47 / 252
第46話 魔神
しおりを挟む
「じゃあ、行ってくる。 必ず戻るから、皆で仲良くしていてくれ」
4次元の家に戻ったセムネイルは、セリス達に最後の階層で起こり得る可能性を話し万が一の為に1人で向かうと説得した。
「約束ですわよ、貴方様」
「セムネイル様……」
「セムネイル……」
「セリス、頼む。 リン、ノラ、終わったらタナカの店で宴だ。 楽しみにしてろ」
セリスは聞き分けが良くて助かるが、リンとノラは最後まで渋った。 まだセムネイルが4階層のフロアボスに食われたのがトラウマなのだろう。
セムネイルは妻達に口づけを交わす。
もし、連れて行けば守れないかもしれない相手なのだ。
絶対に連れて行くことはできない。
「あ、あのさ……貴方。 私も……」
「「アヤメ、空気を読むのも良い妻として必要よ?」」
訓練終わりのアヤメがもじもじしながらキスをせがむが、双子がそれを止める。
「くっくっくっ、俺の妻なら空気等読まなくていいぞ。 来い、アヤメ、カリン、コリン」
呼ばれたアヤメは大喜びでセムネイルに抱きつき、双子の姉妹も愛おしそうにセムネイルを抱きしめる。
「俺は無敵の魔王だぞ? 相手が誰だろうが、必ず勝つ。 信じて待て」
「「「「「はい!」」」」」 「おー!」
「くっくっくっ、ローズが来たら大丈夫だと伝えてくれ。 じゃあな」
セムネイルは4次元の扉をくぐり、5階層の階段へと出た。
「さて、蛇が出るか、鬼が出るか」
セムネイルはそのまま階段を降り、その先にある巨大な鉄の扉へと進んだ。
◆◇◆
ダンジョンには幾つか種類がある。
人間への試練としてのダンジョンと、魔神や神達が魔物を兵器として運用するダンジョンだ。
そして、今セムネイル達が潜っているダンジョンは後者であり。
セムネイルの予想が正しければ、5階層のボス部屋にはこのダンジョンの主が待っているだろう。
「よっと……ん? くっくっくっ、やはりセリス達を置いてきて正解だったな」
ダンジョンのフロアボスは特殊で、気配探知等で索敵が出来ない。
つまり、部屋に入ったが最後。
勝てない相手だったら、侵入した冒険者等は嬲り殺される事になる。
円形の大きな部屋の中央には、巨大な漆黒の大剣を突き立てて微動だにしない巨人が鎮座していた。
肌は浅黒く、筋肉の鎧の上に更に分厚い皮の服を身に纏っている。 額からは魔に属する者だとひと目で分かる角が2本太く長く生えていた。
「お前……確か魔剣の魔神だったか? おかしいな、俺が心臓を握り潰して殺した筈だが?」
セムネイルが近づくと、魔剣の魔神は真っ赤な目を開き笑い始めた。
「ぐはははは! 遂に、遂に復活したのか! 待ったぞ、何千年、何百年も! 我が心臓を潰し、魔王でありながら魔神に逆らう愚か者セムネイルよ!」
魔剣の魔神は突き立てていた大剣を引き抜き、構える。
「いや、だからお前……何で生きてるんだ?」
「貴様の質問に答える義理は無いが、教えてやろう。 偉大な女神エオルニア様の御慈悲で復活させていただいたのよ! 見ろ! この溢れ出る魔力を! 貴様と殺し合った大昔の頃より何倍も、いや! 何十倍も我は強くなったのだ!!」
「偉大な……か。 お前達魔神は神であるエオルニア達と殺し合ってた筈だろ? なんだ? 復活して貰った代わりに、魔神としてのプライドも魂も売り渡したか? ……滑稽だな」
「貴様! 黙れぇぇぇぇ!!」
煽りまくるセムネイルの言葉が魔神の逆鱗に触れ、魔神はセムネイルの何倍もある大剣を力任せに振りかぶった。
そのまま地面を抉り、巨大なクレーターを作り出す。
「やれやれ、相変わらずの馬鹿力だな。 いや、すまん。 頭も馬鹿だったのを忘れていた」
セムネイルは高速で迫る大剣を全て危なげなく躱す。
もし、この場にセリス達が居れば何が起きたのか理解する時間も無く細切れにされる程の剣速だ。
「黙れ黙れ黙れぇぇぇ! 我の力が早すぎて避けるしか出来ていないお前に言われたく無いげぶぅっ?!」
魔神は喋る途中でセムネイルに顎を蹴り砕かれ、口から血を吐き出す。
「悪い悪い、喋ってる途中だったな。 それで? まさか、これだけじゃないんだよな」
確かに魔剣の魔神は強くなっている。
だが、残念ながら殺し、食い、抱きまくり異常な速度で力を取り戻し始めているセムネイルよりは弱かった。
それだけの話である。
「馬鹿なぁぁぁ! 我はエオルニア様に力を与えられた選ばれし魔神なのだぞ! 貴様の様な一魔族に押されるはずが!」
「……ん?」
直ぐ様叫ぶ魔剣の魔神を見て、セムネイルは不可解な事に首を傾げた。
蹴り砕いた筈の顎が一瞬で治っているのだ。 魔神は傷の治りが早いが、あまりにも早すぎる。
「ぐはははは! なんてな! 我が与えられた力がこれだけな筈無かろう? ぐははははははははは!!」
漆黒の大剣を構えた魔剣の魔神は突然2人に分身し、更に漆黒の大剣からドス黒い炎が噴き出した。
「……おい、その異能は魔剣の魔王グラのじゃないか。 ……お前、自分が生み出した娘を殺したのか?」
2人になった魔剣の魔神はセムネイルの質問に答える事なく、にやりと笑った直後に斬り掛かってきた。
「ちっ、不味いな」
セムネイルは慌てて4次元から2本の魔剣を取り出し、魔剣の魔神を迎え撃った。
4次元の家に戻ったセムネイルは、セリス達に最後の階層で起こり得る可能性を話し万が一の為に1人で向かうと説得した。
「約束ですわよ、貴方様」
「セムネイル様……」
「セムネイル……」
「セリス、頼む。 リン、ノラ、終わったらタナカの店で宴だ。 楽しみにしてろ」
セリスは聞き分けが良くて助かるが、リンとノラは最後まで渋った。 まだセムネイルが4階層のフロアボスに食われたのがトラウマなのだろう。
セムネイルは妻達に口づけを交わす。
もし、連れて行けば守れないかもしれない相手なのだ。
絶対に連れて行くことはできない。
「あ、あのさ……貴方。 私も……」
「「アヤメ、空気を読むのも良い妻として必要よ?」」
訓練終わりのアヤメがもじもじしながらキスをせがむが、双子がそれを止める。
「くっくっくっ、俺の妻なら空気等読まなくていいぞ。 来い、アヤメ、カリン、コリン」
呼ばれたアヤメは大喜びでセムネイルに抱きつき、双子の姉妹も愛おしそうにセムネイルを抱きしめる。
「俺は無敵の魔王だぞ? 相手が誰だろうが、必ず勝つ。 信じて待て」
「「「「「はい!」」」」」 「おー!」
「くっくっくっ、ローズが来たら大丈夫だと伝えてくれ。 じゃあな」
セムネイルは4次元の扉をくぐり、5階層の階段へと出た。
「さて、蛇が出るか、鬼が出るか」
セムネイルはそのまま階段を降り、その先にある巨大な鉄の扉へと進んだ。
◆◇◆
ダンジョンには幾つか種類がある。
人間への試練としてのダンジョンと、魔神や神達が魔物を兵器として運用するダンジョンだ。
そして、今セムネイル達が潜っているダンジョンは後者であり。
セムネイルの予想が正しければ、5階層のボス部屋にはこのダンジョンの主が待っているだろう。
「よっと……ん? くっくっくっ、やはりセリス達を置いてきて正解だったな」
ダンジョンのフロアボスは特殊で、気配探知等で索敵が出来ない。
つまり、部屋に入ったが最後。
勝てない相手だったら、侵入した冒険者等は嬲り殺される事になる。
円形の大きな部屋の中央には、巨大な漆黒の大剣を突き立てて微動だにしない巨人が鎮座していた。
肌は浅黒く、筋肉の鎧の上に更に分厚い皮の服を身に纏っている。 額からは魔に属する者だとひと目で分かる角が2本太く長く生えていた。
「お前……確か魔剣の魔神だったか? おかしいな、俺が心臓を握り潰して殺した筈だが?」
セムネイルが近づくと、魔剣の魔神は真っ赤な目を開き笑い始めた。
「ぐはははは! 遂に、遂に復活したのか! 待ったぞ、何千年、何百年も! 我が心臓を潰し、魔王でありながら魔神に逆らう愚か者セムネイルよ!」
魔剣の魔神は突き立てていた大剣を引き抜き、構える。
「いや、だからお前……何で生きてるんだ?」
「貴様の質問に答える義理は無いが、教えてやろう。 偉大な女神エオルニア様の御慈悲で復活させていただいたのよ! 見ろ! この溢れ出る魔力を! 貴様と殺し合った大昔の頃より何倍も、いや! 何十倍も我は強くなったのだ!!」
「偉大な……か。 お前達魔神は神であるエオルニア達と殺し合ってた筈だろ? なんだ? 復活して貰った代わりに、魔神としてのプライドも魂も売り渡したか? ……滑稽だな」
「貴様! 黙れぇぇぇぇ!!」
煽りまくるセムネイルの言葉が魔神の逆鱗に触れ、魔神はセムネイルの何倍もある大剣を力任せに振りかぶった。
そのまま地面を抉り、巨大なクレーターを作り出す。
「やれやれ、相変わらずの馬鹿力だな。 いや、すまん。 頭も馬鹿だったのを忘れていた」
セムネイルは高速で迫る大剣を全て危なげなく躱す。
もし、この場にセリス達が居れば何が起きたのか理解する時間も無く細切れにされる程の剣速だ。
「黙れ黙れ黙れぇぇぇ! 我の力が早すぎて避けるしか出来ていないお前に言われたく無いげぶぅっ?!」
魔神は喋る途中でセムネイルに顎を蹴り砕かれ、口から血を吐き出す。
「悪い悪い、喋ってる途中だったな。 それで? まさか、これだけじゃないんだよな」
確かに魔剣の魔神は強くなっている。
だが、残念ながら殺し、食い、抱きまくり異常な速度で力を取り戻し始めているセムネイルよりは弱かった。
それだけの話である。
「馬鹿なぁぁぁ! 我はエオルニア様に力を与えられた選ばれし魔神なのだぞ! 貴様の様な一魔族に押されるはずが!」
「……ん?」
直ぐ様叫ぶ魔剣の魔神を見て、セムネイルは不可解な事に首を傾げた。
蹴り砕いた筈の顎が一瞬で治っているのだ。 魔神は傷の治りが早いが、あまりにも早すぎる。
「ぐはははは! なんてな! 我が与えられた力がこれだけな筈無かろう? ぐははははははははは!!」
漆黒の大剣を構えた魔剣の魔神は突然2人に分身し、更に漆黒の大剣からドス黒い炎が噴き出した。
「……おい、その異能は魔剣の魔王グラのじゃないか。 ……お前、自分が生み出した娘を殺したのか?」
2人になった魔剣の魔神はセムネイルの質問に答える事なく、にやりと笑った直後に斬り掛かってきた。
「ちっ、不味いな」
セムネイルは慌てて4次元から2本の魔剣を取り出し、魔剣の魔神を迎え撃った。
21
お気に入りに追加
359
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる