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第39話 セムネイルの安らぎと勇者タリア
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「ご馳走様でした。 リン、セリス美味かったありがとう」
「美味しかったのだー! ご馳走様でし……たぁ……」
昼飯を食べ終えたセムネイルはテキパキと食器を片付け洗う。 セリスに呼ばれるまで獣の様に抱かれていたノラは既に体力を使い切り寝る寸前だ。
それでもリンとセリスの作った料理を完食しているのがノラらしくて微笑ましい。
「お粗末様でした。 貴方様、残りはリンとしますのでノラを部屋にお願いしても?」
「ん? そうだな、後は頼む。 ノラ、ベットに行くぞ~」
同じく体力を消耗した筈のセムネイルは疲れ等全く見せる素振りも無く、軽々とノラを抱き上げ2階の部屋へと運ぶ。
「ふふ、ノラさん幸せそうな顔で寝てましたねセリスさん」
「そうね。 あんなに幸せそうに寝れるなんて羨ましいわ~」
リンとセリスは仲良く片付けをする。
「ねぇ、リン」
「どうしたんです? セリスさん」
「貴方様が下りてきたら1番にお風呂に行くと思うの。 一緒に……行っちゃう?」
リンの目がキラキラと輝き、洗い物をする手が早まる。
「良いですね! 早く終わらして行きましょ~♡」
「決まりね♡ ノラや新しい姉妹ばかりズルいもの」
「ふふ、ローズさんがまた頬を膨らませちゃいますね」
2人は仲良く風呂場へと向かった。
セムネイルが階段を下りてきた時には誰も居らず、リンとセリスが風呂場に居るのを気配探知で知った。
2人が何を期待しているか直ぐに悟ったセムネイルは股間を大きく膨らませて風呂場へと急いだ。
それから暫く、風呂場からリンとセリスの嬌声は止まなかった。
◆◇◆
場所は変わり、此処はブルムフという街のエオルニア教の教会。
聖エオルニア教国の本部から連なる支部の1つだ。
エオルニアの世界には多くの神や女神の教会が存在するが、エオルニア教は世界で1番大きな宗教組織である。
ブルムフの街にあるこの建物も他とは雲泥の差であり、領主の館よりも豪華な教会だ。
そんな教会の懺悔室に、項垂れる女勇者タリアが仲間を見捨てた罪を告白していた。
「私は……勇者なのに、仲間を救えなかった。 守れなかったんです。 死ぬなら……仲間と共に死にたかった」
教会の広間に転移した勇者タリアは直ぐ様治療され、一命を取り留めた。
しかし、共に戦った仲間を見捨てた現実がタリアを意気消沈させてしまう。
「勇者タリアよ……エオルニア様は常に貴女を見守っております。 仲間を失った事にも必ず理由があるのでしょう」
タリアの祈る手に力が入り、指先からは血が滴る。
「理由ですか。 仲間達が命を散らそうとするその時にすら力をお借して下さらなかった事に理由が有るのでしょうか?」
タリアが必死に怒りを堪えるのを懺悔室の神父が扉越しにため息を吐く。
「はぁ……エオルニア様より加護を見賜った勇者タリアよ。 エオルニア様の意思を測るなど愚か者がする事です。 貴女が今すべきは、冒険者ギルドに行き新しき仲間を集いもう一度使命である大迷宮のダンジョンを攻略するのです」
「……は? いや、神父様。 もし、前以上の仲間に出会えたとしても……死ぬだけですよ?」
神父の言葉に絶句したタリアは思わず反論する。
あの地獄にまた潜る事は死を意味するからだ。 何処かで試練を踏破し強くなってから再チャレンジするならまだしも、神父の言葉通りならさっさと行って死ねと言っているのと変わらない。
「そうですよ? 次の勇者候補は幾らでも居るのです。 エオルニア様のご意向に従えないのなら、早くお死になさい。 それが信徒たる務めです」
神父には一切の悪意も曇りもない、心からそう思っているのをタリアは理解した。
(本当に……本当に腐っているなこの宗教は。 無理矢理私を勇者にしておいて、無理ならさっさと死ねと? ふざけないでよ!)
タリアは両方の拳を限界まで握り締め、ひたすらに耐える。
勇者であるタリアが本氣を出せば、壁の向こうにいる肥えた糞ったれな神父等瞬殺出来るだろう。
しかし、そんな事をしても何も意味は無い。
エオルニア教が腐っているのなんて、聖エオルニア教国に居た時から知っていた。
それでも、女神エオルニアは勇者を見守り力を貸してくれる存在だと信じていた。
だが、どうやら腐っているのは女神のようだ。
「分かりました。 冒険者ギルドに行って参ります」
「ほっほっ、そうですね。 それがよろしいかと……」
タリアは懺悔室を後にする。
「もしかしたら、まだアヤメやカリンとコリンは生きているかもしれないんだ。 どうせ死ぬなら、確認してから死のう」
共に大迷宮に潜ってくれる命知らずが居てくれる事を祈りながら、タリアは冒険者ギルドへと向かった。
「美味しかったのだー! ご馳走様でし……たぁ……」
昼飯を食べ終えたセムネイルはテキパキと食器を片付け洗う。 セリスに呼ばれるまで獣の様に抱かれていたノラは既に体力を使い切り寝る寸前だ。
それでもリンとセリスの作った料理を完食しているのがノラらしくて微笑ましい。
「お粗末様でした。 貴方様、残りはリンとしますのでノラを部屋にお願いしても?」
「ん? そうだな、後は頼む。 ノラ、ベットに行くぞ~」
同じく体力を消耗した筈のセムネイルは疲れ等全く見せる素振りも無く、軽々とノラを抱き上げ2階の部屋へと運ぶ。
「ふふ、ノラさん幸せそうな顔で寝てましたねセリスさん」
「そうね。 あんなに幸せそうに寝れるなんて羨ましいわ~」
リンとセリスは仲良く片付けをする。
「ねぇ、リン」
「どうしたんです? セリスさん」
「貴方様が下りてきたら1番にお風呂に行くと思うの。 一緒に……行っちゃう?」
リンの目がキラキラと輝き、洗い物をする手が早まる。
「良いですね! 早く終わらして行きましょ~♡」
「決まりね♡ ノラや新しい姉妹ばかりズルいもの」
「ふふ、ローズさんがまた頬を膨らませちゃいますね」
2人は仲良く風呂場へと向かった。
セムネイルが階段を下りてきた時には誰も居らず、リンとセリスが風呂場に居るのを気配探知で知った。
2人が何を期待しているか直ぐに悟ったセムネイルは股間を大きく膨らませて風呂場へと急いだ。
それから暫く、風呂場からリンとセリスの嬌声は止まなかった。
◆◇◆
場所は変わり、此処はブルムフという街のエオルニア教の教会。
聖エオルニア教国の本部から連なる支部の1つだ。
エオルニアの世界には多くの神や女神の教会が存在するが、エオルニア教は世界で1番大きな宗教組織である。
ブルムフの街にあるこの建物も他とは雲泥の差であり、領主の館よりも豪華な教会だ。
そんな教会の懺悔室に、項垂れる女勇者タリアが仲間を見捨てた罪を告白していた。
「私は……勇者なのに、仲間を救えなかった。 守れなかったんです。 死ぬなら……仲間と共に死にたかった」
教会の広間に転移した勇者タリアは直ぐ様治療され、一命を取り留めた。
しかし、共に戦った仲間を見捨てた現実がタリアを意気消沈させてしまう。
「勇者タリアよ……エオルニア様は常に貴女を見守っております。 仲間を失った事にも必ず理由があるのでしょう」
タリアの祈る手に力が入り、指先からは血が滴る。
「理由ですか。 仲間達が命を散らそうとするその時にすら力をお借して下さらなかった事に理由が有るのでしょうか?」
タリアが必死に怒りを堪えるのを懺悔室の神父が扉越しにため息を吐く。
「はぁ……エオルニア様より加護を見賜った勇者タリアよ。 エオルニア様の意思を測るなど愚か者がする事です。 貴女が今すべきは、冒険者ギルドに行き新しき仲間を集いもう一度使命である大迷宮のダンジョンを攻略するのです」
「……は? いや、神父様。 もし、前以上の仲間に出会えたとしても……死ぬだけですよ?」
神父の言葉に絶句したタリアは思わず反論する。
あの地獄にまた潜る事は死を意味するからだ。 何処かで試練を踏破し強くなってから再チャレンジするならまだしも、神父の言葉通りならさっさと行って死ねと言っているのと変わらない。
「そうですよ? 次の勇者候補は幾らでも居るのです。 エオルニア様のご意向に従えないのなら、早くお死になさい。 それが信徒たる務めです」
神父には一切の悪意も曇りもない、心からそう思っているのをタリアは理解した。
(本当に……本当に腐っているなこの宗教は。 無理矢理私を勇者にしておいて、無理ならさっさと死ねと? ふざけないでよ!)
タリアは両方の拳を限界まで握り締め、ひたすらに耐える。
勇者であるタリアが本氣を出せば、壁の向こうにいる肥えた糞ったれな神父等瞬殺出来るだろう。
しかし、そんな事をしても何も意味は無い。
エオルニア教が腐っているのなんて、聖エオルニア教国に居た時から知っていた。
それでも、女神エオルニアは勇者を見守り力を貸してくれる存在だと信じていた。
だが、どうやら腐っているのは女神のようだ。
「分かりました。 冒険者ギルドに行って参ります」
「ほっほっ、そうですね。 それがよろしいかと……」
タリアは懺悔室を後にする。
「もしかしたら、まだアヤメやカリンとコリンは生きているかもしれないんだ。 どうせ死ぬなら、確認してから死のう」
共に大迷宮に潜ってくれる命知らずが居てくれる事を祈りながら、タリアは冒険者ギルドへと向かった。
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