが、気を取り直し魔物達に攻撃を再開した。   

 「あはははは! 嬉しい、こんなに心が満たされるのなんて何時以来かな。 セムネイルに……頼んだって言われた。 それに、私の想いを全て受け入れてくれた。 こんな身体になった私を見て……ぼ、ぼぼぼ、勃起してくれたし。 あぁ、幸せ! 好きな相手に頼られる、こんな幸せな事がある!? あはははは! 死ね、私の幸せの為に!」

 グラは巨大な魔剣を己の手足のように操り、兵士達や冒険者達が倒せない上級の魔物であるミノタウロスやブラックゴブリンキング達を皆殺しにする。 

 その姿は美しく、まさに愛しい男に捧げる舞いのようだった。 

 ◆◇◆

 「落ち着いて! 中は充分に広いです!」

 セリス達は4次元の門へと避難を進めていた。

 「おい、小娘! 私を先に入れろ! 何? 順番だと!? 私を誰だと思っがひぎぃっ?!」

 面倒臭い事に、途中で必ず偉そうな輩が割り込んでくるがその度にセリスが杖でぶん殴り黙らせる。

 気絶したら門の横に投げ捨てて避難を再開させていた。

 「セリスー! こっちから来てた牛は全部倒したぞー?」

 別の道から接近していたミノタウロス達を殲滅したノラとリンがセリスの下に帰還する。

 「ありがとう、2人共。 大丈夫だとは思うけど、油断したらダメですよ? アヤメとカリンコリンは仲間であるタリアさんを探しに行きましたから、見張りは私達しか出来ません。 周囲の警戒を怠らないでね」

 「了解です! セリスさんの側には魔物は絶対に近寄らせません!」

 「任せろセリス! ぬおー! やるぞー!」

 広場の人集りは4次元への門のお陰で減り続けているが、それでもまだ多くの人々が恐怖し迫る魔物達に怯えていた。

 「なぁ、嬢ちゃん! お前の奴隷強いんだな! 俺に売ってくれびぎゃっ?!」

 そして、時折現れるリンとノラを奴隷だと勘違いする輩もぶん殴らないといけないのでセリスも中々に忙しい。

 「おい、クソ野郎。 次に私の可愛い妹2人にその糞みたいな事抜かしてみなさい。 魔物に殺される前に私がお前を殺してあげます。 わかりましたか? 分かったらさっさと門を潜りなさい!!」

 「ひ、ひぃぃぃぃ!」

 クズな男は顔中から血を流しながら門を潜る。
 その光景を見た後は、戦うリンやノラの事を詮索する者は減った。

 しかし、大きな街だ。

 クズは腐る程に居る。

 「おい、何で亜人なんかが武器持って暴れてんだよ! もし俺達人間様に歯向かったらどうすあびゃぁっ?!」

 顔面をセリスに砕かれた男が悶絶するのを無視して門にぶん投げる。

 「全く……貴方様の指示で無ければ、こんなクズ共助ける事はありませんでしたのに。 ほら、さっさと避難して下さい! あ、私達の家に入ったら殺しますわよ?」

 住民達は助けてくれるのか殺したいのか分からない少女に戸惑いながら門を潜り続けた。

 「ふう、大分減りましたわね。 おや? リン、ノラ! 私の側に!」

 広場の奥にある巨大な神殿からでっぷりと太った神父らしき男が、鎖に繋げた亜人達を無理矢理引きながら歩いて来ていた。 それも、様々な種族の少女ばかりだ。

 セリスは神父を警戒し、リンとノラを後ろに隠す。

 「おぉ! 誠に不思議な魔法よ! まさにこれはエオルニア様の奇跡に違い無い! 魔物に襲われ、震える信徒を助けようとしているのだ! 其処の娘よ、私は聖エオルニア教国所属の司教が1人マゼンタ フォル ゲロムスである! この奇跡は私が管理する其処をどけい!」

 突然現れた神父に、セリスは殺そうかと悩むが後ろに居た奴隷達を一瞥しやめた。

 奴隷達に繋がれている鎖は恐らく魔道具だ。
 持ち主の神父が死んだ際に、どんな危害が亜人達に降りかかるか想像が出来なかったからだ。

 もし、助けれるなら妹達と同じ亜人を助けたい。 そんなセリスの優しから神父は助かっている事を自覚する筈も無く神父は調子に乗り始める。

 「どうした、さっさとどけい! んん? おぉ、何と麗しい奴隷か! その2人も私に差し出すが良い! そうすれば、エオルニア様の加護が与えられますよ?」

 下卑た目で大切な妹達を見られたセリスは背中に2人を隠し、どうすべきか思案する。

 「ふざけないで下さいますか? そもそも、この門は私達の旦那様である欲望と狭間の魔王セムネイル様が出された者です! お前の様な下郎に渡す訳ありません!!」

 「な……何だと小娘! 貴様、私を誰だと思っているのだ! もういい! 貴様も其処の2人も私の奴隷コレクションに加えてやろう! かの極悪非道な魔王の名を叫んだ事後悔させてやる!」

 神父は腰に差した鞭を取り出し、セリスに向かって振り上げた。

 「おい……お前。 何してるんだ?」

 しかし、その鞭が振られる事は無かった。

 「だ、誰だ! 尊き私の行いを止めるのは! この私を誰だ……なっ!?」

 「その子達は、私の大切な男の妻達なんだけど? すまない、人間は殺したくないんだけど……仕方ないよね」

 振るった鞭の先を掴んだ魔剣の魔王グラが微笑みながら背後に立っていた。

 「き、貴様……! 何を! あ?! 熱い! 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い! ぎぃやぁぁぁぁぁっ!」

 グラの持つ漆黒の魔剣から黒炎が吹き上がり、神父を容赦なく包みこんだ。

 「グラさん! すみません、あの亜人の子達を助けれないかと判断が遅れてしまいました」

 「んー? 良いよ~、私の大切なセムネイルが大好きな奥さん達だもん。 いつでも助けてあげるよ~」

 「ありがとうございます、グラさん」

 「おー! お前もセムネイルの新しい雌何だよな? よろしくな!」

 何とも楽しそうに4人は話しているが、背後では神父が地獄の劫火に焼かれ灰となっていたが見向きもしない。

 「それと、あの子達も助けたいんだよね?」

 「はい、お願いできますか?」

 持ち主が死んだ事で、魔道具が発動したのか亜人の少女達が苦しみだす。

 「任せて~ほい!」

 真っ赤な魔剣を振ると、少女達の首輪は砕け散り鎖も消し去った。

 「凄いです! グラさんは剣の達人なのですか?」

 リンの言葉にグラは照れながら答える。

 「いやぁ……一応魔剣の魔王だからね。 神やセムネイルと殺し合ってた時を考えたらこれぐらいは……あはは、照れちゃうな」

 周囲の住民達はドン引きだが、それでもどちらが悪いかは明白だ。

 「それより、何か他人事ぽかったですけど……グラさんも貴方様は妻だって仰ってましたよ?」

 「ぴ!? そ、そっかぁ……あはは、嬉しいな」

 照れるグラを見て、セリスの何かが疼くが今は我慢し避難を再開させるのであった。
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