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第45話 休憩と勇者
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「流石だなセリス。 素晴らしい威力だ」
セムネイルはズタズタになった砂食いミミズの死骸を4次元に収納し、セリス達に合流した。
「ありがとうございますわ、貴方様」
「セムネイル様! 無事で良かったですー!」
「ごめんなセムネイル! 俺のせいでセムネイルが食べられた! 何処も痛くないか?!」
「ふははは! 気にするなノラ。 リンもありがとう。 俺なら当然無傷だ。 それに、2人共セリスをちゃんと守ったんだな……偉いぞ」
セムネイルはリンとノラの頭を撫でてやり、セリスには口づけを交わす。
「流石は俺の妻達だ。 よし、リンとノラが仕留めた魔物も収納したら宝箱を見に行こう」
「はい!」 「おー! 馬鹿でかい宝箱だー!」
「ふふ、2人共待ちなさい。 貴方様が行くまで開けたらダメよー」
セムネイルは山となった魔物の死骸を収納し、3人の下に向かう。
「開けるとするか~、こりゃ大量に入ってるパターンだな」
セムネイルは砂食いミミズの半分程もある巨大な宝箱によじ登り、力任せに開けた。
「すごいですー!」 「うおー! 宝だー!」
「凄すぎますわ……これ、国が買えますわよ?」
開けた巨大な宝箱の中には金銀財宝がぎっしりと詰まっていた。
「ふはははは! これなら、タナカの店で美味いラーメンを山程食えるぞノラ」
「えぇぇぇ!? 山程か! 凄いぞセムネイル!」
「ふぇ~……唐揚げも沢山食べれますねセムネイル様」
「ふふ、2人共まだまだ食べるのが先にきますね」
セムネイルは金銀財宝を全て4次元に吸い込み、巨大な宝箱を後にする。
「よし、じゃあ次の階に降りるか。 だが、少し不安要素がある。 階段途中で4次元に帰るぞ」
「「了解です」」 「おー!」
4人は砂漠の真ん中に突如現れた階段を降りていった。
◆◇◆
セムネイル達が4階層を突破した頃、冒険者ギルドではローズが勇者タリアに仲間の無事を知らせていた。
「なのでタリアさん。 パーティメンバーであるアヤメさん、カリンさん、コリンさんは無事です」
「……幾つか質問しても良い?」
教会に転移した勇者タリアは大切な仲間をダンジョンに置き去りにし、恐らく見殺しにした事で酷く焦燥していた。
そんな時に、縋る思いで再度やってきた冒険者ギルドで昨日も居た受付嬢に仲間の無事を知らされるのだ。
信じられる筈も無かった。
「勿論ですが、お答え出来る事と出来ない事があります」
「それは……何故?」
「貴女が勇者だからです」
ローズの返答にタリアは首を傾げる。
「分かった、それでもいい。 何処で私の仲間の事を聞いた」
「本人から直接聞きました」
タリアのこめかみに青筋が浮き出る。
「もし……ふざけているなら覚悟してね。 今の私は何するか本当に分からないから」
「いえ、私は至って真面目ですよ」
「そう……それで? 私の仲間達は今何処に居るの?」
「お答え出来ません」
「……え?」
ローズはそれ以上言うつもりは無いのか、黙ってタリアの質問を待つ。
「誰が仲間を助けたんだ?」
「お答え出来ません」
「ねぇ……ふざけてるの?」
「いいえ」
ローズは頑なにセムネイルの情報を渡さない。
セムネイルは気にしないと言っていたが、古来より勇者とは魔王を滅ぼす為に神に選ばれる存在だ。
タリア個人が善人でも、その背後にいる女神には絶対に気を許せない。
「分かった、じゃあ証拠を見せてよ。 3人から無事を伝えるように言われたんでしょ? 何か言ってなかった?」
ローズは少し考えてから答える。
「確かにコレを言えば信じられると言われた事があります。 ですが……この場で聞きますか?」
ローズとタリアが話しているのは冒険者ギルドの受付だ。
当然、側には他のスタッフも居るし冒険者達だって大勢依頼を受けようとやって来ている。
「構わない。 言えるもんなら言って」
「分かりました。 では……私達とアヤメは素晴らしい夫を見つけた。 ざまあみろ……以上です」
タリアは仲間からの言付けを聞いて驚愕し、泣きながら笑い出した。
「あはははは! そっか、分かった! あ~そうだよね。 2階層のフロアボスを瞬殺する人だったもんね。 そっかぁ……助けてくれたんだ。 しかも、あの3人がそのまま嫁いだってこと?! あーおかしい! ありがとう……えっと」
「ローズです。 タリアさん」
「ローズさん、ありがとう。 って事は……貴女もあの人の?」
タリアの質問にローズは答える事なく、頬を赤らめて頷いた。
「本当にありがとうローズさん。 どうやってそれを聞いたのか会ったのかはもう聞かない。 それより、あの人がどんな素敵な人か聞きたいな」
「ふふ、勇者を辞められるなら良いですよ?」
「分かった、辞める」
即決するタリアにローズは目を見開いて驚く。
「そんな簡単に決めてよろしいのですか?」
「私はさ、人々を助けれるならって無理矢理勇者にさせられたの我慢してたんだ。 でも、いよいよ教会の糞共に嫌気が差してさ……今も、再度ダンジョンに行ってさっさと死んで来いって言われてる」
「!? 何ですかそれは! 分かりました……ギルドマスター! すみませんが早退します。 タリアさん、此方へ」
「はぁっ?! 出勤してまだ三十分だぞ!? あ、いや、何でもございません、ゆっくり休んで下さい」
ギルドマスターのゼゴンは咄嗟に怒鳴るが、直ぐに相手がローズだと分かると一礼して見送る。
「あれ……此処のギルマスよね? ローズさん……貴女何者?」
「それは……宿に着いてからのお楽しみです」
ローズはタリアを連れて何時もの宿屋に向かった。
セムネイルはズタズタになった砂食いミミズの死骸を4次元に収納し、セリス達に合流した。
「ありがとうございますわ、貴方様」
「セムネイル様! 無事で良かったですー!」
「ごめんなセムネイル! 俺のせいでセムネイルが食べられた! 何処も痛くないか?!」
「ふははは! 気にするなノラ。 リンもありがとう。 俺なら当然無傷だ。 それに、2人共セリスをちゃんと守ったんだな……偉いぞ」
セムネイルはリンとノラの頭を撫でてやり、セリスには口づけを交わす。
「流石は俺の妻達だ。 よし、リンとノラが仕留めた魔物も収納したら宝箱を見に行こう」
「はい!」 「おー! 馬鹿でかい宝箱だー!」
「ふふ、2人共待ちなさい。 貴方様が行くまで開けたらダメよー」
セムネイルは山となった魔物の死骸を収納し、3人の下に向かう。
「開けるとするか~、こりゃ大量に入ってるパターンだな」
セムネイルは砂食いミミズの半分程もある巨大な宝箱によじ登り、力任せに開けた。
「すごいですー!」 「うおー! 宝だー!」
「凄すぎますわ……これ、国が買えますわよ?」
開けた巨大な宝箱の中には金銀財宝がぎっしりと詰まっていた。
「ふはははは! これなら、タナカの店で美味いラーメンを山程食えるぞノラ」
「えぇぇぇ!? 山程か! 凄いぞセムネイル!」
「ふぇ~……唐揚げも沢山食べれますねセムネイル様」
「ふふ、2人共まだまだ食べるのが先にきますね」
セムネイルは金銀財宝を全て4次元に吸い込み、巨大な宝箱を後にする。
「よし、じゃあ次の階に降りるか。 だが、少し不安要素がある。 階段途中で4次元に帰るぞ」
「「了解です」」 「おー!」
4人は砂漠の真ん中に突如現れた階段を降りていった。
◆◇◆
セムネイル達が4階層を突破した頃、冒険者ギルドではローズが勇者タリアに仲間の無事を知らせていた。
「なのでタリアさん。 パーティメンバーであるアヤメさん、カリンさん、コリンさんは無事です」
「……幾つか質問しても良い?」
教会に転移した勇者タリアは大切な仲間をダンジョンに置き去りにし、恐らく見殺しにした事で酷く焦燥していた。
そんな時に、縋る思いで再度やってきた冒険者ギルドで昨日も居た受付嬢に仲間の無事を知らされるのだ。
信じられる筈も無かった。
「勿論ですが、お答え出来る事と出来ない事があります」
「それは……何故?」
「貴女が勇者だからです」
ローズの返答にタリアは首を傾げる。
「分かった、それでもいい。 何処で私の仲間の事を聞いた」
「本人から直接聞きました」
タリアのこめかみに青筋が浮き出る。
「もし……ふざけているなら覚悟してね。 今の私は何するか本当に分からないから」
「いえ、私は至って真面目ですよ」
「そう……それで? 私の仲間達は今何処に居るの?」
「お答え出来ません」
「……え?」
ローズはそれ以上言うつもりは無いのか、黙ってタリアの質問を待つ。
「誰が仲間を助けたんだ?」
「お答え出来ません」
「ねぇ……ふざけてるの?」
「いいえ」
ローズは頑なにセムネイルの情報を渡さない。
セムネイルは気にしないと言っていたが、古来より勇者とは魔王を滅ぼす為に神に選ばれる存在だ。
タリア個人が善人でも、その背後にいる女神には絶対に気を許せない。
「分かった、じゃあ証拠を見せてよ。 3人から無事を伝えるように言われたんでしょ? 何か言ってなかった?」
ローズは少し考えてから答える。
「確かにコレを言えば信じられると言われた事があります。 ですが……この場で聞きますか?」
ローズとタリアが話しているのは冒険者ギルドの受付だ。
当然、側には他のスタッフも居るし冒険者達だって大勢依頼を受けようとやって来ている。
「構わない。 言えるもんなら言って」
「分かりました。 では……私達とアヤメは素晴らしい夫を見つけた。 ざまあみろ……以上です」
タリアは仲間からの言付けを聞いて驚愕し、泣きながら笑い出した。
「あはははは! そっか、分かった! あ~そうだよね。 2階層のフロアボスを瞬殺する人だったもんね。 そっかぁ……助けてくれたんだ。 しかも、あの3人がそのまま嫁いだってこと?! あーおかしい! ありがとう……えっと」
「ローズです。 タリアさん」
「ローズさん、ありがとう。 って事は……貴女もあの人の?」
タリアの質問にローズは答える事なく、頬を赤らめて頷いた。
「本当にありがとうローズさん。 どうやってそれを聞いたのか会ったのかはもう聞かない。 それより、あの人がどんな素敵な人か聞きたいな」
「ふふ、勇者を辞められるなら良いですよ?」
「分かった、辞める」
即決するタリアにローズは目を見開いて驚く。
「そんな簡単に決めてよろしいのですか?」
「私はさ、人々を助けれるならって無理矢理勇者にさせられたの我慢してたんだ。 でも、いよいよ教会の糞共に嫌気が差してさ……今も、再度ダンジョンに行ってさっさと死んで来いって言われてる」
「!? 何ですかそれは! 分かりました……ギルドマスター! すみませんが早退します。 タリアさん、此方へ」
「はぁっ?! 出勤してまだ三十分だぞ!? あ、いや、何でもございません、ゆっくり休んで下さい」
ギルドマスターのゼゴンは咄嗟に怒鳴るが、直ぐに相手がローズだと分かると一礼して見送る。
「あれ……此処のギルマスよね? ローズさん……貴女何者?」
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